オートモーティブ事業部の
黄博淵氏(左)と新井達也氏
「安心・安全」「環境配慮」「快適さ」などを背景に、需要拡大に沸く車載マイコン。今後はADAS(先進運転支援システム)の搭載を受け、さらなる成長が期待されるなか、各社も強気の事業計画を打ち出しており、半導体業界の「激戦区」と呼ぶにふさわしい市場環境に突入している。車載マイコンを手がける有力メーカー各社の統括責任者のインタビューを掲載している本連載。最終回は車載用半導体でルネサスに次ぐ世界第2位のインフィニオンテクノロジーズを取り上げる。日本法人において、マイコンをはじめ車載用半導体事業部の営業を統括する黄博淵氏、新井達也氏に話を伺った。
―― まずは車載マイコンの事業規模からお聞かせ下さい。
黄 当社の車載用半導体はパワーデバイス、マイコン、センサーの大きく3つで構成されており、マイコンの売り上げ規模は3割程度となっている。当社の車載マイコンは独自のCPUコアを搭載した「TriCore」シリーズとして展開しており、これまでに累計1.5億個の出荷を果たしている。パワートレイン系では世界No.1に位置していると見ており、うちエンジンコントロールでは44%、トランスミッションコントロールでは21%のシェアを持っている。車載マイコン市場全体でも世界第3位のサプライヤーに位置しており、今後もシェアを伸ばしていきたい。
―― TriCoreの特徴は。
新井 同シリーズは自動車アプリケーションに特化して設計されていることが他社との大きな違いだ。車載マイコンは割り込み頻度が高いため、リアルタイム制御に特徴を持たせている。また、こうした特徴をもとに、産業機器市場にも展開を図っており、採用を増やしている。
―― 今後の展開は。
黄 現在のところ、TriCoreシリーズは「AUDO Family」(開発コード)をメーンに展開しているが、今後は新しく「AURIX Family」の展開を予定しており、現在サンプル出荷を行っているところだ。
―― AURIXの展開を教えて下さい。
新井 現在、当社の車載マイコンの採用はほぼパワートレイン系に限られているが、今後はボディ系やセーフティー系での拡大を目指しており、「AURIX」はまさに同分野拡大にあたっての戦略製品だ。CPUコアを複数搭載し、パフォーマンスを上げているほか、チェック機能が優秀なところも特徴の1つだ。プロセスも産機製品として実績のある65nm世代を採用しており、2015年からの量産開始を予定している。
―― 分かりました。それでは車載マイコンの供給体制について教えて下さい。
黄 当社は1つのプロセスを複数拠点で製造できる体制を確立しており、マイコンもマルチソース体制を整備している。具体的には、90nm世代は自社の独ドレスデン工場と台湾TSMCのFab12(新竹)、65nm世代はTSMCのFab12とFab14(台南)の2拠点体制を敷いている。40nm世代は米グローバルファウンドリーズ(GF)と提携しており、GFのドレスデン工場とシンガポール工場の2拠点で生産することが決まっている。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年6月18日号3面 掲載)