プリント基板国内大手の(株)メイコーは近年、海外工場の大規模投資などにより業績を拡大。競争力低下が叫ばれる国内リジッド基板メーカーのなかで、孤軍奮闘といえる活躍を見せてきた。これまではテレビなどのAV分野、スマートフォンなどのモバイル端末分野を主力領域に位置づけていたが、近年はこれに加えて、車載用基板を重要分野に定め、攻勢を強めている。名屋佑一郎社長に現況と今後の展望を伺った。
―― 足元の状況の総括からお願いします。
名屋 1~3月はスマートフォンなどのモバイル用基板が全体的に下振れしている。ただし、中国メーカーからは強い数字が来ており、13年度(14年3月期)の売り上げは中間決算時点に立てた790億円を達成できると考えている。
―― 14年度の見通しは。
名屋 今のところ、前年比で約9%増となる860億円を計画している。増収は主に車載用とモバイル用基板が担うことになる。
―― 車載用基板の状況は。
名屋 品質とキャパシティーの両方でNo.1になることを目指している。各工場で品質向上に向けた設備投資を行っているほか、生産能力も増強しているところだ。現在、車載用基板の生産は海外工場をメーンに行っており、広州が月産16万m²、武漢が同10万m²、ベトナムの合弁ラインが同4万m²で、あわせて30万m²弱の能力を持っており、業界でもトップクラスの位置にあると思う。ベトナム工場はあと4万m²程度、生産能力を追加する予定だ。
―― パートナー企業である独シュバイツァーとベトナム工場で合弁ラインを設置しました。
名屋 合弁ラインは14年度に本格的に立ち上がる見通しだ。当社の強いセールス力とシュバイツァー社の欧州市場でのネームバリューを生かし、欧州車載電装市場への参入を加速する。
―― ただ、車載用基板も競争が激化していると聞いています。
名屋 従来、車載用基板といえば日系メーカーが主役と思われていたが、現在の競争環境は日系メーカーだけでなく、台湾などのアジア系メーカーが急速に台頭しており、特に価格競争が厳しさを増している。私たちは価格の厳しいボリュームゾーンでも勝負するつもりだが、これに加えて、高い技術力が求められる付加価値領域についても需要を取り込んでいきたい。
―― 具体的には。
名屋 ミリ波レーダーに使われる高周波用基板などがその筆頭だ。ミリ波レーダーは、ADAS(先進運転支援システム)の導入を契機に搭載が進んでおり、これを実装する基板には高い高周波特性が求められている。現行の基板でも要求特性は満たしているが、業界内ではコストダウン要求が非常に強い。当社ではこれに対応すべく、材料メーカーと共同でミリ波レーダー用基板を材料から見直して開発を進めている。すでにかなり良いものができあがりつつあり、今後に期待している。
―― モバイル用基板の戦略は。
名屋 基本的にはハイエンドからローエンド端末まで全方位で事業を展開することに変わりはない。現在、スマートフォン向けは武漢第2工場の月産6万m²のラインを活用し、中華圏および日本のスマートフォンメーカーに、ベトナム工場の月産4万m²のラインで韓国系のメーカーにビルドアップ(BU)基板を供給している。2-4-2や1-4-1などの汎用BU基板がメーンだが、より高密度化に適したエニーレイヤー構造のBU基板も増えている。今後、端末の低価格化に伴って、より低コストな基板も求められており、生産プロセスを含めて見直しを図る必要もあるだろう。
―― 国内拠点のあり方について考え方を。
名屋 規模は追わず、高難度品に特化するのが基本方針だ。例えば、受動部品を内蔵した部品内蔵基板やポリイミドレスのフレックスリジッド基板など新商品が立ち上がり始めており、こうした製品で国内工場を埋めていきたい。部品内蔵基板に関しては、石巻工場で量産ライン設置の検討を進めているところだ。
―― 最後に設備投資計画について教えて下さい。
名屋 14年度、15年度ともに50億円程度を予定している。いずれも償却の範囲内に収めるつもりだ。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年4月30日号5面 掲載)