商業施設新聞
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No.453

オープンカジノ論戦が高まる韓国


嚴 在漢

2014/4/22

永宗島の複合リゾートの完成イメージ
永宗島の複合リゾートの完成イメージ
 韓国政府は2014年3月18日、米中系合弁会社のLOCZコリアに対して、永宗島(仁川国際空港エリア)で計画している外国人専用カジノ運営における事前審査を行い、「適合」と判定した。

 同計画は、仁川経済自由区域庁の開庁以来、単一規模としては最大の外国投資(100%外国資本)になる。同庁は、カジノ運営開始3年目となる2020年に「年間約110万人を誘致し、2兆2700億ウォンの経済効果と3万5000人強の雇用効果を期待する」と意気込む。 韓国政府のカジノ事業は、さらなる外国人観光客の誘致と雇用の創出、観光レジャー産業の活性化を目指しており、朴槿恵(パク・クネ)政権の経済復興政策と相通ずる。

 このカジノ事業は複合リゾート形態で建設される。複合リゾートは、カジノを核としてホテル、ショッピングセンター、公演ホールなどを含むエンターテインメント空間を指す。つまり、ラスベガスを夢見ているのだ。

 この複合リゾートの投資先として急浮上している地域が永宗島(ヨンゾンド)である。永宗島は、飛行機で4時間圏内に世界人口の4分の1が集中する仁川国際空港エリアに位置する。

 永宗島ではカジノ投資に対する機運が高まっており、パラダイスは13年10月、日系エンターテインメント企業のセガサミーホールディングスと提携してパラダイスセガサミーを設立し、17年に「パラダイスシティ」をグランドオープンする計画だ。また、パチンコ企業の岡田ホールディングスの韓国子会社であるユニバーサルエンターテインメントと米銀行系のPNCフィナンシャルグループは、大規模な投資計画を打ち出している。

 そんな中、韓国人も出入りできるオープンカジノの許可への是非が核心的な争点になりつつある。そうそうたるカジノ企業が永宗島に大々的な投資計画を表明するのは、韓国人が出入りできるオープンカジノの許可を視野に入れた投資戦略であろう。しかし、オープンカジノの実現には国民的なコンセンサスが不可欠である。韓国政府は、ギャンブル中毒を懸念し、また韓国唯一の韓国人が利用できるカジノである江原ランドの反発などを憂慮し、まだ明らかな方向性は示していない。

ソウル市内のある外国人専用カジノ
ソウル市内のある外国人専用カジノ
 韓国の外国人専用カジノはソウルや釜山、済州島などで16カ所が運営されており、年間238万人から1兆2531億ウォン(約1253億円)を売り上げている。また、江原ランドの場合、売上高1兆2092億ウォン(約1209億円)、来場者302万人を記録している(2012年時点)。

 韓国では1990年代初頭に日本から導入されたパチンコが流行ったことがある。だが当時は、パチンコの許認可を巡って政治家や暴力団の癒着などが発覚し、パチンコは廃止・撤去された。

 韓国経済復興のためのカジノ政策に対する基本趣旨は、ある程度共感を得ているようだ。問題は、地域経済の活性化と雇用創出などの経済効果の裏には、カジノ特有の副作用による社会的費用が潜んでいる点だ。

 筆者が最も尊敬する日本の知識人は、「一番孤独な時にパチンコに行く」と吐露したことがある。韓国はまだ、ギャンブルが孤独感を癒してくれるような雰囲気ではないのが、オープンカジノに対する論戦を熱くする理由かもしれない。
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