電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第80回

開発/マーケットを調査する時間は金で買えるのだ!!


~MEMS、LED、パワーなどに強いYOLEの片野豊 代表取締役の言葉~

2014/4/11

 「日本のITおよび半導体市場の調査については、外部コンサルタントをうまく使うのが遅れている。自前で様々な調査活動をしているが、その間に貴重な時間は失われていく。要するに、スピーディーに手に入る調査レポートを活用しなければ勝てない。膨大な調査時間は実のところ金で買えるのだ」

YOLE(株)代表取締役 片野 豊氏
YOLE(株)代表取締役 片野 豊氏
 少しため息をついてこう語るのはYOLE(株)(東京都千代田区丸の内1-8-3、Tel.03-6269-3457)にあって代表取締役の任にある片野豊氏である。YOLEデベロップメント社はマーケットリサーチおよび技術・戦略コンサルタントを扱うカンパニーであり、1998年に設立された。本拠地はフランスにあるが、世界各地にブランチを持つ。MEMS、センサー、LED分野をもっとも得意としており、最近ではパワーデバイス、先端パッケージ、メディカルチップ、化合物半導体などについても多くの実績を積み重ねてきている。

 日本支社のGMの任にある片野豊氏は、かつてキューポラのある街として知られた埼玉県川口の生まれである。県立蕨高校を出て武蔵工業大学の電子通信に進み、卒業後は大手アナログ半導体メーカーのアナログ・デバイセズに入社する。アナログ・デバイスの面白さに取りつかれ、国立の営業所長を5年間も務めるのだ。1980年代にはアナログ・デバイセズも日本を巨大マーケットと見て販売に注力するだけではなく、相模原市の城山に工場も作っていた。

 「アナログ・デバイセズではMEMSビジネスユニットのディレクターもやっていた。任天堂のWiiに搭載する3軸加速度センサーを納入し、50億円の売り上げを上げたことが強く記憶に残っている。その後2009年に退社し、米テンプル大学でMBAを取得する。30年以上にもわたる半導体人生をほかのことに生かせないかと考えたのだ」(片野氏)

 YOLE社のマーケットおよびテクノロジーリポートを読んでみたが、実に的確な分析をしていることが良く分かる。例えば、MEMSについてはバラ色の成長予想をする向きが非常に多いが、YOLE社は実に冷静に先行きを見ている。つまりはMEMS' global equipment & materials demandについては、大きな伸びが期待できないと明確に論じている。マテリアルについては徐々に伸びていくものの、equipmentについては2014~18年までほとんど伸びがなく、5億ドルにとどまるとしている。調査会社の常として、将来予想を少し高めにいう傾向があるが、YOLE社は積み上げたデータを冷静に分析していることが良く分かる。

 これからの日本市場におけるセールス戦略について片野氏に伺ったところ、次のような答えが返ってきた。
 「日本支社のミッションは何といっても日本企業のビジネスの開発パートナーになることだ。グローバル化がより進展するなかで、競争環境はボーダーレスでより厳しいものとなっている。スピーディーに市場の変化、トレンドを掴み、競争力あるテクノロジーを開発しタイムリーに広めていくことがより重要になってくる。得意とする分野の市場調査・分析、技術解析、さらにはアプリ動向やサプライチェーンを通じての潜在顧客の発掘など必要な情報を提供している。大手メーカーにもかなりお付き合いいただいている」

 同社が主催したSiCパワーアライアンスは50社が参加するというほどの盛況であった。また、MEMSエンジニアリングに関するイベントも充実させていくという。太陽光発電およびインバーター、赤外線、X線、可視光などの画像関連に今後多くの関心が集まると見ており、YOLEの持つ情報をできうる限り役立てていただくよう努力するとしている。

 片野氏と議論していて、日本企業の情報に対する考え方はやはりまだまだ低いと思わざるを得ない、との見解で一致した。専門新聞や専門調査機関を活用すれば多くの有用な情報を得られるというのに、これを利用しない企業の何と多きことか。1人分の人件費にも満たない程度の金額を惜しんで、重要なプロモーションをかける方法論が見つからない、というケースもまま多い。そしてまた、この時代にあっても根性論や精神論で戦え、という経営者の何と多いことか。どこまでいってもロジックで構築されているビジネス環境は、基本的には細密なロジックで攻略していく以外にはない、というのに。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。日本半導体ベンチャー協会会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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