■発刊趣旨とご購入のご案内

　東日本大震災の影響もあり、2011年度は商業開発が減少するのでは、という懸念がありました。しかし、西日本を中心に出店計画は衰えを見せず、大店立地法に基づく新設の届け出件数は3期ぶりに600件台を回復しました。牽引したのは、ドラッグストアや家電、ディスカウントストアなどの専門店で、有力企業によるドミナントの深耕、そして出店エリアの拡大が続いています。一方で、大型商業施設の開発は減少傾向が続いています。しかし、GMSの不振に伴い従来型のショッピングセンターの開発は減ったものの、ホームセンターや家電専門店の大型化に伴う店舗のSC化や、ニトリによるSC開発など、専門店による新しいタイプのSCが次々と誕生しています。
　こうした国内動向とともに注目されるのが、流通業界のアジアを中心とした海外進出です。すでに企業戦略の重要な柱にまで成長し、物流、商品調達の体制構築も熟度を増してきています。出店エリアも、中国では沿岸部から内陸部へ、そして東アジアから東南アジアへと広がっており、今後も多くの企業が新しい市場へと進出していくことでしょう。
　震災からの復興は、依然として道半ばですが、商業施設は街のインフラとして被災地を支え、その役割の大切さが改めて認識されました。直接的な被害を受けていなかった地域でも、震災以降は商品構成や売り場づくりで「安全・安心」を今まで以上に追求し、より地域に密着した店舗が増加してきました。被災地への出店も少しずつ増え始めており、新しい街づくりの基盤整備にも貢献しています。
　加えて、少子高齢化、晩婚化といった社会構造の変化や、震災で見直された家族の絆の深まりといった価値観が改めて重視されてきていることから、シニア層、単身者、３世代といった新しいマーケットが創出されつつあり、店舗戦略も対応が迫られています。
　激しい業界間、企業間競争を繰り広げる流通業界ですが、これまでも、そしてこれからも商業施設の果たす役割は大きく、その動向から目を離すことはできません。
　本書は、06年12月に発刊し、読者より好評を頂いている「商業施設計画総覧」の最新版となるものです。新版は5章構成とし、第1章では、13年以降にオープンする大型商業施設や注目エリアの開発動向のほか、小売り企業全体の動向を詳述しています。第2章では、流通業界の企業動向を詳細に紹介するため、前回版を40社上回る19業界・221社の企業戦略に迫り、各企業の動向、方向性を的確にレポートし、分析しています。第3章、第4章では、大型店、SC、市街地再開発ビル、商業ビル、飲食店ビル、シネコン、アミューズメント施設、スポーツクラブ、結婚式場、ホテル、物流施設など、商業施設全般の出店計画を掲載。これら個別計画を眺めることで、街の動きが掴めるほか、主要企業の出店戦略を違った面から捉えることができます。第5章は、関連資料編として大規模小売店舗立地法の新設届け出状況を収録し、読者の利用の便に供するよう努めました。
　なお、弊社では定期刊行物として週刊で「商業施設新聞」を発刊しており、本書の取材は同紙スタッフの手によるものです。読者諸賢のご批判、ご叱正、ご助言をお願い申し上げる所存です。

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■内容構成