韓国財閥の功罪
編集・執筆 産業タイムズ社ソウル支局長 嚴 在漢(オム・ジェハン)
〇 植民地支配賠償金が財閥のシードマネーに
〇 韓国型政経癒着の典型の産物
〇 世界経済10位圏入り貢献の韓国半導体
体裁・頁数:四六判、270頁 送料500円(税込5,000円以上のご注文で送料無料)
発刊日:2024年12月6日
ISBN:978-4-88353-385-5 C3055 \3800E
定価 4,180円(税込)
■発刊趣旨とご購入のご案内
同じ民族同士の争いとなった朝鮮戦争(1950~53年)後、荒廃した祖国の再建に向けて、日本の近代化の経済システムを取り入れたとされる故李炳喆(イ・ビョンチョル)サムスングループ創業者。日本植民地時代の1930年代に留学した李氏は、明治維新以降の日本の近代化過程を強烈に体得し、それを韓国に移植したのが韓国財閥の源流といえます。李氏朝鮮時代はまるで理想郷のような「儒教文化」が根強く、日本の士農工商という階級をなぞらえるかのように、商いは他と比較して軽視された時代でありました。「両班(ヤンバン、朝鮮の貴族)なら餓死はしても物乞いはしない」とは、高潔な朝鮮ヤンバンの面子を重んじる代表的な諺です。つまり、農耕中心的社会であり、商売はあまり奨励されない職業でした。冷静に言い換えると、実利とはかけ離れた理想的な社会を追求したのであります。
そうした朝鮮社会は、19世紀に欧米からの産業革命と民主化のうねりを徹底的に排斥し、鎖国を通した朝鮮王朝の延命に固執しました。その結果、近代化の遅れを招いた歴史的な負の連鎖に強いられることになります。韓国財閥の代名詞格でもあるサムスンは、創業者の時代からそうした非実利的な社会を改革すべく、ひたすら「豊かになろうよ」というスローガンのもと、「富国強兵」「技術報国(技術を通して国の恩に報いる)」などといった覚悟で国家政策とともに豊かな国造りに貢献してきました。そうしたサムスンに「果たして誰が石を投げられるのだろうか」という、筆者の幼い時からの根深い疑問が本書を執筆した背景であります。
2023年通年における韓国のGDP(国内総生産)2236兆ウォンのうち、サムスンやSKをはじめとする20大財閥企業の総売上高はGDP全体の72.7%に相当する1625兆ウォン(約180兆円)となりました。財閥企業の範囲を30社まで拡大するとGDPの80%を占めており、韓国経済において絶対的な影響力を誇っていることがうかがえます。このような絶対性こそ、韓国社会が「財閥共和国」と皮肉られる背景でもあります。
そこで本書「韓国財閥の功罪」は、財閥の胎動、韓国経済における功績、世界経済における位置づけなどを分析しました。そしてまた、財閥の汚点もくまなく取り上げ、客観的な観点から分析しました。さらに今後、韓国財閥が韓国経済ならびにグローバル経済でどう生き抜いていくかなどについても追いました。
■内容構成
- 第1章 韓国財閥の胎動
- 韓国財閥は60年代に本格化、30大財閥がGDPの80%強を占有
- 財閥の形成過程に日本の痕跡、借款8億ドルがシードマネーに
- ワニとワニチドリのような政経癒着関係ができあがる
- 腐った橋も渡ってみる、韓国経済を牽引した鄭周永氏
- 第2章 韓国財閥の栄枯盛衰
- 全大統領による財閥への圧力、韓国型政経癒着の始まり
- 財閥共和国・賄賂共和国を暴く、盧泰愚政権で収賄が明るみに
- 軍事政権の終焉と文民政府の始まり、金融実名制を電撃的に導入
- 民主化と財閥改革、IMF危機克服に追われ所有構造改革は失敗
- 盧武鉉元大統領とサムスン、政策立案や南北融和で存在感
- 李明博政権は財閥に友好的、財閥企業の世襲が加速
- 朴勤恵氏の友人が国政を壟断、民主化以降で初の大統領弾劾
- コロナで失政が隠れた文在寅政権、「経済音痴」との揶揄も
- 第3章 韓国財閥 快進撃の功績
- サムスングループは450兆ウォンの投資を推進、源流に日本が影響
- 198社を擁するSKは日本企業との合弁が起源、成長産業に巨額投資
- 品質経営の現代は韓国自動車最大手、蔚山にEV専用工場を建設
- 企業家精神が高いLG、国内大型投資でAIやバイオなどを強化
- 鉄鋼業が主力のポスコは電池事業を拡大、原料やリサイクルも強化
- 日韓をつなぐロッテグループ、電池材料やバイオにも取り組む
- M&Aで事業拡大を続けるハンファグループ、近年は宇宙産業を牽引
- 創立20周年を迎えたGS、既存事業と新技術の融合を加速
- HD現代グループは造船業からエネルギーや産機、ロボットなどへ展開
- 流通業界トップの新世界はグループのシナジー創出に注力
- 食品大手のCJグループは物流やエンタメまで展開、バイオにも投資
- 韓進グループは物流・輸送で韓国最大、中古トラック1台で創業
- カカオグループはITで初の財閥に、モバイルファースト戦略を駆使
- LSグループは独立してB2Bを拡大、EV関連や再エネなど幅広く
- 斗山グループは韓国初の100年企業、ガスタービンやロボットを強化
- 建材卸からスタートしたDLグループはエコビジネスに総力戦で臨む
- ポータルサービス最大手のネイバーグループはAIにリソースをシフト
- ヨンプングループは非鉄金属製錬業からM&Aで先端電子産業を伸ばす
- 繊維大手のヒョスングループは水素社会を見据えて炭素繊維を増強
- KCCは塗料・建材から先端材料へ、精密化学分野の革新をリード
- 第4章 韓国財閥の罪
- 政府主導と財閥中心の体制が「漢江の奇跡」とともに形成されていく
- 財閥経済が生んだひずみ、名ばかり民主国家で財閥一族は過度な私益
- 国民主権か財閥主権か、司法でも特別な恩恵、巧みな情報操作で世論構築
- 第5章 韓国財閥の未来像
- 輸出の大半は財閥系企業が担う、24年は対米輸出が対中輸出超えか
- 研究開発も財閥企業が牽引、新事業の創出へ組織改編を実行
- 新規事業を強化する財閥、時価総額上昇でトリプルファイブ達成を狙う
- 未来のモビリティーに挑戦、現代自動車の業績が過去最高を記録
- LGと大韓航空の新たな戦略、ABC産業と機体導入で次の成長へ
- SKとハンファの未来戦略、AIとデータセンターが次のテーマに
- 財閥の代名詞サムスンは半導体投資を再加速、祖国再建の産物に