■発刊趣旨とご購入のご案内

　バッテリー（蓄電池）は、IoT、携帯機器、民生機器、車載、エネルギー貯蔵システム（ESS）、ロボット、ドローン、玩具などで幅広く採用されており、我々の生活に不可欠なデバイスとなっております。うち、車載向けは2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロとする各国の野心的な取り組みを背景に、自動車メーカー各社が電気自動車（EV）をはじめとした電動車にシフトしていくため需要が急増していく見通しです。現在、中国、欧州、北米の3市場を中心にリチウムイオン電池（LiB）の大規模工場を建設する計画が進められており、LiB生産能力は5年後に現在の4倍に拡大する予測です。同時にLiBに使われるリチウムやニッケルといった資源の確保に向けた取り組みも本格化しております。
　LiBは高エネルギー密度、高出力、高サイクル回数に対応することから蓄電池の主流です。すでに市場の6割に達しており、今後はさらに比率を伸ばしていく予測です。一方で、LiBを高性能化した全固体LiBや、ナトリウムイオン電池、リチウム硫黄電池といった次世代電池への設備投資もスタートしております。EVに搭載されれば、航続距離が延長し、かつ高い安全性やさらなる優れた急速充電性能が期待されます。資源確保の課題もクリアされる可能性もあります。そしてエアモビリティやHAPS（成層圏プラットフォーム）といった新たな用途も開拓される見込みです。
　LiBの供給サイドを見ると日本、韓国、中国が有力です。もともと日本勢の独壇場でしたが、中国、韓国が急速に追い上げてきました。日本勢のひとり舞台だったLiB部材では中国、韓国が急激にプレゼンスを拡大し、正極材、負極材、電解液、セパレーターの4大部材はすべて中国勢がトップとなりました。ただし、車載向けでは依然、日本勢が強いのが現状です。加えて、集電体、バインダー、導電助剤などでは相変わらず日本勢のプレゼンスが強固です。
　ESSでは住宅向け、業務・産業向け、系統・再生可能エネルギー向けいずれにおいても需要が拡大しています。主役はやはりLiBですが、系統・再エネ向けでレドックスフロー電池やNAS電池の導入も進んでおります。低コスト化が期待される次世代蓄電池の有望株、ナトリウムイオン電池も採用される見込みです。

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■内容構成