■発刊趣旨とご購入のご案内

　近年、高速化、高集積化とは異なる視点でエレクトロニクスの進化を目指す取り組みが始まっています。キーワードは「有機」です。無機にはない有機の魅力とは何でしょうか。薄い、軽い、曲がる、壊れにくいなどが有機の特徴ですが、最大の利点は印刷でデバイスを作製できること、つまりプリンテッドエレクトロニクスが今後のエレクトロニクスの進展のカギを握っていると言えます。ちなみにNEDO（新エネルギー・産業技術総合開発機構）では、2020年におけるプリンテッドエレクトロニクスの経済効果を2.2兆円と算出しています。

　プリンテッドエレクトロニクスは、設備コストが安い、材料使用効率が高い、環境負荷が小さいといった多くの利点があります。結果、製造コストの大幅な低減が期待できます。もちろん、プリンテッドエレクトロニクスを実現するには、インク化できる有機半導体材料、さらには、印刷で微細構造が作製できる製造プロセス・装置の開発が不可欠です。

　有機エレクトロニクスデバイスの代表的なアプリケーションは有機EL、有機太陽電池、有機トランジスタの3つです。有機ELの用途はディスプレーと照明ですが、iPhoneもついに有機ELの採用を決めました。また、大型の有機ELテレビも販売が始まるなど、近年、有機EL関連の開発や投資が活発化しています。当面は有機ELが有機エレクトロニクス市場を牽引していくと思われます。

　有機太陽電池もポスト・シリコン太陽電池の切り札として注目されています。従来の色素増感型や有機薄膜型に加えて、最近では有機無機ハイブリッド型のペロブスカイト太陽電池がシリコン太陽電池に迫る変換効率を達成しており、本格的な事業化が近づいています。有機トランジスタもプリンテッドエレクトロニクスを実現する基盤技術として、溶解性が高く高移動度の有機半導体材料や溶液プロセスの開発が進んでいます。

　本書『有機デバイス 2018』では、「有機」という観点から、ディスプレー、太陽電池、半導体といった異なる事業分野の研究開発を俯瞰するとともに、産業化に向けた取り組みをレポートしています。有機EL、有機太陽電池、有機トランジスタの実現に向けた企業の最新動向をまとめました。巻頭特集では、「有機エレクトロニクスの現状と展望」と題し、山形大学の取り組みを紹介しています。また、参考資料として、ディスプレー産業、太陽光発電産業、半導体産業の市場分析および最新技術動向も掲載しています。

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■内容構成