電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第28回

地球温暖化は起っているか?


再エネ、蓄電池導入のキーファクター

2014/1/17

温暖化の9割は温室効果ガス

 太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギーが普及し、同時にこれらの負荷平準化や余剰電力貯蔵を目的として大容量蓄電池設備が導入されている。また、燃料電池が家庭用の「エネファーム」として順調に出荷量を伸ばしているほか、燃料電池車が2015年から商用化される見通しだ。太陽光発電は、12年7月から開始された固定価格買取制度(FIT)を背景に需要が急増し、13年6月までのFIT認定済み設備容量は2091万kWとなった。第1次安倍内閣は20年までに太陽光発電導入量を1400万kWにするとしていたが、5年前倒しで実現する可能性が高い。

 ところで、こうした再生可能エネルギーなどの導入の背景には「地球温暖化」がある。地球温暖化は、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)などの温室効果ガスが主要因で、地球温暖化の9割がこうした温室効果ガスによるものという。そして温室効果ガスの中でもCO2の影響が甚大と言われている。

温暖化がもたらす影響

 地球は、温暖化と寒冷化を何度も繰り返してきた。その意味では温暖化も寒冷化も自然現象と捉えることができる。一方で、近年叫ばれている地球温暖化は温室効果ガスの増大がもたらした「20世紀後半からの地球温暖化」で、人為的なものと言われている。

 では、どのようなメカニズムで地球温暖化は進むのか。一般的に言われているのは、温室効果ガス層による熱の反射だ。地球に届いた太陽熱は地表で反射され、宇宙空間へと放出される。ところが、温室効果ガス層があると反射された熱は再反射されて地表に届き、気温を上昇させるというものだ。

 国連の関連機関IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)が07年に発表した「第4次評価報告書」によると、CO2排出量は産業革命など工業化前と比較して1.4倍の379ppmにまで拡大。また、過去100年間で世界の平均気温は0.74℃上昇したほか、20世紀後半の北半球の平均気温は過去1300年間で最も高かったとしている。地球温暖化の人為的影響は90%と結論付けている。


 次に、地球温暖化が進むと何が起こるか。第一に指摘されるのが海面上昇だ。海抜の低いマーシャル諸島、バングラデシュ、モルディブなどではすでに被害が出ていると言われる。バングラデシュでは、地球温暖化が進めば国土の2割が水没し、数千万人規模の難民が発生するという。こうした地域では水循環への影響により暴風雨、洪水などの異常気象も頻発しているという。また、温暖化により北極、南極、グリーンランドなどにおける氷床、海氷の減少が広範囲で進んでいる。北極の海氷範囲は10年ごとに2.1~3.3%、夏季は5.0~9.8%減少しているという。

 日本に目を向ければ、都市部でのヒートアイランド現象をはじめ海岸部では砂浜が減少し、高潮や津波による危険が多くなっているという。また、漁獲量の変化、害虫の大量発生、稲の未熟粒、トマトや柑橘類の着色不良なども報告されている。

IPCCの報告書

 IPCCでは、世界中の学者や専門家が参加し、定期的に学術的検証を行っている。90年から数年おきに評価報告書を発表しているが、その最新版が第4次評価報告書だ。そして同報告書では将来予測も行っている。
 それによると、CO2は21世紀末で工業化前の1.8~4.5倍となる約490~約1260ppmにまで拡大するという。また、21世紀末において平均気温上昇1.1~6.4℃、平均海面水位上昇18~59cmとしている。さらに大気中のCO2濃度の上昇により、海洋の酸性化が進行するほか、北極の晩夏における海氷は21世紀後半までにほぼ完全に消失するとしている。なお、第5次評価報告書は承認中で、14年4月に完了する見込みだ。
 IPCCの評価報告書はUNFCCC(United Nations Framework Convention on Climate Change:気候変動に関する国際連合枠組条約)締約国による気候変動枠組条約締約国会議(COP)の判断材料としても活用されている。周知のように97年に京都で開催されたCOP3は日本も合意した(京都議定書)。その内容は、08~12年の5年間で1990年比で温室効果ガスを6%削減するというものだ。

 気になるのは日本の削減目標が達成されたかどうかだが、最近の環境省の発表によると達成したもようだ。具体的には、12年度の国内温室効果ガス総排出量は、前年度比2.5%増の13億4100万t(速報値)。これは火力発電の稼働増加が主な要因としている。そして、京都議定書の基準年である90年の12億6100万tと5カ年(08~12年)平均の総排出量は1.4%増の12億7900万tとなり、目標が達成できていない。ただし、これに森林吸収量の目標の達成と京都メカニズムを加味すると、5カ年平均で基準年比8.2%減となり、目標を達成できたという。京都メカニズムとは、先進国が途上国で温室効果ガスの削減事業を行った場合に、自国での削減として換算できるシステムだ。

温暖化ではなく寒冷化説も

 IPCCの評価報告書は国際的に広く認められ、UNFCCCをはじめあらゆる環境保護活動の指針や判断材料となっている。それは国際連合の関連機関で、かつ数多くの専門家が評価に参加しているのが要因だ。一方で、同評価報告書に異論を唱える人も多い。それは、気温の上昇は起こっていない、CO2が原因ではないなど様々だ。地球寒冷化説を唱える専門家もいる。

半導体産業新聞 編集部 記者 東哲也

サイト内検索