電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第23回

韓国、ハイテク素材・部品開発に1兆円投入


18年までに10大分野でシェア3割強目指す

2013/12/6

WPMで開発力強化へ

韓国の産業通商政策を総括する産業通商資源部(京畿道果川市)
韓国の産業通商政策を総括する産業通商資源部(京畿道果川市)
 韓国政府は2018年まで、ハイテク素材産業(WPM=World Premier Materials)に政府予算4625億ウォンを含む総額約10兆ウォン(約1兆円)に達する官民合同資金を投入する。韓国政府(産業通商資源部=日本の経済産業省)がこのような積極的な投資に踏み切ったのは、ハイテク素材・部品の国産化アップこそ、真の技術大国になれるという判断であろう。また近年、日系ハイテク素材企業が韓国市場で猛威を振るっている背景もこうした政策を後押ししているといえる。

 日本製の電子材料は、円安によるウォン高で韓国における価格競争力が高くなっていることに加え、品質面でもずば抜けた競争優位を発揮している。12年11月時点に比べて円一ウォンの為替レートは、1年足らずで25%程度円安が進んだ。また、日本製の品質の高さを考えると、韓国製との価格差を十分に挽回できる水準というわけだ。実際、日韓の貿易推移を見ても、韓国の対日貿易赤字額(255億ドル)のうち、素材が占める割合は12年の全体赤字幅の47%となり、03年の31%に比べて大幅に増加している。

日中の挟み撃ちに焦り

 さらに、韓国政府が焦っているのは、中国企業の相次ぐハイテク素材・部品産業の参入によって、日中両方からの挟み撃ちを恐れているからだ。産業通商資源部筋によれば、「中国の素材・部品輸出が急増する『チャイナ・インサイド』が加速化するなか、中韓自由貿易協定(FTA)の妥結も巡航しており、韓国の素材・部品産業の危機感は高まりつつある」という。

 つまりは、世界市場を牽引できるハイテク素材産業の育成を通じて、貿易黒字の貢献に結び付けたいというのが巨大投資の狙いだ。4625億ウォン(約462億円)の政府資金(グラフ)は、10大素材開発に毎年均等に割り当てるが、ポスコ、サムスンSDI、LG化学、第一毛織、コオロンなど大手素材企業との連携事業を進めている中堅・中小企業252社の資金を活用し、素材別に支援金に差をつける計画だ。


ナノカーボンやマグネシウムに投資

 今回のプロジェクトの中で最も目立つ項目は、ナノカーボン複合素材である。自動車向け外装材などに使うナノカーボンは、次世代先端技術として脚光を浴びている。ナノカーボンの育成には民間資金を中心として18年までに3兆8678億ウォンが投資される。また、超軽量マグネシウムには1兆4812億ウォン、LED用サファイア単結晶には1兆3743億ウォンが投資される(表)。


 「同プロジェクトに参画する大手・中堅・中小企業らがハイテク素材産業の早期事業化のために、約10兆ウォンの官民間の投資協約を締結した」、「政府資金のうち、大手企業に対する支援割合は50%以内に制限される」、とは産業通商資源部筋は大手企業偏重の政府プロジェクトではないことを強調している。WPMとは、韓国政府が2010年に選定した10種類の先端ハイテク素材。18年以降、グローバル市場で10億ドル強の利益創出とシェア30%強の達成を目指すため、さらなる成長に向けた韓国の新たな国家プロジェクトがスタートしたのだ。

半導体産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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