電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第497回

ChatGPTは新たな半導体需要を喚起する?


ロボット領域への活用などに期待

2023/3/31

 ここ最近、生成AIの「ChatGPT」(チャットジーピーティー)が大きな注目を集めている。米新興企業のOpenAIが公開したオリジナルテキストを生成できるAIツールで、ユーザーの質問に対して、まるで人間が回答しているような自然な文章で回答してくれる。

 2022年11月30日に公開されて以降、利用が急速に拡大し、23年1月には史上最速でアクティブユーザー数が1億人を突破。また同じく23年1月に、マイクロソフト社がOpenAIへ数十億ドル規模の出資を行い、長期的なパートナーシップを締結したことも明らかとなった。ちなみに、マイクロソフト社は、数億ドルを投じてAI開発用のスーパーコンピューターをOpenAI向けに構築していたことも明らかとなっている。

 今後、注目されるのは、ChatGPTが一過性のブームで終わるのか、もしくは社会に根付くサービスへと変貌していくのかという点だ。個人的な見解としては、2つのポイントから社会に根付くサービスになると考えている。

プログラミング領域で有効

 まず1つ目のポイントとして、ChatGPTは非常に手軽に使えるという点だ。ChatGPTの前に注目を集めた技術としては、例えばメタバースがある。メタバースは現在も様々な企業によって取り組みが進んでいるが、当初想定されていたような勢いでは伸びていない。その原因の1つとして、メタバース空間を本格的に体験するためにはヘッドマウントディスプレーなどの機器が必須となる点。つまり、一般消費者が興味を持ってもメタバースを手軽に試すことが難しいということだ。

 それに対してChatGPTは、ChatGPTのサイトにアクセスして、メールアドレスと電話番号を登録すればすぐに使うことができる。「ChatGPTってよく聞くようになったけど試してみようかな」と思った瞬間に使うことができ、それが史上最速でユーザー数が1億人を超えた理由の1つでもある。

 もう1つのポイントとしては、ChatGPTに賛否両論が持ち上がっている点だ。どんなものにもメリットとデメリットがあるが、新しく出てきた技術には特にメリットとデメリットが混在しており、ChatGPTに関してもすでに多くの賛否が渦巻いている。メリットとしては膨大なデータから情報を簡易かつ短時間で収集でき、整理した文章で回答してくれること。デメリットとしては、回答に正確性に欠ける場合があるということだ。また、利用者が入力した情報はChatGPTの学習データとして活用されるため、入力した情報がChatGPTの学習に利用され、他の利用者の回答として提示される可能性があるという点もデメリットとして挙がっており、金融機関をはじめ様々な企業や団体では使用を制限する動きも増えている。

 デメリットが色々と提示されることはマイナスに捉えがちだが、現在の状況は「ChatGPTはその性能の高さと手軽さから1億人以上のユーザーによって、メリット・デメリットを含め様々な活用方法が精査されている状況」と言い換えることもでき、もうしばらくするとChatGPTが有効に使える領域がはっきりと明示されることになるだろう。実際、プログラミングの領域ではすでに好意的な意見が多く出ている。というのもChatGPTはユーザーの自然言語による指示からコードを生成することができ、その精度も高いことからコードを効率的に作成するための有用なツールとして価値を高めている。

ロボットの制御にChatGPTを活用(マイクロソフトの発表動画より)
ロボットの制御にChatGPTを活用
(マイクロソフトの発表動画より)
 そして、プログラミング領域への活用を発展させたかたちとしては、ロボットティーチングへの活用も期待されており、マイクロソフト社はChatGPTを活用し、アーム型ロボット、ホームアシスタントロボット、ドローンなど複数のロボティクス機器を自然言語で制御することに成功している。通常、ロボットはプログラミング言語を入力して制御するが、マイクロソフト社は、自然言語のテキスト入力を、ChatGPTを介してロボット制御用のコードに変換することで、複雑なプログラミング言語やロボットシステムの詳細を学ぶことなく、会話をするような感覚でロボットを制御することを目指している。

電子デバイスの需要増にも期待

 筆者は電子デバイス産業新聞の記者なので、ChatGPTのような生成AIや高性能AIチャットボットの普及・拡大によって、半導体などの電子デバイスの需要を喚起するのかという点にも注目している。

 近年はインスタグラムなどのSNSサービスや、ネットフリックスなどの動画配信サービスといった新しいサービスが普及した際に、サーバーやデータセンターの増強が活発になり、結果として電子デバイスの需要増につながるというケースが多く発生している。つまり、PCやスマートフォンといった電子機器の需要動向だけでなく、新しいITサービスも電子デバイスの需要動向に大きな影響を与える存在となっており、そうした視点で見るとChatGPTも電子デバイスの需要と関連性が出てくる可能性がある。調査会社のTrendForceは、ChatGPTの本格的な商用化に向けて3万枚のGPU(NVIDIAのA100ベース)が必要になる可能性があると予測している。

 取材時に疑問が出てきたときは、本人に聞くのが答えを知るための最も有効な手段である。というわけで、今回、ChatGPTに「ChatGPTが半導体などの需要を喚起するのか?」ということを聞いてみたところ下記のような答えが返ってきた。

「ChatGPTの利用が増えると、サーバーにおける半導体の使用量も増える可能性があります。理由としては、ChatGPTは深層学習アルゴリズムを使用しており、大量の計算リソースを必要とするため、多数の半導体チップが必要になるからです」

「また、ChatGPTを使用するためには、高速なCPUやGPU、メモリーなどのハードウエアリソースも必要です。これらのハードウエアは、半導体チップを使用して作られています。さらに、ChatGPTはオンラインでの使用を想定しており、多数のユーザーが同時にアクセスすることができます。そのため、サーバーは高速な処理を行う必要があり、より多くの半導体チップが必要になる可能性があります」

「ただし、サーバーの設計や最適化によって、半導体の使用量を最小限に抑えることも可能です。また、半導体技術の進歩によって、より効率的な半導体チップが開発されることも期待されています」

 先述のようにChatGPTの回答は正確性が欠ける場合がある。そのためこの回答が間違っている可能性もあるが、個人的にはこの回答が合っていて、新たな電子デバイスの需要を喚起してくれることを願っている。

電子デバイス産業新聞 副編集長 浮島哲志

サイト内検索