野村不動産（株）などが東京都江東区亀戸で開発中の商業施設の名称が「KAMEIDO CLOCK（カメイド クロック）」に決まり、2022年4月末にオープンすることが発表された。筆者は亀戸に住んでおり、毎日のようにこの施設を眺めている。施設はサンストリート亀戸跡に建設されており、延べ約5万8000m²に専門店135店を集積する大型施設として完成するという。商業記者を始めてから10年以上、いつかは近所に大型ショッピングセンターができることを望んでいたが、ついに実現する。

　亀戸はJR総武線の各駅停車が乗り入れる亀戸駅があり、改札はアトレなどがあって店舗が集まる「北口」エリア、KAMEIDO CLOCKができる「東口」エリアがある。改札名は北口と東口なのだが、北口は西側にあり、東と西で街の雰囲気が異なるともいえる。かつては東口近くにオープンモールのサンストリート亀戸跡があり、スーパー、飲食、家電、レンタルビデオ店、大型玩具店などが出店していた。周辺が住宅に囲まれていることや、駅からすぐであること、幹線道路である京葉道路に面していることなど周辺の街からアクセスの良い施設だった。周囲の商業事業者によると、ファミリー層が多いためか、かつて出店していた大型玩具店はかなりの売り上げ、集客力を誇っていたという。

　ただサンストリート亀戸は16年に閉館し、地元住民としては非常に困った事態になった。東口からスーパーがなくなったのだ。サンストリート亀戸には某大手流通系のスーパーが出店しており、デイリーユースとして多くの人が利用していた。北口（西側）にあり、上質な食を展開するアトレとうまく差別化ができ、利用する側も気分や日によって選べる状況だった。ただ、サンストリート亀戸の閉館により、駅前のスーパーはアトレ一択になる。アトレは東口の住民にとっては『遠い方の改札』になる。また高級感があり、財布の事情によっては毎日は使えない。そのため休日に少々遠いスーパーでまとめ買いすることも出てきた（誤解なきよう補足すると、アトレ亀戸は大好きである。20年に行った生鮮食品エリアのリニューアルは素晴らしく、ここ数年で一番の改装案件だと思っている）。

　ただKAMEIDO CLOCKの登場により、再び用途や気分に応じて、東口前にスーパーが出店し、用途に応じて選べるようになる。KAMEIDO CLOCKには食品スーパーとして「ライフ」が出店するので、価格にもある程度強みを持つだろう。また、縦積みでなく1フロアが大きいショッピングセンターとしての期待もある。駅ビルや縦積みのファッションビルの宿命として、1フロアの面積に限りがある。そのため、店舗面積も限られてしまう。KAMEIDO CLOCKもこうした状況は理解しているはずなので、大型店で集客にかかるはずだ。ただ、アトレも負けじと駅直結という立地（KAMEIDO CLOCKは駅から信号を渡らなければならない）、上質なMDなどを活かして集客を図るだろう。住民にとっては両方の施設が発展してくれれば、便利で住みやすくなる。

　商業記者として注目しているのは商圏だ。KAMEIDO CLOCKは東西に伸びる京葉道路に接しており、車のアクセスも良い。千葉方面（東側）は周辺には大型商業施設が少なく、東側からの集客を狙うはずだ。ここで気になるのは西や南の動向。亀戸駅の隣駅（西側）である錦糸町駅周辺には「錦糸町PARCO」、駅ビルの「TERMINA」や「オリナス錦糸町」などがある。ファミリー層や、デイリーユースなどの需要を取り込んでいる施設も多い。また、南側には「南砂町ショッピングセンターSUNAMO」「アリオ北砂」などの大型商業施設が構える。こうした施設がKAMEIDO CLOCKの影響をどの程度受けるか。以前、仕事という名目で自宅近くの商業施設をいくつか取材したが、その時複数の事業者から聞いたのは「商圏を広げたい」という言葉。南側の地域はマンションが立ち並ぶエリアが多いが、地域によっては賃貸でなく、分譲として販売したので完成当時はニューファミリーだったが、いまは子供が自立し、商圏が以前ほど力強くない場合もあるという。そうなると施設として成長を続けるためには商圏を広げる必要が出てくる。KAMEIDO CLOCKは、東側が商圏の中心になると思うが、西や南からもある程度の人が流れてくるはずだ。こうした人の動きが南側、西側の施設にどういった影響を与えるか。

　野村不動産も、自宅周辺の施設も普段から取材で大変お世話になっているので、全員が幸せになってほしいが……。開業により、どのように人が動いていくか注目したい。