商業施設新聞
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第308回

阪急阪神ビルマネジメント(株) 取締役 常務執行役員 三輪谷雅明氏


600件/700万m²の管理実績
沿線顧客の獲得で新たな価値創造

2021/11/30

阪急阪神ビルマネジメント(株) 取締役 常務執行役員 三輪谷雅明氏
 阪急阪神ホールディングスグループの商業施設を中心にプロパティマネジメント事業を展開している阪急阪神ビルマネジメント(株)。同社が管理運営する物件は、施設の形状も異なるため、一見すると同社がPMを担当しているのか分かりづらい施設もある。しかし同社はそれを逆手に取り、維持・管理物件を増やしながら、そのノウハウを次の開発計画に生かしている。取締役 常務執行役員の三輪谷雅明氏に、同社の強みや、コロナ禍における商業施設の運営事情について話を聞いた。

―― 貴社の歴史を。
 三輪谷 当社は阪急ファシリティーズと阪神エンジニアリングが合併し、2007年10月に設立された。阪急電鉄、阪神電気鉄道、阪急阪神不動産の3社が所有するオフィスビルや商業施設を管理・運営している。他方、阪急阪神ホールディングスグループが手がけるホテル、球場、劇場の施設管理も行っており、傘下にはホテルの客室清掃などを行う阪急阪神クリーンサービスや、巡回警備などを行う阪急阪神ハイセキュリティサービスが入っている。そのため、施設の営業から管理、修繕、トラブルまで、一気通貫で取り組める体制を構築している。

―― 商業施設のPMは。
 三輪谷 主な管理物件として、阪急電鉄が所有する「阪急三番街」「阪急西宮ガーデンズ」「ヌー茶屋町」、阪神電気鉄道が所有する「ハービスOSAKA」や「ハービスENT」、阪急阪神不動産が所有する「HEPファイブ」や「HEPナビオ」があり、このほか沿線には中小を含めて様々な施設が立地する。これらは鉄道会社が社有地を有効活用して整備した施設だが、施設名称も、規模も、コンセプトも違う。逆に言えば、同じフォーマットを作らず、バラエティーに富んでいるのが特徴だ。

―― なぜ、バラバラに施設を展開するのか。
 三輪谷 前述の阪急電鉄、阪神電気鉄道がライバル関係にあったという事情も存在するが、その地域や時代に応じて開発してきたことが背景にある。高架下と地下街を組み合わせた阪急三番街は、その最たる例だ。立地や物件特性に合わせて開発することで、阪急阪神ホールディングスグループ施設の中でも差別化を図ることができる。
 施設名称を統一していないのも、その施設の個性を生かすためだ。例えば、4月に開業した「EKIZO神戸三宮」は神戸らしい上質で賑わいのある新たな飲食シーンを創造すべく、港町に漂う異国情緒(エキゾチック)と駅(エキ)から名付けた。このように施設名称も、規模も、コンセプトも同じフォーマットを作らないことで、その地域に密着したオリジナルの商業施設が完成する。

―― 管理物件数も多い。
 三輪谷 現在、全管理物件数は約600件、全管理物件面積は約700万m²の規模となる。ビルはもちろん、郊外の巨大モールや地下街、高架下など様々な物件を扱っているのが当社の強みと言える。グループ外の施設では商業・オフィスのほか、ロジスティクス施設、公共施設、総合病院、大学、テレビ局社屋、ドーム球場など、さらに幅広い管理実績がある。

―― 新型コロナウイルスの影響は。
 三輪谷 テレワークの推進により、都心におけるオフィスワーカーの需要が飲食を中心に激減した。その一方で、沿線の商業施設は、売り上げが比較的堅調に推移している。この傾向が元に戻るには時間がかかると思うが、あまり悲観していない。と言うのも、ポイントカードの分析では、お客様がシーンに応じて使い分けているのが見て取れるからである。
 例えば、兵庫県の夙川や苦楽園に居住するお客様は、普段の買い物で最寄りの「エビスタ西宮」を利用するが、より幅広い選択肢や体験を求めて「阪急西宮ガーデンズ」、さらには都心の百貨店やSCを訪れる機会がある。つまり、シーンに応じて別の施設を利用している。そのため、今後は施設固有の顧客に加え、広域の沿線顧客に存在感を示すことが、その商業施設、ひいては出店する小売店への価値につながってくるだろう。

―― コロナ禍のイベントや販促は。
 三輪谷 第6波の懸念もあるため、リアルのイベントはできないが、デジタルスタンプラリーや持ち帰り型ワークショップなど非接触型のイベントを実施し、どのように顧客との接点を持つのか模索中である。また、共通のポイントカード「おでかけカード」の公式LINEアカウントを開設するなど、様々なサービスを展開することで、新しい顧客との接点づくりに取り組んでいる。
 販促の実行額も減っているものの、年末商戦に向けて、オータムフェアやクリスマスフェア、ギフト特集などの実施を検討中だ。新型コロナウイルスの流行前のようなイベントや販促は難しいため、どのように顧客と接点を持つのか、その方法を考えている。

―― 最後に将来展望を。
 三輪谷 今後は親会社が開発する案件をフォローする一方で、外部案件も無理のない範囲で拡大していきたい。そのためにもPM人材の確保育成に努めていく。


(聞き手・副編集長 岡田光)
※商業施設新聞2422号(2021年11月23日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.360

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