電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞・情報紙誌のご案内出版物のご案内広告掲載のご案内セミナー/イベントのご案内
第389回

新型コロナウイルス・ショックは株式市場を直撃しないのだ


~テレワークきっかけに世界の半導体株は超爆裂の上昇現象~

2020/6/26

 「米国の株価についてはサプライズの一言に尽きる。1月20日に超高値をつけてから、新型コロナウイルスの衝撃で3月24日には大暴落となり、実に3000兆円が喪失した。ところがどっこい、6月5日の段階で2000兆円を取り戻してしまった」

 慎重な目つきでこう語るのは、東海東京調査センターの半導体アナリストである石野雅彦氏である。石野氏によれば、リーマン・ショックと新型コロナウイルス・ショックの大きな違いは、世界の金融市場の状況にあるという。リーマンの場合には、世界中の金融システムがズタズタになり、この回復には5年間以上かかったわけであるが、新型コロナ・ショックは生物ウイルスの疫病という一過性のものであり、このことで世界の株式市場をはじめとするファイナンスは決して深くは傷ついてはいない。

 もちろん、各国はGDPの20%というとんでもない企業支援、個人の生活支援を断行しているわけだから、国家財政が厳しくなっていくのは仕方がないところだ。ただし、コロナ・ショックは一番重要な企業活動という点で、リーマンより傷は浅いのだ。

 「コロナによって、需要喪失、所得喪失という2つの失われたものが大きいのは事実であるが、株式市場は揺らいでいない。1929年の世界大恐慌の時には、金利を上げてしまったが、それが間違いであった。そのため、売り一色になって、大混乱となった。しかし今回の米国政府の対応は素晴らしい。FRBはひたすら米国債を買った。なんと、2兆ドルの資金が資本市場に流れ込んだ。このことによって、株式市場は過剰流動性による資産効果が出た。FRBはさらに12兆ドルのパイがあるから、今回のコロナ・クライシスは抜け出せると考えているのだろう」(石野氏)

東京証券取引所=東京都中央区 2018年10月10日撮影(提供:朝日新聞社)
東京証券取引所=東京都中央区
2018年10月10日撮影(提供:朝日新聞社)
 米国株に大きく連動されるのは日本株である。しかして、日本の株価もここに来て大きく戻している。一時期は2万3000円まで付けたわけであり、これで一安心という投資家は多かった。日本の時価総額の上限はGDPの1.2倍と見られることから、2万3000円までいけば1.16倍まで来たわけであり、当然のことながら調整局面に入ってくる。日米ともに株価はしっかりと担保されているということを背景にして、日米の企業は今後の立て直しに入っていくことになる。

 それにしても、日本の場合はいまや超大株主が事実上、日本銀行やGPIFであるからして、変な意味で安定度は高い。もはや準国営企業と言ってよいほどの会社がいっぱいある。株価が爆発的に上昇していることで注目を集めているアドバンテストは、半導体テスターの世界最大手であるが、この株の18%を持っているのが日本銀行なのである。

 「テレワークをきっかけに、いわゆるコロナバブルスターが登場してきている。その代表格がWeb会議システムのズーム社であり、いまや1日あたり平均会議参加者数数が3月の2億人から、4月にはあっという間に3億人まで膨らんだ。ちょっと前まで赤字であったズーム社は、なんと株式時価総額が半年間で4倍の7兆円まで急上昇した。米国の半導体製造装置大手であるアプライドマテリアルズの株式時価総額6兆円を追い抜いたわけである。たった2500人のベンチャーがここまで来た。あなおそろしや、とはこのことである。そしてまた、ASMLを筆頭に、世界の有力半導体関連各社の株はひたすら上昇している。キオクシアの今秋の上場も期待できるかもしれない」(石野氏)

 ちなみに、ズーム社の業績は急拡大したが、当然のことながらデータセンターがパンクした。それを引き受けたのがアマゾンである。何のことはない。こうしたテレビ会議システムなどが世界中に広がっていく裏では、結局のところ、アマゾン、グーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフトといったデータセンターのハードの大手に金が落ちていくことになる。そしてまた、データセンターの中枢を占めるのが、CPUであり、GPUであり、DRAMであり、NANDフラッシュメモリーであり、要は半導体産業にとんでもないプラス効果をもたらす。テレワークの爆発的増加は、半導体の超爆裂現象を呼び込んでくるのだ。

 「慎重と言われるWSTSですら、今年の半導体(IC)の伸びを前年比3%増と予測し始めた。今のところはデータセンター需要が好調だが、当然のことながら、下期に入ってはパソコンやスマホ関連の回復が期待される。そしてまた、ゲームマーケットも新型コロナウイルスの影響ですさまじい動きをしており、これまた半導体に良い結果をもたらす。コロナ・ショック後の世界経済は半導体産業が大きく担っていくという展開は、もしかしたら誰も予想できなかったことかもしれない」(石野氏)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
サイト内検索