電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第368回

2020年の台湾の実質経済成長率は2.72%で2年連続好調


~米中貿易戦争はプラス効果、中国からの生産回帰進む~

2020/1/31

 「台湾における2019年の実質経済成長率は2.64%であり、予測よりも0.18ポイント上方修正されている。とりわけ19年10~12月の成長率は前年同期比3.38%増であり、6四半期ぶりに3%に乗せた。実を言えば、米中貿易摩擦による中国から台湾への生産回帰、つまりシフトの動きが寄与したのだ」

 こう語るのは日本貿易振興機構の海外調査部の加藤康二氏である。熊本で1月21日に開催された熊本県工業連合会における同氏の講演での発言である。

 台湾の人口は2359万人であり、日本の約5分の1、面積は3万6197km²であり、日本の九州とほぼ同じくらいの大きさなのだ。1人あたりGDPは2万5000ドルに達しており、かなり高くなってきている。そしてまた、台湾がもっとも好きな国は断然日本であり、何と全体の56%に達している。過去最高を更新したのだ。ちなみに第2位が中国6%、第3位が米国5%、第4位がシンガポール2%であり、2位以下を大きく引き離している。日本に最も近いお隣の国とは異なり、台湾はまさに「ニッポン大好き」の筆頭格である。

日本貿易振興機構/海外調査部の加藤康二氏
日本貿易振興機構/海外調査部の加藤康二氏
 「2020年の台湾の実質経済成長力の予測については2.72%に上がると見ている。2年連続の好調が続くのだ。米中や日韓の貿易摩擦は様々なリスクにはなっているが、台湾にはむしろプラス効果をもたらしている。2020年は半導体産業の在庫調整が進み、投資も増加する。そしてまた、台湾企業の投資も中国から台湾に回帰し、アジアにもリスクヘッジしていく。5G、AI、モノのインターネットなどが、輸出需要増をもたらすと予測している」(加藤氏)

 ちなみに、台湾はまさに輸出で食べていると言ってよいだろう。そしてまた、工業部門生産額も31.14%が半導体を中心とする電子部品であり、10.13%が電子機器であるからして、エレクトロニクスで食べていると言っても過言ではないのだ。

 台湾の輸出の約3分の1はICをコアとする電子部品が占めている。2019年の輸出を見れば、電子部品は1.6%増、電子機器は20.8%増と堅調であった。つまりは、米中貿易戦争の激化に伴い、台湾に依頼する案件が増えてきたことと、中国を迂回して台湾からの輸出入に切り替えるという動きが加速したのだ。ちなみに台湾の地域別輸出を見れば、中国が断トツの1位であるが、2019年は4.8%も減った。これに対して、米国向けは17.2%も増えた。

 さて、米中貿易摩擦は台湾企業へも様々な影響を与えており、製造業の8割が「原材料価格が上昇した」「受注の流出があった」「為替の差損があった」とのアピールが寄せられている。しかして製造業の54%は米中貿易摩擦に対して運営調達の調整、工場移転、サービス拠点の変更、サプライチェーン管理の強化など様々な対応を行っている。

 台湾製造業全体の61.6%が現在中国に工場または営業拠点を有しているが、米中貿易摩擦を理由に投資先や工場・サービス拠点の変更、移転を促進している。ASEANへの移転を検討中の企業は18.5%、同様に台湾回帰を検討中の企業は12.3%に上っている。

 「台湾政府当局は2019年1月から台湾回帰投資の支援策を開始した。条件を満たした台湾回帰投資案件は土地、水、電力の供給や労働力確保のための優遇措置などが受けられる。これは2021年まで実行される。2019年1月~12月までに承認された台湾回帰投資の支援案件は160社に及んでおり、投資予定額は2兆5549億円となっている。2021年までの3年間の台湾回帰支援により、3兆6000億円の投資と9万人の雇用機会創出を見込んでいる」(加藤氏)

 中国に進出している台湾企業の台湾回帰または第三国移転などの事例などは、確かに急ピッチで進んでいる。EMSの最大手であるホンハイは台湾、ベトナム、インド、米国などに移転または生産移管している。同じくEMSのウィストロンはフィリピンとインドに生産移転している。クワンタとインベンテックは台湾に生産回帰。コンパルは台湾回帰とベトナム生産移転、ペガトロンは台湾、インド、インドネシアに生産を移すなど、枚挙にいとまがない。

 「経済は順調に成長しているものの、台湾においても日本と同じように少子化は進んでいる。出生率は1.06まで落ちており、何と日本の1.43をはるかに下回っている。こうした状況下にあって台湾への生産回帰が進めば、当然のことながら人口は増えてくるわけであり、出生率の改善にもつながる。米中貿易摩擦は台湾にとって決してリスクではなく、チャンスであると受け止めている」(加藤氏)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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