電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第353回

台湾半導体生産能力は世界トップの21.8%占有


~TSMCはファンドリーで独走体制を構築している~

2019/10/4

 2019年9月25日のことである。台湾エクセレンス2019の記者発表およびセミナー商談会が、日本橋のマンダリンオリエンタル東京ホテルで開催された。筆者はここで日本および台湾の半導体産業の展望について講演をさせていただいた。超親日的である台湾は、日本との関係は良好であり、どこかの国と違って、真に日本という国家および日本人が大好きという気持ちがひしひしとこちらに迫ってくる思いがした。

 台湾は本当に小さな島でありながら、GDPは5880億米ドルもあり、世界ランキング第23位に位置している。輸出大国でもあり、世界第18位の3360億米ドルを達成しており、日本と台湾間の取引は672億米ドルにも達しているのだ。

台湾エクセレンス賞は今や世界に認知されてきた
台湾エクセレンス賞は
今や世界に認知されてきた!!
 台湾エクセレンスというのは、世界中のユーザーに素晴らしい価値を届ける最も革新的な台湾の製品に付与されるものである。研究開発、設計、品質、マーケティング、製造における卓越性に基づいて選出される賞であり、1993年に中華民国経済部によって始められた。19年については、情報通信技術部門で世界第1位のマザーボードとコンシューマー市場で台数世界第3位の総合エレクトロニクスメーカーであるASUSの製品が選出されている。また、ポータブルSSDで世界にその名を知られるトランセンド、台湾ナンバー1のAI顔認識技術を持つサイバーリンクなどもこの賞に選出されている。

 さて、躍進を続ける台湾半導体産業であるが、世界の地域別の半導体生産能力を見れば、実に台湾はトップに位置しており、全体の21.8%を占有している。18年12月における世界の地域別の半導体生産能力は台湾に続いて韓国、日本、北米、中国、欧州、その他となっている。

 台湾半導体産業の事業構造を見れば、IC製造が最大分野で1兆4856億台湾ドル、これに続くのが生産委託のファンドリーであり、1兆2851億台湾ドルとなっている。またIC設計にも強く、6413億台湾ドルの規模を誇る。

 18年の台湾半導体産業生産額は前年比6.4%増の2兆6199億台湾ドルと、1桁プラス成長であった。19年は同1.3%減の2兆5850億台湾ドルが予想されている。世界全体の半導体生産は2桁マイナスとなっているが、比較的台湾の傷が浅いのは、市況の悪さから外部発注、つまりファンドリーが増えており、これが有利をもたらしている。一方で、韓国のメモリー低調などもあり、台湾への発注は有利な展開になっている。

 台湾の有力な半導体企業は、ファンドリーについてはTSMC、UMC、ヴァンガード、パワーチップなどがある。IDMについては、マクロニクス、ウィンボンド、ナンヤテクノロジーなどがある。TSMCとUMCはCMOS、バイポーラ、ミックスドシグナル、LED、CMOSイメージセンサー、MEMSなどあらゆる種類のプロセスに対応するのが最大の特徴である。

 ヴァンガードは高耐圧、ディスクリートなどのニッチ分野が得意。マクロニクスはコンピューター、コンシューマー、コミュニケーションが中心で、任天堂のゲーム機、パチンコ向けのROM、エンベデッド向けのNOR型フラッシュメモリーが得意。ウィンボンドはシリアル・パラレルタイプのNOR型フラッシュ、NAND型フラッシュ、スペシャリティーDRAM、モバイルDRAM、グラフィックスDRAMなどを手がけており、いずれも韓国大手企業と競合しない分野に特化。ナンヤは汎用DRAMを手がける唯一の企業であり、最大株主は台湾の大手企業である台湾プラスチックであるため、経営基盤は比較的に盤石だ。

 ロジックファンドリー業界では、最大手のTSMCの独走態勢がより鮮明になってきている。19年から量産が開始された7nm世代ではEUV露光を導入するが、世界の先陣を切るのは台湾TSMCであり、韓国サムスンより先行している。

 メモリーやロジック、マイコンなどを含む世界の半導体全体のファンドリーを見渡してみても、TSMCは市場シェアの約半分を握る状況となっており、圧倒的な力の差を見せつけている。7nm、10nm、14nm、28nmなどにおいて、品質、歩留まり、ともに世界最高水準。これにUMCやグローバルファウンドリーズ、SMICなどの2番手グループが攻勢をかける構図となっているが、各社ともに28nm世代の低迷があり、これが不振の原因。主力となっているプロセスはポリ/SiON2であり、付加価値の高いHigh-k、メタルゲートの立ち上げがスムーズに進んでいないのだ。
 
TSMCの設備投資は19年に1兆2000億円を執行すると言われており、インテルに次ぐ投資水準となっている。

 ユニークなカンパニーとしては、GaAsファンドリーで世界シェア70%を握っているウインセミコンダクターズ、世界最大のOSAT企業であるASEテクノロジー、台湾最大のLEDチップメーカーであるエピスター、ドライバーIC業界で世界2番手のノバテックなどがある。最近の動きとしては、台湾第2位のUMCが三重富士通の300mm工場を取得したことと、中国のJHICCへのDRAM開発プロジェクトを中止したことがある。台湾唯一の汎用メモリーメーカーであるナンヤテクノロジーは、ここに来て爆発的成長を遂げており、たった4年間で売り上げを倍増するという離れ業を演じ、18年は847億2200万台湾ドルに押し上げている。

 米国の大手ファブレスカンパニーであるクアルコム、ブロードコム、エヌビディアなどからの大量発注は台湾ファンドリーを強く支えてきた。しかして、スマホが15億台をピークに頭打ちになっているため、今後はAI、5G、次世代自動車などのスマート向け半導体に注力することが台湾半導体の新たな将来像を作ると見られている。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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