電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第128回

COP21で地球温暖化対策に進展


「気温上昇1.5℃未満」で合意

2016/1/8

 海面水位上昇、異常気象、海氷減少、収穫不足など、言うまでもなく地球温暖化により引き起こされる影響は極めて甚大だ。こうした地球温暖化への対策として、10年以上前から国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)が開催されてきたが、各国の足並みが揃わなかったことや利害関係の不一致などから、実効的な目標の合意には達してこなかった。
 一方、2015年11月30日~12月11日に仏パリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、これまでにない進展があったと言えよう。2大CO2排出国である米国と中国を含む、世界196カ国・地域が参加し、発展途上国を含むすべての参加国・地域が温室効果ガスの削減目標を掲げることになった。また、「気温上昇を1.5℃未満」という、これまでにない野心的な長期目標が確認された。

 地球温暖化とは地球の地表温度が上昇することを指すが、長い地球の歴史の中で気候の温暖化と寒冷化は何度も繰り返されてきた。その意味では温暖化も寒冷化も自然現象と捉えることができる。
 一方、近年叫ばれている地球温暖化は、産業革命以降の温室効果ガス増大がもたらした人為的なものだ。工業化以降の経済成長や人口増加が主な原因とされている。温室効果ガスの代表格は言うまでもなくCO2だが、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄なども挙げられる。

温暖化がもたらす影響

 では、どのようなメカニズムで地球温暖化は進むのか。一般的に言われているのは、温室効果ガス層による熱の反射だ。地球に届いた太陽熱は地表で反射され、宇宙空間へと放出される。ところが、温室効果ガス層があると、反射された熱は再反射されて地表に届き、気温を上昇させるという。

 地球温暖化により引き起こされる影響は、海面水位上昇、異常気象、海氷減少、収穫不足など様々だ。例えば、海抜の低いマーシャル諸島、バングラデシュ、モルディブなどで被害が出ていると言われている。バングラデシュではこのまま地球温暖化が進めば国土の2割が水没し、数千万人規模の難民が発生する可能性があるという。また、温暖化により北極、南極、グリーンランドなどにおける海氷、氷床の減少が広範囲で進んでいる。北極の海氷範囲は10年ごとに2.1~3.3%、夏季は5.0~9.8%減少しているという。

 加えて、絶滅の危機にさらされている生物は、ますます絶滅の可能性が高まるほか、マラリアなど熱帯性の感染症の発生範囲が広がるという。さらに、病害虫が増加することで穀物生産が大幅に減少し、世界的な食糧難を招く恐れもある。

 日本では各地で異常気象が報告されている。気象庁によると、13年8月21日に高知県江川崎で観測史上最高気温の41.0℃を記録。07年8月には埼玉県熊谷および岐阜県多治見で40.9℃となった。13年の短時間強雨発生回数は237回となり、1976~2013年と比較して明確に増加した。このほか、都市部のヒートアイランド現象、海岸部の砂浜減少、漁獲量の変化、害虫の大量発生、稲の未熟粒、トマトや柑橘類の着色不良などが報告されている。

 国際連合の下部機関であるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)によると、10年における世界温室効果ガス別排出量比率はCO2(化石燃料由来)が65.2%、メタンが15.8%、CO2(森林現象、土地利用変化等)が10.8%、COが6.2%、フロン類等が2.0%。同年の国別排出量では、トップの中国を筆頭に、米国、EU、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、日本と続く。

「気温上昇1.5℃未満」で合意

 今回のパリ協定で合意した主な内容は、(1)気温上昇を2℃より低く、1.5℃未満とする取り組みを推進、(2)5年ごとに温室効果ガスの削減目標を国連に提出、(3)発展途上国の温暖化対策に先進国が20年まで年間1000億ドルの資金を提供し、かつ20年以降も継続する、の3つ。
 このうち、最も重要なのが(1)だ。10年にメキシコ・カンクンで開催されたCOP16では、気温上昇を2℃以内に抑えることで合意したが、今回はそれをさらに上回る野心的なものとなった。海面水位上昇の脅威にさらされている島嶼国の代表らが強く主張したのも要因の1つとされている。
 一方で、1.5℃未満でも足りないとの意見も多い。また、(2)については法的拘束力がないため、実現性が乏しいとの声もある。

日本技術にチャンス到来

 こうした目標を受けて日本の低炭素技術にもチャンスが到来している。発展途上国には、同技術を保有していないケースが多く、日本企業による製品の輸出につながるためだ。その際に効果を発揮するのがJCM(The Joint Crediting Mechanism:2国間クレジット)だ。同制度は、投資の一部を環境省が負担し、代わりに提供した国・地域の温室効果ガス削減分を日本の削減分として算入できる仕組みだ。

 同制度を活用した事例は増加傾向にある。最近ではJFEエンジニアリング(株)(東京都千代田区)によるミャンマー・ヤンゴン市向けのごみ焼却発電プラントが挙げられる。同プロジェクトは環境省が投資の半分を負担し、同社が同市内に日量60t・発電容量700kWのごみ焼却発電プラントを構築するものだ。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 東哲也

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