電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第122回

クルマの安全性向上技術がさらに進化


車載センサー市場は2020年までに飛躍的成長を遂げる

2015/11/20

 先般開催された「東京モーターショー2015」において、自動車メーカー各社から最新の安全・環境対応技術、さらには自動運転の実現に向けた技術開発の方向性・コンセプトが数多く発表された。

日産が目指す自動運転のコンセプトカー「ニッサンIDSコンセプト」
日産が目指す自動運転のコンセプトカー
「ニッサンIDSコンセプト」
 日産自動車は、進化した車両制御技術に安全技術と最新の人工知能(AI)を融合させることで、2020年代には自動運転の実現を目指していく方針を改めて明らかにしている。16年末までに、混雑した高速道路上での安全な自動運転を可能とする技術「パイロット ドライブ1.0」を世界に先駆けて日本市場に導入する計画だ。また、同社が目指す自動運転のコンセプトカー「ニッサンIDSコンセプト」では、すでに実用化され、市販車両に搭載されている技術をさらに進化させたテクノロジーを採用している。例えば、センサーがクルマの周りの状況を常にモニタリングし、リスクの芽をドライバーよりも早く察知。危険を知らせ、間に合わないと判断した時にはシステムが介入して事故を未然に防ぐ。さらに、人工知能が現在の運転シーンを正しく把握したうえで、先にある状況を“予測”して安全かつ正確な運転行動を選択する。

低燃費性能の向上に加え、進化した安全性向上技術を搭載した新型プリウス
低燃費性能の向上に加え、
進化した安全性向上技術を搭載した新型プリウス
 トヨタ自動車では、年内に第4世代となる新型プリウスの発売を予定しているが、同車では目標燃費40km/L(一部グレード)という超低燃費性能の実現に加え、先進の安全技術を搭載している。ミリ波レーダーと単眼カメラを用いた総合的な制御により、クルマだけでなく歩行者も認識する歩行者検知機能付衝突回避支援型プリクラッシュセーフティーや、全車速追従機能付のレーダークルーズコントロールなどをセットにした衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を採用。また、隣の車線を走る車をレーダーで検知し、死角エリアに入るとドアミラーのLEDインジケーターを点灯させ、ドライバーに知らせる「ブラインドスポットモニター」なども採用するなど、安全性能が一段と強化されている。

車載センサーが爆発的に成長

 これらの安全機能を実現するためには、フロントカメラやリアカメラ用のイメージセンサーや、距離を計測してオートクルーズコントロールなどを実現するミリ波レーダー、駐車支援や接近車両警告のためにクルマの周囲に搭載される超音波センサーなど、様々なセンサー(センシング技術)が必要とされる。
 矢野経済研究所が発表した車載用センサーの世界市場予測によると、その市場規模は2014年の2兆2543億円から年平均成長率5.7%で伸長し、20年には3兆1487億円規模にまで拡大する見通しだ。なかでもADAS(先進運転支援システム)向けセンサーの伸びが最も大きく、14年の2973億円から年平均成長率20.5%の高成長率で推移し、20年には9094億円と1兆円規模に迫るまでに拡大すると予測している。「今後、検知精度の向上や多機能化に向け、複数個のセンサーを搭載するセンサーフュージョンが中心になり、車両1台あたりに搭載されるセンサーの数量も大きく増加する」としている。


大型車両における安全対策

 クルマにおける安全性向上技術の採用は乗用車だけではない。トラックやバスなどの大型車両においても様々な安全システム・機能が搭載されており、むしろ安全に対する業界での意識の高まりは、大型車両を手がけるメーカーの方が早かったかもしれない。

 その契機となったのが、12年4月に起こった「関越自動車道高速バス居眠り運転事故」だ。この事故では、7人もの乗客が亡くなり乗客乗員39人が重軽傷を負った。非常に痛ましい事故であり、記憶に残っている方も多いだろう。
 この事故を機に大型バスにおける安全性確保の重要性が再認識され、同年10月には国土交通省が「自動ブレーキ」の義務化を提案。13年1月に法改正がなされ、新型車については14年11月1日から、継続生産車は17年9月1日から義務化されることとなった。

 このほか、バスやトラックなどの大型車両では、カメラベースのドライバーモニターの搭載が進んでおり、限定的ではあるが一定の市場を形成している。
 同モニターは、走行中のドライバーの顔の方向や眼の状態をモニターカメラにより常時確認。前方注意力不足の検出時には警報音で警告する。さらに衝突の可能が高まると、衝突被害軽減機能が早期に作動する仕組みだ。昨今は、カメラ精度の向上で、太陽光やサングラス着用の影響下でもより正確な検出ができるシステムが製品化されている。なお、調査会社テクノ・システム・リサーチによると、ドライバーモニターを含む車室内センシングシステム市場は、18年の69万台から20年には318万台規模と、4倍以上にまで拡大する見通しだ。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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