電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第120回

「電子デバイスフォーラム京都」に注目せよ!


デバイスの最新情報が一挙集結

2015/11/6

会場となる京都リサーチパーク
会場となる京都リサーチパーク
 11月12、13日の2日間、京都リサーチパーク(京都市下京区)で日本電子デバイス産業協会(NEDIA)主催の「第2回電子デバイスフォーラム京都」が開催される。技術講演を中心に17セッション49講演が行われる一大セミナーイベントで、次世代自動車やエネルギー、IoTなどの成長分野を主要テーマに設定。半導体や電子部品といったデバイスだけでなく材料・製造装置などの川上から応用製品・セットまでの川下に至るまで、最新情報が一挙に集結する。筆者は大阪支局所属の記者として、同フォーラムの準備段階から関係者の取材を重ねたことで、その全貌を深く知る立場にある。そこでこの場を借りて、開催を間近に控えた同フォーラムを紹介し、関西のみならず全国の業界関係者の参加を広く募ることとする。

13年続いた「SEMI Forum」を承継

 フォーラムの内容に立ち入る前に、開催の経緯について触れておきたい。「電子デバイスフォーラム京都」としての開催は昨年に続き2回目だが、実質的な来歴はさらに遡ることができる。業界関係者は、半導体製造装置の業界団体であるSEMIジャパンが開催していた「SEMI Forum Japan(SFJ)」を覚えておられる方も多いと思う。関西最大級の半導体エレクトロニクスのセミナーイベントで、13年の長きにわたって親しまれてきたが、惜しくも13年を最後に終了が決定した。

昨年の開催風景
昨年の開催風景
 だが、関西には首都圏と異なりSFJを除くと半導体エレクトロニクスをテーマとした大規模な展示会やフォーラムは存在しない。このままでは関西の業界関係者の情報収集や交流の機会が失われてしまうと危機感を抱いたのが、SFJのプログラム運営に携わっていた企業・大学関係者たちだ。彼らがSFJの承継を目指して各方面に働きかけ、その受け皿となったのが折しも、13年9月に発足したNEDIAだった。NEDIAは川上から川下までの幅広い分野における横断的戦略組織の実現を目指しており、そのバックアップを得たことでスピーディーな新フォーラムの立ち上げを進め、断絶することなく14年10月に「第1回電子デバイスフォーラム京都」を開催することができた。フォーラムの企画、プログラム選定に携わったメンバーの多くはSFJにも長年関わってきており、そのノウハウや人脈の蓄積が活かされている。

飛躍する京都企業の活力を主軸に発信

 会場を京都に設定したのにも狙いがある。同フォーラムは半導体や液晶に加えて日本企業の飛躍が著しい一般電子部品(モーター、コンデンサー、抵抗、スイッチ、コネクター、センサーなどの総称)を含む。この分野では、コンデンサーの村田製作所、モーターの日本電産、半導体から電子部品を幅広く扱うロームといった京都企業が世界をリードしている。また、一般電子部品以外でも、製造装置や材料分野において世界的な強みを持った企業が数多く所在する。これら京都企業を軸に、電子デバイスの最新情報を広く発信する。

 もちろん、京都企業の活力を地盤に据えるといっても地域のローカルイベントの枠組みには囚われない。国内各地の企業・大学・研究機関から講演者を取り揃え、海外の最新動向もカバーする。文字どおり「電子デバイスの全貌」を知るには最適な構成となっている。

中国BOEなどが基調講演

 前置きが長くなったので、フォーラム内容の紹介に移ろう。フォーラムの構成は基調講演・マーケットセミナー、技術講演、特別セッションの3つに大別できる。
 基調講演は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の安全・信頼性推進部 部品プログラム室の根本規夫室長、BOEジャパンの久保島力社長、SCREENセミコンダクターソリューションズの須原忠浩社長、東芝の齋藤昇三常任顧問の4名が登壇する。JAXAの根本氏は宇宙用電子部品に求められる耐環境性について講演する。今後の電子部品の高信頼性化に向けた示唆を与えてくれるものとなるだろう。また、今や世界最大級のFPDメーカーとなった中国BOEの事業戦略は、日本がそれとどう対峙していくかを考えるうえで大いに参考となるはずである。半導体洗浄装置トップであるSCREENの講演は、半導体の技術的な発展や日本メーカーが強い装置・材料分野の今後を知る最良のものとなる。ストレージ分野で強みを持つ東芝は、IoT/CPS(Cyber-Physical System)社会が実現した際の未来像を示してくれるだろう。

 マーケットセミナーは主に営業・事業企画畑に携わる関係者をターゲットに、市場の最新動向をカバーできるプログラムである。IHSグローバルの南川明氏、東海東京調査センター企業調査部の萩原幸一郎シニアアナリスト、産業タイムズ社社長の泉谷渉と、電子デバイス分野を包括的に知ることができる講演を配する。また、エレコムの高川雄一郎顧問は米・フィンランド・中国の企業で勤務してきた豊富な経験から、中国IT企業の強さの要因について講演する。「敵を知る」ことは日本企業の今後においても多くの気づきを与えてくれるはずだ。

技術講演は国内大手自動車メーカーが揃い踏み

 技術講演は「次世代自動車」「エネルギー革新を引き起こす電子材料」「電子部品から見た最新IoT/M2M」の3テーマ、9セッションをラインアップ。次世代自動車は関心の高まる自動運転をはじめ、バッテリー・モーター、次世代パワー半導体といったテーマを網羅する。注目すべきはトヨタ、ホンダ、日産、富士重工といった大手自動車メーカーが揃い踏みであることだ。エネルギー・電子材料は実用化が始まった水素エネルギーなどの再生可能エネルギーや、それらに用いられる省エネデバイス、材料を網羅する。有機デバイスや人工光合成などの新たな取り組みについても取り上げられる。IoT/M2Mでは、IoT社会の実現ビジョンの提示に加えて、その際に大きな役割を果たすセンサーや材料・デバイスの動向が紹介される。デバイス・材料側だけでなく、応用製品側も安川電機のロボット事業などが用意されており、注目だ。

 特別セッションでは、半導体・電子部品・基板実装などの基礎講座を豊富に取り揃えている。昨年実施した半導体基礎講座が好評だったため、テーマを拡充した。基礎講座というと若手向けというイメージがあるが、技術者でない文系社員や技術系のベテランであっても、半導体や電子部品の周辺分野を担当していて改めて学び直したいと考えている人も広く対象としている。「今さら初歩的なことは聞けない」という人にこそオススメだ。このほか、京都大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学のポスター展示や技術相談などが行われる無料の大学セッションが開催される。

展示・レセプションを交流の場に

 ほかにも、17件と小規模だが、企業・大学による展示ブースが設けられる。講演の合間や昼休みなどのひと時に立ち寄って、展示物を見ながら情報収集ができる。また、キーパーソンとの縁を求めるビジネスマンにとって見逃せないのが、12日の夕方から開催されるレセプションだ。昨年は村田製作所の村田恒夫社長ら京都企業の重鎮が出席し、非常に盛況だった。有料セッション参加者であれば無料のため、情報収集や交流の場としてぜひ活用してほしい。

 以上、駆け足で紹介してきたが、フォーラムのすべてを語り尽くせたとは到底言えない。関心を持たれたら、ぜひ公式ウェブサイトから詳細を確認し、積極的に参加していただきたい。必ずや、明日のチャンスを掴むためのきっかけを得る場となるはずである。
 フォーラムの詳細および申し込みは、http://www.nedia.or.jp/ddf2015/ まで。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 中村剛

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