電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第118回

サムスン電子の好調は本物か


2015/10/23

 韓国を代表する企業であるサムスン電子は復活するのであろうか。同社は、2015年7~9月期(第3四半期)の業績(暫定)が売上高51兆ウォン(約5兆3700億円)、営業利益7兆3000億ウォン(約7680億円)になったもようだと発表した。営業利益だけをみると明らかに好調であり、韓国証券街が予想していたコンセンサスを大きく上回る結果となった。

営業利益はV字回復

 第3四半期の7兆3000億ウォンという利益水準は、前年同期の営業利益が4兆ウォン(約4210億円)まで下がり危機感が漂ったことと比較すると、右肩上がりのV字回復に映る。また、売上高についても、前年同期の47兆4500億ウォンに対して7.5%増加し、本格的な回復を予感させる実績となった。



 こうした好業績を牽引したのは、半導体およびディスプレーを含むDS事業部門である。

 特に、半導体事業は3兆6000億ウォン(約3790億円)の利益を上げ、営業利益全体の半分に迫る勢いであった。主力製品であるDRAMの価格が下落しているにもかかわらず、最先端の20nmプロセスへの転換によるコスト改善効果が現れたことに加え、NAND型フラッシュメモリーの収益性改善も寄与した。非メモリー分野でも順調に売り上げを拡大した。アップルのiPhone向けA9チップの生産と、サムスン電子が独自で開発したエクシノス(スマホに搭載されるアプリケーション・プロセッサー)の生産量拡大が収益の拡大に貢献した。

一時的なドル高の為替差益も

 また、ディスプレー分野でも巻き返したようだ。中国勢の猛追に加えて、LCDパネル市況の悪化などによって、苦戦を強いられていたディスプレー事業だが、ここにきて有機発光ダイオード(OLED)の貢献度が高まっている。中~低価格帯のOLEDがスマートフォン(スマホ)に採用され、販売量が増加したことに伴い、第3四半期は予想値を2倍近く上回る9000億ウォン(約947億円)程度の営業利益を上げたと予測されている。

 加えて、DS事業部門の大半がドル決済であることから、同期のドル・ウォン為替レートが7~8%のドル高で推移し、これによる為替差益が生じたことも、営業利益の増加を後押しする要因の1つとなった。

好調が続くかは未知数

 しかし、喜んでばかりはいられない。第4四半期(10~12月期)も好調を維持できるのかは未知数だ。専門家の多くは「第3四半期の好業績は一時的なサプライズ」と捉えており、今後の予測については厳しい見方を維持したままである。

 かつては売上高の約半分を占めていた携帯電話事業だが、第3四半期は横ばい、スマホも機種によっては低調な売れ行きを余儀なくされている。スマホは値下がりがずっと続いており、プレミアム市場で競合するアップルがiPhone6Sを販売し始めたことで、競争はさらに激しさを増している。ファーウェイやシャオミーといった中国メーカーの台頭も、サムスンにとっては依然として大きな脅威である。

サムスン電子の好実績を牽引している最新の半導体製品
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最新の半導体製品
 サムスン電子の復活は、半導体偏重の利益構造や為替差益によってもたらされるのではなく、スマホに次ぐキラーアプリケーションを生み出してこそ可能になる。第3四半期のサプライズ業績のなかに、その芽を見つけることが、果たしてできるだろうか。

 
 
 
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 嚴在漢

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