電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第110回

底力試される韓国半導体・ディスプレー


2015/8/28

 PC需要の低迷や中国による液晶パネルに対する投資拡大などで、韓国半導体・ディスプレー事業の底力が試されている。果たして、韓国はメモリー半導体と液晶パネル市場における好調さを堅持できるのだろうか。


DRAM価格の下落続く

 2015年下半期の半導体業況は、PC向けDRAM価格の下落が続くものの、サーバーとモバイル向けDRAM需要が粘り強く増え、成長基調を保つ見通しだ。ただ、微細プロセスへの転換によって、歩留まりが落ちることから、既存プロセスに比べて生産量は減り、ビットクロースの成長勢は予想を下回ると予測される。

 15年第2四半期(4~6月期)実績の基準でサムスン電子とSKハイニックスは、PC向けDRAM需要の下落幅が予想より大きく、平均販売価格(ASP)の低下は避けられなかった。
 サムスン電子は、15年初頭、DRAMの年間ビットクロース展望値を20%半ばと想定していたが、現状では20%強に下方修正した。PC向けDRAM需要の失速とともに、モバイル向け大容量DRAMに需要が移動したほか、微細プロセスに対する歩留まり低下などが複合的に作用した。

 DRAMの場合、15年度の年末商戦でIT製品価格が30~50%強下がり、大半の在庫が底をつくと予想されており、16年第1四半期ごろに価格が安定化する見通しだ。

モバイル向け半導体需要増に期待

 NAND型フラッシュ・メモリーは、大容量メモリーを搭載した低価格型と中・低価格型の製品群が増え、フラッグシップ・スマートフォン(スマホ)の容量も大きくなるため、市場の見通しは明るい。
 15年下半期から登場するであろうフラッグシップ・スマホの搭載容量は、最大で現在主流の2倍強と予想されることから、モバイル向けNAND型フラッシュの大幅な需要増が期待されている。

 また、エンタープライズとクライアント向けSSDの需要拡大も、韓国半導体メーカーとしては肯定的に捉えている。ノートブックPCにSSDを採用する割合が高くなりつつあり、下半期も穏やかな価格推移と需要拡大が見込まれている。

 したがって、サムスン電子半導体部門の15年下半期の売上高は、上半期(21兆5600億ウォン)に比べて大幅増の27兆ウォン(約2兆9348億円)を記録する見通しだ。だが、営業利益のほうは、前期比微減の8兆ウォン程度にとどまる見込みだ。また、SKハイニックスの同期の売上高は9兆5000億ウォン(約1兆326億円)が予想されており、前期と横ばい水準になる見通しだ。

中国の脅威強まるディスプレー

 しかし、韓国ディスプレー業界の下半期の業況は、厳しさが増す見通しだ。中国発の競争が深化し、さらなる価格下落が予測されるためだ。

 ディスプレー業界は、液晶パネルの価格下落にもかかわらず、生産量はむしろ増やしている。結果的に供給過剰となり、収益性はますます悪化している。
 TV向けとして最も売れている32インチパネルの場合、9月には70米ドル台を切る見通しだ。15年初頭、95米ドルに達していたパネル価格が急落したのである。

 LGディスプレー(LGD)とサムスンディスプレー(SMD)は、このような価格下落をいち早くキャッチし、40インチ台に転換したものの、大型液晶パネルの価格も下落中である。特に、55インチでも半年で10%程度下落している。

ディスプレーはOLED投資を強める

LGディスプレーが量産するTV向けOLEDパネル
LGディスプレーが量産するTV向けOLEDパネル
 ただし、液晶パネル価格の下落と供給過剰とは裏腹に、韓国ディスプレーメーカーの実績は、当分の間は、堅調な実績を維持する見通しだ。LGDは、アップルの「iPhone 6S」と大画面「iPad」の出荷などによる需要増が予想され、TV向け液晶パネルの実績低迷を幾分相殺する見通しだ。LGDの下半期の売上高は、14兆2000億ウォン(約1兆5435億円)になると予測されている。

 また、SMDの場合、親会社のサムスン電子の次世代フラッグシップ・スマホである「ギャラクシーノート5」と「ギャラクシー6Edgeプラス」、次期スマートウォッチである「ギアA」などが下半期の需要を牽引する見通しだ。SMDの下半期の売上高は、前期を割り込む12兆5000億ウォン(約1兆3587億円)が予想される。

 韓国半導体・ディスプレー業界は、中国勢の追い上げによって、以前のような独走は難しくなっている。中国の脅威を乗り越えるために、半導体は次世代製品の開発と歩留まりアップに徹底する。ディスプレーでは液晶パネルに対する投資は控えて、有機発光ダイオード(OLED)への投資拡大を強めつつある。

電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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