電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第109回

スマホが一息ついたら、今度は自動車で


~V2Xの進化が市場を拡大~

2015/8/14

 スマホが一息ついたら、今度は自動車で銭稼ぎしようぜ。誰もがこう思うほど、昨今の電子デバイス産業はこの2大アプリにおんぶに抱っこ。デバイスそのものはもちろんのこと、材料業界や部材・製造装置業界にいたるまで、会社業績の明暗は2大アプリの動向が握っている。

 とりわけスマホ、それも中国製スマホが圧倒的に強い。この勢いが衰えないことを、業界関係者は手を合わせて祈るほどである。2015年度第1四半期の決算報告が出始めたが、業績は14年度の好況感を引き継ぎ、おおむね良好。そして当然のように、決算短信の業績分析では、スマホ様々の文字があちらこちらに並ぶ。

 中国製スマホは一時期、成長を鈍化させ、周りをやきもきさせたが、どうやら踊り場は脱したようで、成長に向けて再びアクセルを踏み込んだ。いつかはピークアウトを迎えるであろうが、中国製スマホが元気なうちに、今度は自動車での銭設け手段を探った方がよい。

 自動車は電装化が進んでいるが、まだまだメカに頼っている部分も多く、電装化はさらに進む。これと並行して、テレビのCMでお馴染みのADAS(先進運転支援システム)も加速。そしてADASの延長線上で待っているのは、自動運転である。自動車はADAS機能搭載に伴い、これまで以上に膨大な情報データを扱うことになる。

 今回はADASによる自動車の進化を、NXPセミコンダクターズのプレゼンテーション資料をベースに探ってみる。同社の主力製品がICカード用途などの認証チップであるため、自動車の進化の方向性も、セキュリティーを主軸に据えている面がある。しかし今後、自動車が情報通信の世界に取り込まれていくことは間違いない。車と通信、ここに新しい商機が生まれてくる。

車の進化とハッキング攻撃

 自動車だけではない。ヘルスケアもエネルギーも、セキュリティーなども、すべてが情報通信の世界に取り込まれる。その数は20年までに500億に達する。自動車だけでも、同年までには2億5000万台がネットワーク化される。ネットワーク化されると、ドライバーのみならず、自動車メーカーやプロバイダーも巻き込み、膨大な情報データがサーバーに格納される。

 ここに新たなビジネスチャンスが生まれるのだが、同時に、ハッカーにとっては絶好の攻撃対象となる。例えば、中古車市場で、積算距離計を意図的に改ざんすることも可能だ。走行距離を短くすれば、本来の中古車よりも価値が上がり、その価値分、不正な利益を享受することができる。ドイツでは、この手法で60億ないし80億ドルの不正収入が発生しているという。

 また、スマホを利用したバーチャルキーなど、操作性はより簡便な手法を追求する。ダウンロードなどによる容易な情報入手は、ハッカーの餌食となる可能性が高い。このように自動車は情報通信の世界に取り込まれる。情報のやり取りは車内と車外の両方で、無線通信が行われることになる。

ADASの延長線上に自動運転

 車外とのRF通信でクローズアップされるのが、ADAS機能である。ADASの実用化は始まったばかり。まだまだ進化しなければならない。テレビのCMなどでは、走行中、自車の前を走る車の挙動は認知できるようになった。挙動に応じて、自車に必要な対応機能も搭載され始めている。

 ところが、現状では、2台前を走る車の挙動が認知できない弱点がある。前走車が乗用車ならまだしも、大型トラックや観光バスだった場合、2台前の走車は完全に死角となる。死角に入っていた車が、急ブレーキを踏んだりすると、ADASが満足に作動するかどうか。それだけではない。路面が凍結、あるいはオイルが撒かれていたら、やはり不安である。

期待するADAS機能の進化(出所)NXPセミコンダクターズ
期待するADAS機能の進化
(出所)NXPセミコンダクターズ

 自動車の進化にビジネスチャンスを見出すには、V2Xの動きをウォッチし続ける必要性がありそうだ。V2Xとは、Vehicle to Xの意味。走行中の車が何とコミュニケーションを取り、安全を確保しようとしているのか。そのシステム構築の最終到達地点が、自動運転である。スマホが一息ついたら、今度は自動車で銭儲けをしましょう。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 松下晋司

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