電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第678回

中国デバイスが国産化開始から世界シェアの大半になるまで


テレビ用大型液晶パネルの事例から学ぶ

2026/11/6

 中国は2010年に液晶テレビ用の大型液晶パネル生産を始めてから、短期間で国産化を進めた。大型液晶パネルの生産開始から5年後の15年に、中国の液晶テレビ生産に占める国産パネルの比率は50%に達した。11年後の21年には国産化率が89%、14年後の24年には95%となった。19年には中国大手3社がテレビ用液晶パネルの世界出荷量の約44%を占め、25年には世界生産に占める中国の比率が72%に達した。この工場投資と国産化の推移を振り返り、今後のレガシー半導体や準先端半導体の国産化の進展を考える材料とする。

中国の液晶パネル生産のスタート

 中国は2000年以降、テレビ、パソコン、携帯電話などのセット機器を大量生産し、「世界の工場」と呼ばれるようになった。しかし、セット機器に組み込む半導体や液晶パネルなどの電子デバイスは、海外からの供給に頼っていた。

SVA-NECのG5工場で製造された中国初のモニター用パネル(同社提供)
SVA-NECのG5工場で製造された中国初のモニター用パネル(同社提供)
 中国では04年にSVA-NEC(上海広電NEC液晶顕示器)が上海市で第5世代(G5)液晶工場を稼働した。BOEやIVO(龍騰光電)もG5工場でこれに続いたが、テレビ用大型液晶パネルの本格的な生産は始まっていなかった。06年には中国政府が第11次5カ年計画でFPD(フラットパネルディスプレー)を国家重点産業に指定。08年以降は農村部の家電購入を補助する「家電下郷」により、液晶テレビ需要とパネル投資が拡大した。

10~15年の「初期発展期」

 第1段階は10~15年の「初期発展期」である。10年にBOEが安徽省合肥市でG6液晶工場を稼働し、中国で液晶テレビ用大型パネルの生産が始まった。中国政府は同年、テレビ用G6~G8クラス工場の建設認可枠を9工場に広げた。

 11年末にはBOE北京G8.5工場が量産を開始し、CSOTも広東省深セン市でG8.5工場を稼働した。13年にはBOEの合肥G8.5工場とサムスンディスプレーの江蘇省蘇州市G8.5工場、14年にはLGディスプレーの広東省広州市G8.5工場が稼働した。

BOE北京8.5G工場の建設風景(10年5月撮影)
BOE北京8.5G工場の建設風景(10年5月撮影)
 15年にはCECパンダ南京、BOE重慶、CSOT深セン第2工場の各G8.5工場が量産体制に入った。中国のG8.5工場の月産能力は合計60万枚を超えた。10年の生産開始から5年後に、中国の液晶テレビ生産に占める国産パネルの比率は50%に達した。中国はこの5年間で、海外からの調達に依存していた大型パネルの半分を国内生産へ切り替えた。

15~18年の「G8.5液晶工場の爆投資期」

 第2段階は15~18年の「G8.5液晶工場の爆投資期」である。16年には中国のテレビ用G8.5工場が8カ所、月産能力は約70万枚に増加した。中国企業がテレビ用パネルの世界出荷量に占める比率も約25%まで上昇した。

 17年にはBOEが福建省福州市でG8.5工場を稼働した。CECパンダやHKCもG8.6工場への投資を進め、投資対象はG8.5から、さらに大きな基板を使うG8.6へ広がった。同時に、BOEは合肥市でG10.5工場を稼働し、CSOTも深セン市でG10.5工場の建設を進めた。中国は17年、韓国と台湾などの地域を抜き、テレビ用液晶パネルの世界最大の供給地となった。大型液晶パネルの生産開始から7年後のことである。

HKCの綿陽G8.6工場(同社資料より)
HKCの綿陽G8.6工場(同社資料より)
 この15~18年の大量投資により、中国企業は主要地域に大型液晶工場を配置し、テレビ用パネルを国内で大量生産する体制を築いた。G8.5工場の増設で量を確保し、G10.5工場への移行によって大型テレビ用パネルの生産効率を高める投資段階へ進んだ。

19~21年の「国産化体制の完成期」

 第3段階は19~21年の「国産化体制の完成期」である。19年1~3月期にはBOEがテレビ用液晶パネル出荷量で世界首位となった。BOE、CSOT、CECパンダの中国大手3社は世界出荷量の約44%を供給した。

 中国では19年までにG10.5工場が4カ所に増えた。20年にはBOE湖北省武漢市G10.5工場と、CSOT深セン第2G10.5工場のT7が稼働した。複数のG10.5工場が立ち上がったことで、中国は大型テレビ用パネルの供給能力を一段と高め、液晶パネル生産大国としての地位を固めた。

 新設に加え、既存工場の買収も国産化を加速した。BOEは21年にCECパンダの江蘇省南京市G8工場と四川省成都市G8.6工場を買収した。CSOTはサムスンディスプレーの蘇州G8.5工場を取得した。起算年から11年後の21年に国産化率は89%へ上昇し、中国国内で使用するテレビ用液晶パネルをほぼ国内生産でまかなう体制が整った。

ハイセンス(海信)の大型液晶テレビ(上海の家電量販店で撮影)
ハイセンス(海信)の大型液晶テレビ(上海の家電量販店で撮影)
22年以降の「覇権確立と大型液晶投資のピークアウト」

 第4段階は22年以降の「覇権確立と大型液晶投資のピークアウト」である。起算年から14年後の24年には国産化率が95%に到達した。89%に達した21年と、95%となった24年を経て、中国は世界の液晶パネル生産の覇権を握ったと解釈できる。25年には世界のテレビ用液晶パネル生産に占める中国の比率が72%となった。大型液晶パネルの生産開始から15年後に国産体制は確立済みとなり、工場投資はピークアウトした。

 中国のG8.6工場への装置導入は22年に月産能力ベースで約23万枚に達したが、23年は皆無となった。24年は12.5万枚へ回復し、25年は10万枚弱となった。既存設備の過剰感が強まり、大規模投資が可能な企業は年間2社程度に絞られ、新工場の建設は大幅に減少した。中国はパネル生産の拡大と並行し、製造装置や材料でも国産化を進め、国内で供給できる範囲を広げてきた。

歴史はレガシー半導体でも繰り返される

 大型液晶パネルの量産化は、国内需要への対応、政策支援、工場への大量投資、生産能力の集積、工場の大型化、既存工場の買収、装置・材料の国産化という順序で産業基盤が構築された。同じ歴史が半導体でそのまま繰り返されるとは限らない。しかし、中国がレガシー半導体や28~14nmを中心とする準先端半導体の工場投資を進めている現在、液晶パネルが15年で世界生産の大半を占めるまでになった過程は、今後の半導体国産化を考える重要な先例となるだろう。


電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善

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