デンソーと言えば、トヨタグループの自動車部品メーカーとして国内外にその名を知られている。2009年以来、自動車部品業界では国内最大手の地位を維持しているのだ。売上は7兆円強を誇る堂々たるカンパニーである。
ところが、多くの人はデンソーがバリバリの半導体メーカーであることをよく知らないのだ。23年段階でデンソーの内製する半導体の規模は4240億円であったが、これを25年度に5000億円に引き上げることを明らかにしている。
ちなみに、デンソーの半導体製品の構成比率は半導体センサーが50%であり、これが一番多い。残りはASIC25%、パワーモジュール25%となっている。12年に富士通セミコンダクターの岩手工場、22年にはトヨタ自動車の広瀬工場を取得し、設備の拡大に動いているのだ。
通常の半導体生産ランキングでは、デンソーの名前は出てこない。それは、内製つまりキャプティブの半導体であるからして、これは表記されないのである。ところが、デンソーの半導体は日本企業の中ではかなり上位にランクされる。ソニーが国内半導体では第1位であるが、キオクシアが第2位、ルネサスが第3位となっており、デンソーはなんと第4位にランクされる存在なのである。
そしてまたデンソーは、半導体事業に大型投資をすることを表明している。30年までに約5000億円の投資を実行するとアナウンスしており、35年には半導体事業の規模を現在の3倍に拡大するというのであるからして、まさにサプライズなのである。
こうした状況下で、デンソーはロームを買収することを検討しはじめた。これが実現するとデンソーの半導体売上高は約1兆円になるわけであり、かなりのスケールの半導体メーカーが登場することになる。そして、自動車向け、AI向けをメーンに半導体事業を一気に強化する考えなのだ。
ところがどっこい。こうした動きに対し、別の流れが出てきたのだ。それは、東芝、三菱電機、ロームの3社がパワー半導体の事業・経営統合に向けた協議を開始したのである。ロームはSiCパワー、東芝デバイスはシリコンMOSFET、三菱電機はIGBTやモジュールに強みを持つが、直接的には競合しないのでこれは非常に素晴らしい経営統合とは言えるだろう。
これが実現すれば、パワー半導体における世界シェア2位の企業連合が発足するわけであり、我が国のパワーデバイス業界にとってすごい影響力を持つ企業が誕生したことを世界に発信できる。しかしながら、全体のとりまとめ役が誰になるのか、というところが重要であり、この話し合いはなかなかうまくいかないかもしれない。
言ってみれば、ロームを軸としてデンソーが拡大戦略を推進し、東芝や三菱電機も事業規模拡大に注力するという不思議な図式が出てきたわけであるが、やはり国つまりは経産省がこの調整役に出てくることは絶対に必要なことではあるだろう。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。