電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第90回

来場者が増えた2015年の「SEMICON China」


IC産業ファンド始動で業界企業の関心が急上昇!

2015/4/3

SEMICON China 2015会場全景
SEMICON China 2015会場全景
 この十数年、毎年セミコン・チャイナ展示会を見てきたが、今年のセミコン・チャイナは久しぶりに会場内の熱気をひしひしと感じた。2000年代前半の200mmファンドリーの投資ラッシュのころ、セミコン会場にはこれから始まる大きな波に乗り遅れまいとする多数の企業や参観者が押しかけた。2000年代の後半は、SEMIが併催する「FPD China」や「SOLARCON China」などと合わせて展示会規模が拡大。その反面、半導体の展示インパクトは相対的に薄まったように感じていた。しかし、今年のセミコン・チャイナは久しぶりに半導体の展示に力が注がれ、会場内でたくさんの情報を見て、業界内の活気ある話を聞くことができた。

動き始めたIC産業ファンド

 中国ではまだ次の5カ年計画が発表されていないが、半導体業界については2020年までにどのように発展させるかを規定した政府文書が2014年6月に発表された。その文書の中で、次の5年間にIC製造は年平均20%成長させると書かれている。中国全体の経済成長率は7%前後に減速しているが、IC製造はこれを大きく上回るペースで発展を続ける。これに2014年10月にスタートした2.3兆円規模のIC産業専門の国家金融ファンド(通称:大基金)、さらに上海や北京など各地でも始まるIC産業ファンドを加え、今後数年間に5兆~10兆円の巨額資金が半導体業界に注入されるといわれている。

中国IC産業ファンド総裁もカンファレンスで講演
中国IC産業ファンド総裁もカンファレンスで講演
 セミコン・チャイナ2日目のカンファレンスでは、中国IC産業ファンドの丁文武総裁や、そのファンド運用会社の1つである北京亦庄国際投資発展の王暁波董事長、上海のIC産業ファンドの運用会社のサミットビュー・キャピタル(武岳峰資本)の創設者の武平氏(中国ファブレス大手のスプレッドトラム創業者)などが今後の中国のIC産業の展望について語った。中国IC産業ファンドの丁文武総裁は、「ファンドの運用先としては、中国最大手のOSAT(半導体の組立・検査の受託会社)であるJCET(長電科技、江蘇省江陰市)によるシンガポールOSATのSTATSチップパックの買収資金や、中国大手の半導体用製造装置メーカーであるAMEC(中微半導体設備、上海市)の開発資金などの運用事例がある」と紹介し、これらの資金運用スキームなどを紹介した。今後さらにIC産業ファンドを使ったプロジェクトが各地に広がるものとして注目を集めている。

中国の半導体優良企業が集結!

 セミコン・チャイナは他国のセミコンショーと違って、ファンドリーやOSATなどのデバイス製造企業が出展するのが特徴だ。業界最大手のファンドリーのSMICやOSATの長電科技などが出展した。両社は300mmバンピング製造の共同出資工場を建設中で、2015年後半から稼働開始予定だ。STATSチップパックの買収後に、この工場に先端技術が移植されることになる。「公表はしていないが、STATSチップパックの買収交渉は合意できるところまで来た。あとは買収手続きなどを詰めているところ」(長電科技のブースでの説明)だという。長電科技は300mmバンピング技術や指紋認証センサーのパッケージ技術などを目玉に、ハイエンドパッケージ技術としてQFNやFBGA、SiP/LGAなどについて紹介した。

中国最大のファンドリーSMIC
中国最大のファンドリーSMIC
WLP、300mmバンピングなどに注力するJCET(長電科技)
WLP、300mmバンピングなどに注力するJCET(長電科技)

 SMICは北京の300mmファブでクアルコム向けのアプリケーションプロセッサー(AP)を開発しており、「この歩留まりが3月に50%まで上昇した」(SMIC関係者)。「28nmは2015年に量産を開始する。次は20nmの開発をスキップして、14nmのFinFETプロセスの開発・量産にターゲットを置いている」(SMICのブースでの説明)。またセンサー類の生産が好調で、中国ファブレスのギャラクシーコア(格科微電子、上海市)のCMOSイメージセンサーの量産が拡大していて、今後は300mmプロセスにも対応していく。また、加速度センサーや音声認識センサーも好調で、指紋認証センサーの生産も増えているという。2014年に稼働した深セン工場はギャラクシーコア向けのCMOSイメージセンサーの増産対応などに忙しく、「2015年末に月産能力2万枚、将来的には5万枚まで拡張余地がある」(SMICのブースでの説明)という。

装置の国産化プロジェクトも加速

 中国 IC産業ファンドの融資先として装置メーカーのAMECが4.8億元(約92億円)の開発資金を得たことに刺激され、中国の半導体用製造装置メーカーの展示には今まで以上に関心が集まった。AMECは45~28nm対応のプラズマエッチャーを開発、ACMリサーチ(盛美半導体設備、上海市)は45nm対応の枚葉式洗浄装置をブースで紹介した。製造装置大手のノースマイクロエレクトロニクス(北方微電子、北京市)はプラズマエッチャーや65~45nm対応のスパッタリング装置などを紹介し、ブースには同社幹部も来場した。パイオテック(遼寧省瀋陽市)は「コーターや洗浄装置、バンピング装置などを製造し、バンピング装置の売り上げが全体の半分くらいを占めている」(パイオテックのブースでの説明)。販売のすべてが中国企業で、まだ海外への輸出実績はない。「最近は中国内でバンピング工場の投資が活発で、蘇州WLCSPや昆山Q-Tech、江陰 JCAPなどにバンピング装置を販売した」(同ブースにてヒアリング)という。

中国大手装置メーカーの北方微電子
スピンコーターのキングゼミ(芯源微電子設備)
スピンコーターのキングセミ(芯源微電子設備)
中国大手装置メーカーの北方微電子

人件費の上昇で自動化推進、ロボットアームの展示が増加した
人件費の上昇で自動化推進、ロボットアームの展示が増加した
 また、今回は会場内のあちこちでロボットアームの展示が目立った。中国は人件費の上昇が進み、省力化やロボット化のニーズが高く、多くの分野で産業ロボットの導入が広がっている。これに呼応して、産業ロボット、自動化製造装置の国産メーカーも急増した。展示会場内でロボットアームを展示した企業は10社を超えていたようだ。早期にロボットアームの製造に参入したシンソンロボット(新松機器人自動化、瀋陽市)も、瀋陽の半導体産業の共同出展パビリオンで実機を展示していた。

 今年(2015年)のセミコン・チャイナは半導体の展示が今まで以上に活況だった。特に、中国産装置メーカーの展示を見て回り、以前よりも実力がついてきたと感じた。中国IC産業ファンドを起爆剤に、これから10年かけて中国の半導体産業が発展の第2ステージに移ったと実感した。

弊社ブースで配布した各業界の中国工場マップ
弊社ブースで配布した各業界の中国工場マップ
ちなみに、セミコン・チャイナに出展した当社(電子デバイス産業新聞)のブースでは例年どおり、中国の工場マップを配布しました。マップは、半導体(前工程)、半導体(後工程)、太陽電池、太陽電池用ウエハー、LEDチップ、サファイア基板の6種類。この地図では合計160工場が紹介されています。こうして見るだけでも、中国の業界企業は底知れず多く、この中から将来の中国の各業界を背負って立つ国際的な有力企業が登場してくるのだと思うと、今後もセミコン・チャイナに注目し続けていきたいと思います。

電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善

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