2024年の半導体業界は、AI関連の分野が他の分野よりも好調であったが、25年もその動きは続けていくだろう。このような状況のなか、メモリー業界ではSKハイニックスが汎用DRAMの価格下落にもかかわらず、HBM(High Bandwidth Memory)の売上増加によって24年第4四半期(10~12月)の業績が四半期ベースで過去最高を更新すると予想されている。生成AI半導体市場の大きな成長により、先端メモリーの需要拡大が本格化し、SKハイニックスは25年の業績も好調に推移する見通しだ。
SKハイニックスのHBM3EとエヌビディアのH200(写真提供:SKハイニックス)
業界では、SKハイニックスの24年第4四半期の営業利益を8兆ウォン規模で、四半期ベースで過去最高の業績になると予想している。同社は24年第3四半期に売上高が17億5731億ウォン、営業利益が7兆300億ウォンで、四半期ベースで売上高と営業利益がともに過去最高となった。このような好業績を記録した背景には、収益性が高いHBMを主要顧客であるエヌビディアに供給したことが最も大きい。特に、SKハイニックスは24年にHBM3Eの8層と12層製品を業界で初めて量産し、エヌビディアに供給している。HBM3Eは、汎用DRAMより価格が約4~5倍高い。エヌビディアはAI半導体市場でおよそ8割のシェアを占めており、SKハイニックスはHBM市場でトップの5割以上のシェアを持っている。
サムスン電子、10~12月期暫定値は想定下回る
一方で、サムスン電子は24年10~12月期の暫定値として、市場予想を下回る営業利益を発表した。営業利益は前年同期比131%増/前四半期比29%減の6兆5000億ウォン。7~9月期から2四半期連続で減益となった。4~6月期に10兆ウォン以上の営業利益を記録したが、7月から汎用DRAMの価格下落の要因で7~9月期の営業利益が9兆ウォン規模となった。10~12月期の営業利益は当初8兆~10兆ウォン水準を予想したが、メモリー価格の下落の影響により期待値を急激に下回った。
詳細は公開されていないが、サムスン電子は半導体部門の売上高と営業利益すべてが減少し、約3兆ウォン水準の営業利益になると推定されている。スマートフォン(スマホ)やPCなどの電子機器需要が低迷しており、レガシー半導体は中国メーカーとの価格競争が激しくなっている。また、HBMなどAI向け半導体は需要が堅調に推移しているものの、業績寄与度が低いと評価されている。また、ファンドリー事業などの非メモリー部門も稼働率の低下と費用増などによって赤字が続いているとみられる。さらに、モバイルとディスプレー部門の業績も需要不振と競争激化によって鈍化すると予想される。
エヌビディアCEO、「サムスンのHBMは再設計が必要」
現在、エヌビディアにHBM3Eの8層と12層製品を供給しているメーカーはSKハイニックスが唯一の企業となる。米マイクロンも8層製品を量産供給しており、12層製品の供給も準備している。一方、サムスン電子は24年から品質テストを行っているが、まだ供給確定の話は出ていない。このような状況のなか、今回米ラスベガスで開催されたCES2025でサムスン電子のHBM品質テストについてエヌビディアのジェンスン・フアンCEOは「サムスン電子のHBMは新しいデザインが必要だ」とし、「必ず成功すると確信する」とコメントした。この発言は、HBMの再設計が必要であり、設計からテスト、量産にかかる時間を考えるとしばらくは品質テストに成功することは難しいと考えられる。
ジェンスン・フアンCEOの発言以降、業界ではサムスン電子のHBM供給に対して否定的な展望も提起されている。しかし、最近急浮上したブロードコムとのパートナーシップは、エヌビディア供給の件とは異なる状況が展開される可能性が高いという意見が出ている。ただ、ブロードコムがエヌビディアレベルのAI半導体購買者になるかどうかについて相変わらず疑問だ。ブロードコムのHBM発注規模がどの程度になるか見当がつかないためだ。エヌビディアは25年も新製品であるBlackwellに最も多い高性能HBMを搭載する予定だ。
SKハイニックス、25年設備投資額は10兆ウォン以上
エヌビディアだけでなく、グーグルやAWS(Amazon Web Services)、メタなどがサーバー向けに独自のAI半導体を開発していることもHBMのさらなる市場拡大に追い風となりそうだ。市場調査会社のトレンドフォースによると、25年のAIサーバー出荷量は前年より28%増加する見通しだ。SKハイニックスのHBM事業は、TSMCの設備投資拡大や現在のマイクロンとサムスン電子のことを考慮すると25年も高収益が見込まれている。SKハイニックスもこの状況に合わせてHBMを増産するために25年の設備投資金額は前年比で増加となる10兆ウォン以上の規模が見込まれている。主に韓国・清州で4月末に着工した新工場「M15X」と龍仁半導体クラスターなどに集中投資し、HBMの需要に対応していく構えだ。
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 嚴 智鎬