電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第577回

CSEAC半導体装置パーツ展示会が中国・無錫市で開催


半導体装置とパーツの国産企業が勢揃い!

2024/11/8

 最近、中国で半導体産業の取材をしていて「半導体関連の展示会の開催が多くなったな…」と感じることが多い。2024年の夏後半から、パワーデバイスの展示会「PRIM」(広東省深セン市で開催、8月28~30日)や半導体装置・パーツの展示会「CSEAC」(江蘇省無錫市、9月25~27日)、華南エリアの半導体展示会「SEMiBAY」(広東省深セン市、10月16~18日)、組立・検査産業の展示会「NEPCON」(深セン市、11月6~8日)、IC産業の展示のIC Expo(上海市、11月18~20日)、半導体全般の展示会「IC China」(北京市、11月18~20日)など毎月どこかで半導体の展示会が開催されている。

CSEACは24年9月25~27日に開催された
CSEACは24年9月25~27日に開催された
 3月に上海で開催されたSEMICON Chinaの半年後の今ごろにちょうど別の展示会を見学しようと思っていたが、逆に半導体関連の展示会が多過ぎて、どれを見に行けばいいものやら困ってしまった。展示会が多くなったのは、それだけ中国で半導体産業が重視されているからなのだろう。

装置とパーツを見るなら「無錫・CSEAC」

 SEMICON Chinaは毎年見学しているが、出展企業数が1100社を超えているため、開催期間の3日間の開館から閉館までの時間をフルに使って見学しても時間が全く足りない。海外や中国大手の装置・材料メーカーの有名企業から順に回って行くので、いつも中国ローカルのあまり有名でない装置メーカーやパーツメーカーのブースをゆっくり見る時間がなくなってしまう。

 9月末に開催された無錫の半導体装置とパーツの展示会の「CSEAC」は、ほぼ中国ローカルの装置とパーツ企業だけを集めたような展示会で、SEMICON Chinaではいつも時間切れになって見ることができない企業のブースを見て回ることができた。私としては「敗者復活戦」のチャンスを得られたような気分で、とても貴重な取材機会となった。

 展示規模や出展企業数を単純に比較すると、「CSEAC」は「SEMICON China」のおよそ半分くらいの規模といえる。SEMICON Chinaの会場面積は10万m²以上、CSEACは6万m²。出展企業数はSEMICON Chinaが1100社に対し、CSEACはブースマップの掲載企業を数えると約600社。会場内の来場者の混み具合は、SEMICON Chinaほどではなかったように思う(開催地の上海と無錫の違いも影響するだろう)。SEMICON Chinaでは外国の参加企業や見学者が多数あちこちで見られるが、CSEACでは極めて少なかった。

CSEACとSEMICONチャイナの展示会規模の比較
CSEACとSEMICONチャイナの展示会規模の比較

 そもそもこの「CSEAC」展示会の名前が覚えにくく、恥ずかしながら私は見学中も何度も名前を忘れてしまった。正式名称は中国語では「半導体設備年会」、英語では「China Semiconductor Equipment Annual Conference」となっている。この頭文字をアルファベット読みすれば、「シー・エス・イー・エー・シー」となるのだが、これをすぐ忘れてしまう。その後、私は自分で勝手に「C+SEA+C」と区切って、「シー・シー・シー」と読んでやっと記憶の定着に成功した(この呼び方を真似して、対外的に「シー・シー・シー」と呼んでも通じませんので、ご注意ください)。

NAURA、AMEC、ACMの御三家が出展

 中国の大手装置メーカーで出展していたのは、株式上場している「NAURA」(北方華創科技、北京市)や「AMEC」(中微半導体設備、上海市)、ACMリサーチ(盛微半導体設備、上海市)、HHQK(華海清科、天津市)、パイオテック(Piotech、拓荊科技、遼寧省瀋陽市)などだ。株式上場大手6社の中では、キングセミ(Kingsemi、芯源微電子設備)だけが出展していなかった。

AMECの新製品のLPCVD装置の模型
AMECの新製品のLPCVD装置の模型
 展示会場のメーン館に入ってすぐにNAURAが陣取っていたが、前回のSEMICON Chinaと同じようにパネル展示だけ(装置の模型展示はなし)だった。残り4社はその隣接エリアに集積し、装置の模型展示や業績推移のパネル、新工場の写真などを掲載していた。個人的な印象としては、AMECのブースは展示内容も説明員も多く、とくにブースが賑やかだった。洗浄装置メーカーのACMはこれまでウエット系の装置メーカーだったが、最近は縦型炉やPECVD装置なども製品化してドライ系の装置製造に参入している。

新興装置企業のブースが次から次へと

 大手装置メーカーの他にも中堅や新興の装置メーカーも多く出展し、これらのうち前工程装置の展示をしていた企業だけでも30社前後がいたようだ。新興企業の代表格といえるリードマイクロ(Leadmicro、微導納米科技、無錫市)は太陽電池製造装置から半導体製造装置に開発領域を広げ、ALD装置やCVD装置を開発・生産している。太陽電池製造装置から参入してきたアイデアル(IDEAL、理想晶延半導体設備、上海市)は半導体用のALD装置やアニール装置を開発・生産している。同じく太陽電池装置から半導体用に参入してきたソンユー(SONGYU、松●(左に火、右に昱)、無錫市)はALD装置やCVD装置、アニール炉などを開発・生産している。LEDサイネージ用ALD装置を生産してきたSRII(四方思鋭智能技術、山東省青島市)は、半導体用のALD装置やイオン注入装置を開発・生産している。また、プリント基板(PCB)製造装置から半導体製造装置に参入してきたハンガー(HENGER、恒格微電子装備、広東省珠海市)はデベロッパー装置や表面処理装置などを開発・生産している。

 これらの他にも、組立・検査装置企業も20社以上が出展した。ボンディング装置などの中科晶禾電子科技(iSABers、天津市)やウエハーのテンポラリーボンディング装置のシンタイコ(SINTAIKO、芯●(左に金、右に太)、上海市)、ボンディングやバンピング装置のアダセミ(ADA SEMI、阿達半導体設備、広東省広州市)など日本ではあまり馴染みがない企業も多数出展していた。

SMEEのパネル展示(右は先端パッケージ用露光装置、左はレーザーアニール装置)
SMEEのパネル展示(右は先端パッケージ用露光装置、左はレーザーアニール装置)
 露光装置メーカーのSMEE(上海微電子装備)は、前工程というよりは後工程の展示区画の方に寄せて出展していた。半導体の業界人にとっては、「露光装置といえば前工程」という先入観が強いが、露光装置は先端パッケージ(後工程)やFPD製造、マイクロLED製造などにも使われている。主にi線やKrFの露光装置の生産が多いSMEEは先端パッケージや基板配線向けの露光装置の販売が多い。

搬送装置の中国生産が急進!

 半導体装置の国産企業がこれだけ増加すると、装置に搭載する搬送ロボットやEFEMなどの需要も急増している。搬送設備メーカーとしては、安川電機と現地企業の共同出資による広川科技(上海市)の展示が目立っていた。また、上海市の搬送設備大手の果納半導体技術、大族富創得科技(上海市)、弘滸半導体科技(江蘇省蘇州市)なども出展。中国で拡大する搬送装置市場を狙い、販売を伸ばしてきたローツェやシンフォニアテクノロジーも日本企業としては珍しくブース出展していた。ローツェは上海市に楽孜芯創半導体設備という現地企業を設立し、上海市浦東新区の臨港新区で工場を稼働している。

広川科技が展示したEFEM
広川科技が展示したEFEM
 ウエハーをプロセス装置に出し入れする大気搬送ロボットの国産化開発企業も数社が出展していた。EFEMやWafer Packer装置などの企業はかなりの数の出展企業がいた。WST(芯慧聯半導体科技、蘇州市)はパネル・レベル・パッケージ(PLP)用のEFEMとソーター装置を展示した。中国ではエスウィン(ESWIN、奕斯偉科技、陝西省西安市)やC-STAR(晨宸辰科技、江蘇省揚州市)などがPLP工場を小規模ではあるが稼働させている。

 装置の他にも付帯設備やパーツ企業の出展も多く、これらの企業の展示ブース数は全体の半分以上を占めていた。附帯設備ではポンプやチラー(冷却水循環装置)、排ガス除外装置)などの出展が多かった。日本企業ではチラー製造の伸和コントロールズが出展していた。パーツでは、精密金属パーツや石英、セラミック、シリコン、SiCなどの装置部品の他にも静電チャックや精密バルブや圧力部品、電源、センサー、Oリングなど多種多様であった。

 中国は航空機や月ロケットなどを製造している国でもあり、精密金属加工の技術力はもともと高い。フォーチュン・プレシジョン(FORTUNE、富創精密設備、瀋陽市)は米中関係が悪化する以前にはアプライドマテリアルズ(AMAT)からチャンバーパーツなどの精密加工を受託していた。フェローテックは浙江省杭州市で石英パーツを大量生産し、主要な中国の装置メーカーを顧客としている。

華卓精科技が展示した静電チャック
華卓精科技が展示した静電チャック
 中国にはまだ静電チャックの量産企業がいないとみられるが、会場内で複数の企業が静電チャックの展示をしていた。アニール装置やEFEMなどを手がけるアイプレシジョン(iPrecision、華卓精科技、北京市)は展示ブースのすみで、静電チャックも展示していた。

 展示してあった装置やパーツが単に開発段階のものなのか、試作評価レベルになっているのか、受注量産している段階なのかの判断が難しい。もちろん展示してあった装置やパーツがすべて量産生産されていることはあり得ない。しかし、このようなサプライチェーンの下層域まで中国の国産化が進展してきていると強く実感させる展示会だった。


電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善

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