電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第572回

HBMに次ぐ次世代半導体に注目


eSSDなど新しい市場が急成長

2024/10/4

 HBM(High Bandwidth Memory)はAI半導体市場の主道権を握っているエヌビディアのGPUに搭載されるなどして、現在の半導体業界で最も存在感を発揮している。だが、今後のAIにはHBMだけで限界があると分析されており、最近はHBMに次ぐ新たな半導体としていくつか取り上げられている。

 そのなか、特に注目されている分野としてeSSD(エンタープライズレベルのソリッドステートドライブ)が挙げられる。SSDは半導体を活用した貯蔵装置で、HDD(ハードディスク装置)を代替するチップとして呼ばれている。HDDの消費電力や発熱などの問題を解決できることに加え、データの読み書き速度も圧倒的に早い。まだ価格競争力があるHDDが市場で高いシェアを持っているが、今後のデータセンターの効率によってSSDが急成長するとみている。

 eSSDはNANDフラッシュが主力部品で、DRAMとコントローラーも入っている。AI時代を迎え、データを扱う技術が重要となり、eSSDは不可欠な存在として浮上している。最近のサーバーメーカーはHDDからSSDへの動きが活発化しており、市場調査会社のトレンドフォースによると、eSSDの市場規模は23年第4四半期の23億660万ドルから24年第1四半期に37億5810万ドルまでに成長したという。大容量QLC(Quad Level Cell)ベースのeSSD市場はさらに大きくなると見通している。

 韓国ではすでにeSSD市場の主導権を巡り競争が始まっている。SKハイニックスの子会社であるソリダイムは64TB(テラバイト)の製品で多数の顧客を確保しており、サムスン電子は業界最高容量である128TBモデルの新製品「BM1743」を年内までに開発すると発表。サムスン電子のBM1743は第7世代QLC NANDフラッシュを活用する。QLCは、データを貯蔵する最少単位であるNANDセルに4ビットを貯蔵可能で、多くのデータを貯蔵することができる。また、連続読み取り速度は7.5GB/秒、連続書き込み速度は3GB/秒で前世代比で2倍の水準になるという。ソリダイムは最近12四半期ぶりに黒字転換し、今後128TB製品の発売を25年第1四半期に計画している。

サムスン電子のBM1743(写真提供:サムスン電子)
サムスン電子のBM1743(写真提供:サムスン電子)
 NANDメーカーもSSDへの投資を実行している。キオクシアは24年に入ってNAND需要が回復していることから、24年1~3月期から黒字転換に成功し、日本国内工場の稼働率をほぼ100%まで高めている。また、生産ラインを第8/9世代製品に転換する投資も行っている。まだeSSDに対する存在感は大きくないと評価されているが、今回設備投資を再開することで競争力が高まると期待される。

CXL、サムスンとSK中心に開発加速

 そのほか、AI関連の次世代メモリーとしてCXL(Compute Express Link)が注目されている。調査会社Yoleグループによると、CXL市場は22年の170万ドルから28年には150億ドル規模にまで成長すると予測している。CXLは、コンピューターシステム内部でデータを速く伝送するためのインターフェース技術である。CXL DRAMは、CPU、GPU、アクセラレーターをつなぐことでより効率的にデータ処理速度を高められる。CXL市場は24年下期から本格的に拡大されるとみている。

 インテルは下期にCXL2.0を支援する初のサーバー向けCPU「Xeon6」を発売する予定。CXLの商用化に向けてサムスン電子とSKハイニックスは年内関連製品の量産に入る計画だ。サムスン電子はCXL2.0ベースの256GBモジュールであるCMM-Dを量産する予定。また、エンタープライズLinux企業であるレッドハット(Red Hat)から認証を受けたCXLインフラを保有していることから、CXL関連製品からソフトウエアまですべての構成要素をサムスンリサーチセンターで検証できる。

 SKハイニックスも96GB、128GB容量のCXL2.0メモリーに対する顧客認証を進めており、年末量産に向けて加速している。最近ではCXLメモリーの駆動を最適化する自社開発メモリー制御ソリューション「HMSDK」の主要機能をLinuxに搭載したと発表するなど、CXL関連の動きが活発化している。まだAI市場の投資はAI半導体などサーバー増設に集中しているが、CXLの拡張性は28年以降本格化してくるとみている。

チップレット・PIMにも注目

 CXL以外にも先端パッケージ技術であるチップレットが注目されている。チップレットはこれまで1つのダイで構成していたものを機能ごと、あるいはブロックごとに分割して、1つのチップとして機能させる設計コンセプト。半導体システムの性能向上および費用削減などの理由で高性能コンピューティング(HPC)、AI、データセンターなどの分野で不可欠の技術となりつつある。

 また、PIM(Processing-in-Memory)も注目度が高まっている。PIMはCPU、GPUなどのプロセスが遂行する演算機能の一部をメモリー内部で処理するDRAM。現在はHBMを代替する技術というより、HBMの性能を高める技術として認識されており、今後の技術開発に注目する必要がある。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 嚴 智鎬

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