サムスン電子はこのほど、半導体業界で初めてスマートフォン(スマホ)に搭載する高性能・大容量ワンメモリーとしてePoP(embedded Package on Package)の本格量産を開始した。
今から7カ月前、米国アイダホ州サンバレーにて、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン、47歳)副会長と、アップルのティム・クック(55歳)CEOが会談した。実はこの時、ちょうど両社が特許を巡って激しく争っている真っ最中であった。この会談の1カ月後、アップルは米国を除く国で、サムスン電子を相手取った訴訟を取り下げた。両社は競争相手でありながら、協力パートナーでもあるからだ。いわば「呉越同舟」の関係である。
量産を開始したePoPこそ、まさに両社が協力しなければならないことを示す、典型的な製品だといえよう。アップルはiPhoneの製造にサムスン電子の先端半導体が不可欠である。一方で、サムスン電子もアップルに半導体を供給することを、技術力がアピールできる絶好のチャンスだと捉えている。
ePoPは、モバイルDRAMとNAND型フラッシュメモリー、コントローラーなどを1つに統合した既存のeMCP製品を一段階アップグレードさせ、モバイル向けアプリケーションプロセッサー(AP)の上に直接積層できるようにした製品である。一般的に、NAND型フラッシュは熱に弱いため、高温で動作するモバイルAPとは一緒に積層できないといわれている。
サムスン電子は、2014年にウエアラブル機器向けのePoPを公開したことに続いて、今回はスマホ向けのePoPの量産に踏み切った。同製品は、3ギガバイト(GB)の低電力DDR3モバイルDRAMと32GBの内蔵ストレージ(eMMC)を1つのパッケージに仕上げたため、高速かつ省エネに優れている。
また、搭載した20nm級の3GBモバイルDRAMは、PC用DRAMと同じ、秒あたり1866メガビット(Mb)の高速で動作する。ワンメモリー化することによって、チップの面積を40%減らした。ウエアラブル機器では60%も減らすことができる。
サムスン電子は、この優れた半導体の大量生産を通して、半導体ビジネスに対する絶対的な優位を堅持していく戦略だ。14年通年の全社ベースの実績は前年比で減収減益を余儀なくされたが、半導体部門の利益は8兆7800億ウォン(約9648億円)を記録し、むしろ前年比で大幅増を達成している(グラフ)。
また、事業拡大に苦慮してきた非メモリー半導体市場で、参入障壁を崩しやすくなることも、ePoPの利点である。ePoPは、スマホの頭脳であるAPの上に置いておけば済む。サムスン電子が独自で開発したAP「エクシノス(Exynos)」とePoPを1つにすれば、顧客の好みによって多様な仕様ができる。
さらに、サムスン電子が持つ長所を最大限に生かせる製品でもある。スマホ市場で競争するメーカーのうち、サムスン電子のように半導体から完成品までを1社で製造できるメーカーは希である。アップルができない芸当でもある。ePoPはサムスン電子が得意とするビジネスモデルを体現しており、それを通じて、さらなる未来を切り拓いていく考えである。
このようなサムスン電子とアップルの、ある種の相互依存がマッチして、「敵との同寝」が可能になったのかもしれない。
電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢