電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第82回

“赤本”に見る セット機器&電子デバイスの生産動向


~2015年も堅調だが、成長率鈍化に要注意~

2015/2/6

 電子情報技術産業協会(JEITA)が、『電子情報産業の世界生産見通し』を発表した。通称“赤本”という。表紙が赤いことからの命名と推測するが、同報告書は電子情報産業に関わる世界・日系企業・国内生産について、2014年の概要と15年の見通しをまとめたものである。JEITA会員各社がデータを持ち寄り、それを統合・分析したもので、その数値の精度はかなり高い。各社のシェアなどは掲載していないが、全体動向を把握するには最適の書である。しかも廉価で、会員外でも6000円で購入できる。問い合わせは、JEITA総合企画部:03-5218-1052まで。
 今回のWebレポートは、この赤本から、ポイントとなるいくつかを報告する。

全体の市場規模

 赤本が対象とする電子情報産業とは、大きく2つに分類できる。ハードウエアを中心とした電子工業と、ソフトウエアを中心としたITソリューション・サービスである。前者の電子工業はさらに、AV機器や通信機器などのセット機器と、電子部品や半導体などの電子デバイスに大別できる。

 世界の電子情報産業全体の市場規模は、14年が前年比10%増の284兆円、15年は同5%増の297.9兆円に達する見通しである。このうち電子工業は、14年が11%増の207.6兆円、15年は5%増の217.3兆円と推測した。さらに、電子工業を構成するセット機器の分野は、14年が136.7兆円で、15年が142.7兆円。電子デバイスの分野は、14年が70.9兆円、15年が74.6兆円の見通しである。




セット機器の市場動向

 セット機器の分野は、AV機器、通信機器、コンピューターおよび情報端末、その他の電子機器、計4つで構成する。

1.AV機器のマーケット動向
 AV機器は14年が21.4兆円、15年が21.9兆円の見通しである。このなかで気になるのは、やはり薄型テレビの動向であろう。薄型テレビの世界市場は14年が15.5兆年、15年は16.1兆円と推測する。14年は薄型テレビ最大のマーケットである中国市場で4Kディスプレー搭載型が市場投入されたこと、ワールドカップ効果による南米での需要増、また米国での大画面タイプへの買い替えなどが功を奏し、前年比21%増を達成した。15年は新興国への需要増を見込みたいところだが、ロシアをはじめとする東欧での経済低迷などから、数%増の見通しにとどまった。

 日本製薄型テレビのシェアは、全体の約23%に相当する3.6兆円を占めるが、そのうち国内生産は約2%の715億円程度。円安の経済情勢にありながら、製品自体の価格競争の激化から、海外委託生産の動きが加速しているのが分かる。

2.通信機器のマーケット動向
 通信機器は14年が52.1兆円、15年が55.3兆円の見通しである。自動車とともに、電子デバイス市場の活性を牽引してきたスマートフォン(スマホ)など、携帯電話もこの分野に含まれる。

 スマホなど携帯関連は14年が前年比13%増の33.1兆円、15年は同6%増の35.1兆円に達すると見ている。スマホは最大市場の中国に引き続き、インドなど新興諸国での需要拡大が始まった。また、高速通信や電池の持ちなどの技術進化に加え、ネットを介したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及など、使い方の進化も需要増を後押しした。今後は、初期ユーザーの買い替え需要、防水や防塵、ワンセグ対応、さらには赤外線やおサイフ機能など、いわゆる日本仕様の普及も背景に、引き続き堅調との判断を下している。

3.コンピュータおよび情報端末のマーケット動向
 同分野の14年見込みは49.5兆円、15年の見通しは50.9兆円である。かつて電子デバイス市場牽引の盟主であったパソコンは、14年が19.7兆円、15年は19.6兆円の見通しにとどまる。

 旧OSサポートの終了に伴う法人レベルでの買い替え需要、日本ではさらに消費増税による駆け込み需要が後押しして、14年は前年比10%増の市場拡大。しかし、15年は買い替え需要増の反動減やスマホの旺盛な市場浸食作用により、微減との見解である。パソコンはもはやスマホの敵ではない。筆者の子供たちも、以前はパソコンで行っていた作業を、すべてスマホに依存。最近では、パソコンに電源が入れられることすら目にしない。

4.その他電子機器のマーケット動向
 同分野の14年見込みは13.8兆円、15年は14.6兆円である。ここには注目の医用関連機器も対象となっているのだが、現状はX線画像診断装置や超音波診断など、医療機器の統計・分析となっている。話題のウエアラブル医療器具の動向を知りたいところだが、まだその詳細は報告されていない。詳細を報告しようにも、いまだ市場を形成するまでに至っていないと推測する。赤本での市場解説も、同分野は今後、市場を大きく変化させると見ており、ウエアラブルの台頭はまだまだこれからとの示唆を与えている。



電子デバイスの市場動向

 電子デバイスに関しては、電子部品、ディスプレー、半導体の3デバイスに関して報告した。セット機器もそうだが、電子デバイスも15年は成長を維持する。ただ、これまでの2桁成長から1桁成長へと移行しており、その成長率の鈍化に要注意だ。

1.電子部品のマーケット動向
 抵抗器やコンデンサー、インダクターなどの受動部品、コネクタなどの機構部品を包括する電子部品は、14年の見込みが21.5兆円、15年は22.5兆円の見通しである。

 このうち日本製電子部品は世界市場の38%を占める勢い。この38%のうち国内生産は29%の2.4兆円規模で、セット組立に近い工場で生産を行う、いわゆるグローバル生産体制の構築がしっかり数字に反映されている。今後も先端品は国内で、汎用品は海外での構図が一層明確になっていくであろう。また、市場規模も車載およびスマホ用途を主軸に、15年も堅調に推移する。

2.ディスプレーのマーケット動向
 液晶ディスプレーを主軸とするディスプレーデバイス市場は、14年が15.1兆円の見込み、15年は16.7兆円の見通しである。

 市場成長の背景は、新興国への需要拡大とともに、画面サイズの大型化や高精細化により、高付加価値製品へのニーズが高まってきたこと。また、今後に関しては、スマートウオッチに代表されるウエアラブルディスプレーやインテリア感覚で楽しむカーブド(曲面)ディスプレーの伸長に期待がかかっている。薄型テレビ用途では、4K市場の立ち上がりに期待したいとこだ。

3.半導体のマーケット動向
 世界の半導体市場は、14年見込みが34.3兆円、15年は35.5兆円の見通しである。このうち日本製半導体は4.7兆円で、シェア14%にとどまる。しかも、14%のうち国内生産が68%の3.2兆円を占める。

 牽引デバイスはスマホ搭載用の高画素カメラを焦点にしたイメージセンサー、車載や家電のインバーター化を背景にしたパワーデバイスである。そのほか、LED照明の需要増に伴う発光ダイオードも見逃せないデバイスである。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 松下晋司

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