電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第558回

パッケージ基板向け製造装置に新規参入相次ぐ


AMATや信越化学が表明、微細化ニーズ進展で新技術求められる

2024/6/28

 チップレットパッケージの登場などを契機に、そこで用いられる半導体パッケージ基板もさらなる微細化や高度化が進展している。パッケージ基板は近年、大型化や高多層化が進展しているほか、今後はガラスコアサブストレートや有機インタポーザーなど新材料・新技術の採用が見込まれている。装置・材料メーカーとしても新たな商機と捉える傾向が強まっており、新規参入が相次いでいる。

中小ひしめくニッチな市場が一転

 パッケージ基板向け製造装置は半導体製造装置に比べて市場規模が小さく、現在も中小ひしめくニッチな市場との受け止めがなされている。しかし、近年はチップレットなど先端半導体パッケージ市場の拡大、さらにはパッケージ基板の細線化要求も強まり、一転して市場として付加価値も高まっている。こうした市場機会を捉えようとする動きも徐々に出てきており、今後は「既存メーカー vs 新規参入組」という競争も激しくなってきそうだ。

AMATとウシオ電機はパッケージ向け露光装置技術で提携
AMATとウシオ電機は
パッケージ向け露光装置技術で提携
 23年12月には半導体製造装置大手の米アプライド マテリアルズ(AMAT)と、ウシオ電機がサブストレートを含む最先端パッケージ向けの露光装置技術開発における戦略的パートナーシップを締結したと発表。AMATのMEMSミラーデバイスを用いたマスクレスDLT(デジタルリソグラフィー)と、ウシオ電機のパッケージ露光装置技術を融合し、次世代パッケージのニーズに対応していく考えだ。

 両社の技術を融合したDLT装置は2μm以下のパターニングに対応しており、量産レベルのスループットを実現しながら最先端の基板アプリケーションに求められる解像度を達成している。ガラスや有機材料を用いた大型パネル、ウエハーを含むあらゆる基板上のチップレット設計において、最適な解像線幅を実現する。量産対応装置が複数の顧客へすでに出荷されており、パターニング製造の評価・実証が行われている。

 シリコンウエハーをはじめとする半導体材料大手の信越化学工業も、微細パターン形成によってチップレットパッケージなどに必要なインターポーザー(中継基板)を不要とするパッケージ基板向けレーザー加工装置を新たに開発した。チップレットなどで増える製造工程の簡略化に貢献する。

信越化学、「インターポーザー不要」を提唱

 開発した装置は半導体前工程で用いられるデュアルダマシン工法をパッケージ基板製造に応用した高性能エキシマレーザー加工装置。「信越デュアルダマシン法」と呼ばれる新工法を用いることで、インターポーザーの機能を直接パッケージ基板に盛り込むことができる。インターポーザーが不要となるだけでなく、新工法を用いることで、現在主流のドライフィルムレジストを使用するセミアディティブプロセス(SAP)では達成できなかった微細加工が可能になる。

 同装置は、自社製の大型フォトマスクブランクスを用いたフォトマスクと独自の特殊レンズの組み合わせで、100mm角以上の面積を連続で加工できる。加工時間は基板サイズによって変わるが、2μm溝幅で深さ5μmのトレンチと、直径10μmで深さ5μmの電極パッドを、515×510mmの基板上に加工するのに必要な時間も、その後上径7μm/下径5μm/深さ5μmのビア加工時間も同様に約20分で完了するという。

 FPD製造装置大手の一角で、近年は半導体やプリント・パッケージ基板向けの事業展開を強化しているブイ・テクノロジーも、子会社のLE-TECHNOLOGY(LET)がL/S=2/2μmの高解像な描画が行えるダイレクトイメージング(DI)技術の開発に成功したと発表。2024年からの出荷開始を予定している。

 LETは業界で初めてL/S=4/4μmの解像度を実現する量産用DI露光装置を23年に出荷。先端パッケージ基板を生産する顧客工場で本格的な運用が始まっている。この装置の実用化過程で獲得した技術やノウハウをさらに発展させ、2/2μmの描画性能を実現する「LAMBDI(ラムディ)」の開発に成功した。同社ではガラスインターポーザーを用いた次世代パッケージの生産に寄与するDIの開発をスタートしており、1/1μmに対応した装置の出荷を25年に目指す。

 上記の企業だけでなく、今後パッケージ基板製造分野に参入を目指す企業はますます増えそうだ。半導体製造装置メーカーは基板製造装置メーカーに比べて事業規模も大きく、開発力も高い。「基板製造≒半導体製造」という構図に向かう中で、既存の基板製造装置メーカーがどう立ち向かっていくのか注目されるところだ。


電子デバイス産業新聞 編集長 稲葉 雅巳

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