電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第74回

電子部品のアプリ動向/2014年度上半期


~自動車・産業&白物家電が好調~

2014/12/5

消費税と猛暑が家電分野をバックアップ

 2014年度上期(4~9月)、アプリケーションから見た電子部品の市場動向を、DGリサーチ代表の佐藤譲氏とともに振り返ってみた。

 2013年度以来、半導体を含む電子デバイス市場全体は、好況感を維持したまま推移している。その牽引役は、周知のとおり、車載用途と中国製の低価格スマートフォン(スマホ)用途である。まずはこの2大アプリ以外の動向から振り返ってみよう。

 注目は冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど、白物家電用途の頑張りである。14年4月1日に消費税が5%から8%にアップ。3月末までの駆け込み需要が増大したことにより、供給側の在庫が品薄になり、生産力を強化したことが背景にある。加えて、エアコンに関しては今夏の猛暑が後押ししたかたちで、国内市場は旺盛な活況を見せた。

合言葉はインバーター化

 白物家電躍進の背景は、もう1つある。インバーター化の加速である。昨年来、中国など新興国向け市場の輸出品に、インバーター搭載モデルが増大してきた。トランスをはじめ、高電圧対抗のフィルムコンデンサー(フィルコン)やアルミ電解コンデンサー(アルミコン)が、白物家電市場でも業績を伸ばしていると推測する。

 同分野は今後、2桁成長の驚異的な伸びはないものの、年間3~4%の伸びで、中・長期的に安定した市場になるであろう。ただし、その主役となるセットメーカーは、もはや家電王国日本ではなく、韓国企業が世界のリーダーである。サムスン電子、LG電子、大宇エレクトロニクスなどの社名が浮上してくる。国内市場よりも、輸出を事業戦略の第一に据えているところが、韓国企業らしくて興味深い。

 白物家電がインバーター化を核に躍進しているように、車載用途の躍進も、同じくインバーター化である。パワー系のため、高電圧/大容量化が求められている。コンデンサーでは、フィルコンとアルミコンが、今後ともマーケットを拡大するであろう。中国や韓国、台湾などのアジア勢も同分野を狙っているが、スペック的に厳しいものがあり、日本陣営の優位性は揺るがないと思われる。また価格的にも安定しており、日本勢が死守すべき市場の1つである。

車載も狙うセラミックコンデンサー

 車載用途で果敢に攻めるアルミコンとフィルコンだが、両コンデンサーはスマホやタブレットなど、モバイル端末用途には不向きである。同分野は何といっても、セラミックコンデンサー(セラコン)のための市場である。セラコン以外の受動部品では、コンデンサーとインダクターを組み合わせた、高周波対応のSAWフィルターも市場を伸ばした。また、モバイル端末機器も内蔵電池の充電寿命の観点から、パワー系で、インダクターの小型化と高効率化が求められている。同分野では村田製作所をはじめ、東光、TDK、太陽誘電などが売り上げを伸ばしている。

 車載用途とモバイル端末機器用途で市場をすみ分けている各種コンデンサーだが、近年、セラコンがさらなる大容量化を推進。車載用途を押さえるフィルコンとアルミコンの牙城を脅かしているようだ。この車載用セラコンは、市場を村田製作所とTDKが二分。熾烈な価格競争も起きておらず安定しており、両社の懐を温めてくれる手放せないビジネス分野となっている。

 同じ車載用途でも、運転手や同乗者をサポートする情報系は弱い。ボリュームの出る商品群がないからである。IoT(モノのインターネット)の普及で、安全性の視点から、車車間通信、歩車間通信、路車間通信、車内通信が全車両に搭載されれば話は別だが、ビジネスに寄与するまでには、まだしばらく時間が掛かりそうである。

中小型LCDに新アプリ

 車載用途の情報系で注目は、後方確認カメラ(リアカメラ)の動向である。関連部品のカメラモジュールやタッチパネルの市場拡大が期待されるが、現状、リアカメラの搭載率は20%ほどと思われる。やはり、ボリューム的に弱い。駆動系ほどの推進力はなさそうである。

 ただ、このリアカメラが米国を起点に、化ける可能性が出てきた。米運輸省道路交通安全局が今春、2018年5月からすべての新車を対象に、リアカメラの搭載を義務づけることを指示した。規制である。規制はビジネスチャンスでもある。カメラモジュールやタッチパネルの市場拡大に加え、カメラ映像を運転手に見せるモニター機能もマーケットを拡大する。能動部品の1つである液晶ディスプレー(LCD)もまた、中小型を中心に市場が活性化しそうである。

 2014年上期は、白物家電用途、駆動系での車載用途、モバイル端末機器用途の旺盛な市場拡大が好況感を演出した。そして、これら各分野の製造・組立を担う産業用途も好況感を享受したと思う。

半導体産業新聞 編集部 記者 松下晋司

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