電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第67回

韓国の医療機器市場は約4600億円で成長は横ばい


~LEDをベースにした手術室無影灯、皮膚治療、脱毛治療などが拡大~

2014/10/17

 「韓国もメディカル機器の開発には全力を挙げている。しかし、2013年の韓国内医療機器市場は約4600億円にとどまっており、対前年比でたったの0.8%しか成長していない」

 こう述べるのは、韓国医療機器工業会にあって産業育成本部長を務めるチャン・ジョンエン氏である。聡明な女性であり、怜悧な分析で知られている。産業タイムズ社と韓国のE-TODAY新聞社が共同で開催した韓日産業フォーラム(2014年9月30日、ソウル)の講演におけるコメントである。

医療産業をテーマとした日韓フォーラムには多くの人が集まった(あいさつするE-TODAY新聞社のイ・ジョンジェ社長)
医療産業をテーマとした日韓フォーラムには
多くの人が集まった
(あいさつするE-TODAY新聞社の
イ・ジョンジェ社長)
 「日韓の未来成長エンジン、医療産業の革命を眺望する」というテーマで行われたこのフォーラムは、IT産業の成熟化に伴い、次の成長産業を必死に模索する日韓の企業の人たちが多く集まった。日本からは、セントラルユニの代表取締役社長の増田順氏、堀場製作所の医用事業戦略室ビジネスオーナーの野村尚之氏および筆者が講演を行った。会場の雰囲気は実に真剣なものであった。

 ウォン高が直撃し、輸出型産業の代表格であるサムスン、LG、現代が伸び悩む韓国経済は予想よりもはるかに悪い、という印象があった。2013年の医療機器の成長ほぼ横ばいの主因はやはり、家計負債の増加による国内経済の消費萎縮にあったのだ。そして、何よりも、ソウルの街のあちこちに一気に増えてきたホームレスの姿が目立っていた。

 さて、韓国政府もまた医療サービス、製薬、医療機器、化粧品、健康管理などを包含する保健産業の育成についてはかなり注力している。韓国における保健産業の市場は約10兆円であり、GDPの7.2%を占有、世界市場では1.1%という存在である。雇用は約80万人で就業者全体の3.2%を占めるが、政府としては2017年までに新規雇用の増大を進め、トータル50万人まで拡大したいという。この分野においては女性が全体の65%を占めるため、女性の就職機会がまだまだ少ない韓国の事情を考えれば、保健産業育成は女性の社会進出促進にもつながっていくというわけだ。

 メディカルツアーの取り組みについても積極的だ。海外患者数は09年に6万人であったが、2012年に2.5倍の15.9万人に拡大しており、この診療収入については同じ期間で4.5倍に増加している。2017年には海外患者数を50万人にしたいとしており、メディカルツアーを「医療」と「観光」が融合された高付加価値産業と位置づけている。しかし、どんな世界にもヤクザまがいの連中が存在するわけであり、このツアーにもブローカーが暗躍し、手術料の8%のマージンを要求することに関係者は頭を痛めているという。

 「光医療機器はLEDという光半導体をベースとするものが多く、ここにきて拡大している。中外メディカルはLED無影灯を手術室などに採用を進め、伸びている。メッドミックスは特殊LEDを適用して皮膚治療、皮膚管理に役立てている。また、ウォンテクノロジーは脱毛治療用として、光医療機器のオアゼを開発した」(チャン・ジョンエン氏)

 要するにオヤジのハゲを直し、女性のお肌のお手入れも、これからはLEDを活用した医療機器がやってのける、とおっしゃるわけであるが、どれほどの即効性があるのかについては、筆者としてはいささか疑問が残るところだ。

 さて、日本の科学者の発明である青色LEDのノーベル賞受賞決定は、元気のないニッポン半導体に久方ぶりの光明を投げかけた出来事だといえよう。LED照明の市場は約2兆円と見られるが、ここ数年のうちに6兆~7兆円に拡大するといわれている。身近になってきたLED電球はさらに伸びるだろうし、液晶テレビのバックライト採用、自動車ランプなどへの搭載も圧倒的に増えてきている。

 受賞者の一人である名城大学教授の赤崎勇氏は、受賞コメントの中で「窒化物半導体であるLEDは大きなポテンシャルがあるが、今後は医学分野で大きな貢献をするだろうと考えている」と述べていたことが実に鮮烈であった。さよう、医療マーケットというのはLEDに限らず、半導体が活躍するステージが大きく広がっているといえるのだ。

半導体産業新聞 特別編集委員 泉谷渉

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