商業施設新聞
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第490回

(株)プロントコーポレーション 代表取締役社長 杉山和弘氏


30年に国内外で450店体制目指す
プロント、ツムギなど4業態軸に

2025/8/5

(株)プロントコーポレーション 代表取締役社長 杉山和弘氏
 (株)プロントコーポレーション(東京都港区)は、「PRONTO(プロント)」「Di PUNTO(ディプント)」「E PRONTO(エプロント)」「和カフェ Tsumugi(ツムギ)」の4業態を主軸に外食事業を展開する。業態ごとに濃淡はあるが、売り上げ、利益とも堅調に推移している。今後は海外での展開も見据えており、2030年には店舗数を現在の約1.5倍となる450店にまで増やしたい考えだ。同社代表取締役社長の杉山和弘氏に聞いた。

―― 前期(24年12月期)ならびに今期の経営状況からお聞かせください。
 杉山 24年12月期は増収増益で、25年もここまで堅調に推移している。ただしコーヒー豆をはじめとした原材料の高騰や賃上げなどにより、経営環境としては厳しくなっている。原材料の高騰は値上げでカバーしているが、コーヒーについては今年もう一度値上げをする必要があるかもしれない。
 客数に関してはコロナ禍前の19年の水準には戻っていないのが実情だ。特にプロントの夜業態の客入りが鈍い。一方でディプントとツムギは客数が19年と同水準にまで回復している。

―― ディプントが好調な理由は。
 杉山 お客様の女性比率が圧倒的に高く、特に20代の若い女性の方が多いためにコロナ禍からの復活も早かった。ただ、お客様が若い分、客単価を上げすぎないようにコントロールしている。今でも客単価は3000円を少し超える程度だ。

―― ツムギについては。
 杉山 昨今「抹茶カフェ」が増えているが、ツムギはお茶に加えてデザートや食事も楽しめる「和カフェ」として打ち出している。この部分で今までにない業態として他と差別化できている。デベロッパーからも出店のお引き合いを多くいただいており、25年に入ってからすでに3店をオープンしたが、年内にさらに2~3店がオープンする予定だ。増えている出店のオファーに対応すべく、社内体制の強化も進めている。

―― プロントは21年に「キッサカバ」へのリブランディングを行いました。その後の状況は。
 杉山 キッサカバでは店先にピンクのネオンライトを置くなど、「ネオ大衆酒場風」を前面に打ち出している。これにより20~30代の若い層が増えたのは狙いどおりだが、一方でおひとりさまや従来のお客様の一部にとっては、入りにくい雰囲気になっているのではないかと感じる。いかに幅広い層にとって入りやすい雰囲気を作っていくかが今後の課題で、具体策については社内でも議論を続けているところだ。

―― 新業態開発の計画はありますか。
 杉山 どちらかといえばまずはプロント、ディプント、ツムギにエプロントを加えた主力4業態に注力していく。エプロントはお酒も提供する終日セルフのカフェとして、今後も成長させていきたい。駅から徒歩1分ほどの立地で勝負できる業態だと見込んでいる。

―― 22年には自動パスタ調理ロボットを導入した「エビノスパゲッティ」をオープンしています。
 杉山 足りない人手を補うためだけでなく、料理のクオリティの均質化、初期教育の軽減、人とロボットの融合という新しい挑戦など、様々な目的を持ってチャレンジした業態だ。さらに24年には和カフェ TsumugiにAI画像認識を搭載したかき氷の自動調理ロボットも導入するなど、挑戦を続けている。
 人が担う役割とロボットやデジタルに任せられる仕事ははっきりとは線引きできないだろう。例えば最近増えている配膳ロボットには「かわいい」という情緒的な付加価値が見出された。モバイルオーダーにしても、従業員が全くオーダーを取らないとなると「冷たい店」という印象を与えかねない。状況に応じて人とロボットの役割を変えていくのが大事で、真に融合するのはハイレベルなことではあるが、これが実現できると、今よりもさらに面白い飲食店を生み出せるだろう。

―― 今後の出店目標について。
5月には「PRONTO 京橋宝町店」が新たにオープンした
5月には「PRONTO 京橋宝町店」が新たにオープンした
 杉山 30年における店舗数として、現状の約1.5倍となる450店を目指す。プロントはコロナ禍に減った店舗数が戻りつつあり、これからV字回復に向けて舵を切るところだ。5月にオープンした「京橋宝町店」はおかげさまで好調だ。他の業態も合わせて25年は全体で20店を出店する計画で、これは達成できる見込みとなっている。
 海外店舗は現在台湾の1店のみだが、プロントや和カフェ Tsumugiで出店したい。地域としては東南アジアなどを視野に入れている。時期についてはこれから検討する。



(聞き手・記者 安田遥香)
商業施設新聞2602号(2025年7月1日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー

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