放射線がん治療装置、3兆円市場へ拡大も
重粒子線は日本勢シェア100%、中性子線ではSiC活用も
放射線を使ったがん治療装置の本格量産時代が幕を明けようとしている。陽子線や重粒子線を使ったがん治療装置が続々と開発・出荷を控え、中性子線がん治療装置の本格立ち上げも期待されており、ここではSiCパワー半導体技術を活用した画期的な装置の開発にもめどがついている。放射線がん治療装置は現状で世界市場が3000億円を超えているとみられ、2018年に36億ドル市場になると予測する調査会社もあるが、10倍の3兆円以上の巨大市場に拡大するとの、さらに前向きな見方も出てきた。重粒子線以上のハイエンド版放射線治療装置では日本勢が圧勝している。重粒子線で断トツシェアの三菱電機をはじめ、日立製作所、東芝、住友重機械工業などの日本企業がいよいよ飛躍の時を迎えたのだ。
安倍晋三首相はひたすらにアベノミクス成長戦略のなかで「医療分野こそ最重要」とコメントしているが、次世代医療機器の焦点となるのは放射線式のがん治療装置だ。東芝、日立製作所をはじめとする国内勢は、CTやMRIといった大型診断装置の性能面ではひけをとらないが、グローバル市場ではGEやシーメンス、フィリップスに分がある。日本勢は陽子線や重粒子線、中性子線のがん治療装置で世界に打って出ようとしている。
がん治療における特性を比較すれば、陽子線の細胞致死効果はガンマ線やX線とほぼ同じだが、線量の集中性がこれらより優れている。重粒子線は止まる位置のずれや横方向の散乱が陽子線より少ないうえ、細胞致死効果は陽子線の約3倍と高く、神経組織や重要臓器を避けながら精密な治療が可能となる。酸素濃度の低いがんにも効果が高いという特徴がある。
国内の陽子線と重粒子線の治療装置で高いシェアを持つ三菱電機に加え、北海道大学に小型で低コストの陽子線治療装置を設置した日立製作所は、動態追尾照射技術を確立して世界展開を目指す。東芝は、陽子線治療装置世界最大手のIBA(ベルギー)と共同で重粒子線治療装置を世界へ展開する。陽子線は国内医療機関で普及期に達し、重粒子線施設の建設計画数を概観すれば、日本企業が優位にある。
とりわけ注目されるのは、山形大学医学部に建設される最新鋭の重粒子線がん治療装置だ。実に150億円が投入されるといわれ、2018年度以降の立ち上げに向けて計画が進んでいる。
(以下、本紙2015年6月4日号1面)
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