IGBT市場 低迷期脱し増産モード突入
15年に生産能力1.4倍に、高効率なFS型が増加
パワーMOSFETと並び、2012年のパワー半導体市場マイナス成長の主因とされたIGBT市場に活気が戻ってきた。足元では自動車や産業機器市場の好調に支えられ、参入各社の業績は回復基調が鮮明になってきており、増産投資も再開され始めた。また、より高効率化を目指したフィールドストップ(FS)型の導入など先端技術の導入もより活発化してきており、プラスアルファの装置・材料需要の芽も出つつある。シリコンの物性限界でSiC(シリコンカーバイド)が注目を集めるなか、まだまだシリコンが主役の時代が当分は続きそうだ。
現在のIGBT市場の好況は、自動車と産業機器市場によるところが大きい。特に自動車市場は年間を通じて安定しており、13年の世界自動車生産台数も前年比2.3%増の8340万台(IHS調べ)が見込まれている。また、安心・安全などのアクティブセーフティー機能の搭載やHEV/EVの台頭で、1台あたりの半導体搭載金額の上昇もパワー半導体市場の成長を後押ししている。
産業機器市場は、12年は中国や欧州経済の低迷で大きく落ち込んだが、13年は「2月から受注が急回復した」(国内パワー半導体メーカー)という。最も大きな要因として考えられているのが、中国国内の工場での省人化対応に向けたロボット需要の拡大だ。これまでは人海戦術に頼るところが大きかったが、近年は労務費の上昇に伴い、こうした方針を転換しつつある。中国に巨大EMS工場を有する台湾ホンハイ(鴻海精密工業)も14年までに100万台のロボット導入を表明している。
市況好転に伴って、パワー半導体各社の売り上げも上昇傾向にある。国内大手の三菱電機と富士電機は、12年夏場を底にパワー半導体の売り上げが回復しており、三菱電機の13年度パワー半導体売上高は過去2番目の水準となる前年度比24%増の1135億円、富士電機は過去最高となる同15%増の974億円を計画している。
(以下、本紙2013年11月27日号1面)
◇ 国内半導体11社 13年度売上高12%成長に、上方修正相次ぐも下期は慎重
◇ インテル大連、ファンドリー参入か、工場に1万枚の拡張余地
◇ 日本の生産能力増加、フラッシュとLEDで、SEMI調べ
◇ HHグレース、中国2社合併で誕生、月産能力は約14万枚
◇ 浜松ホトニクス 14年9月期、投資 前年比で倍増、MEMS新棟など建設
◇ 新日本無線 4~9月期、営業利益2倍に拡大、半導体好調で10%増収
◇ ソニー、半導体下方修正 カメラ向け低迷
◇ ウルトラソック デバッグ技術、SoC向けにIPで提供、14年から実チップ量産へ
◇ フリースケール 7~9月期、営業利益が大幅増、車載用マイコン強化
◇ イビデン 電子関連投資、FVSSの増強再開、14年度は500億円に
◇ NOK FPC事業、通期予想を下方修正、スマホ向けも想定下回る
◇ 三井金属 銅箔事業、汎用品改善で増益、極薄箔も販売好調
◇ TI、5年後にDLP倍増、車載や3Dプリンターへ展開
◇ 天馬微電子、液晶事業を再編、パネル工場を子会社化
◇ キャンドゥ、台湾工場の生産停止、PC用タッチ在庫過剰で
◇ 国内SPE主要9社 7~9月期、装置受注高は16%増、過去3年間で2番目の水準
◇ タカトリ、医療機器開発に着手、徳島大とCART装置
◇ 東京応化 レジスト事業、ArFシェア3割超狙う、韓国で現地一貫生産開始
◇ 東京精密 半導体装置事業、通期予測を微修正、最終製品の需要低迷
◇ DNP、台湾でマスク事業再編、フォトロニクスと合弁化
◇ ジンテック、300MWの拡張計画、設備過剰解消で増強へ
◇ 鹿児島メガソーラー発電、出力70MWで稼働、7社出資で国内最大規模
◇ LiB主要4社動向 7~9月期、パナソニックとLG好調、大型定置用の需要本格化
◇ 科力遠新能源、長沙の電池工場稼働、Ni-MH電池を製造
◇ パナソニック、定置型LiB 低価格を実現