商業施設新聞
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No.921

京都市で誕生する新たな町家再生店舗


北田啓貴

2023/9/5

 趣のある築年数の古い建物をどう生かすのか。全国の自治体が抱える大きな課題だ。筆者が地元を歩いていても、解体現場に出くわす。耐震など安全性の観点から壊されても仕方ないと思う反面、昔から見てきた景観が変化することに悲しさを感じる。加えて最近は、SDGsへの意識の高まりで、スクラップ&ビルドではない古い建物を生かした取り組みも期待されている。そうした中、京都市内で古い町家を飲食店へと再生する事例が増えつつあることに注目している。

 多くの飲食店の設計や、様々な飲食業態の開発などを手がける(株)ファンインターナショナル(大阪市中央区)は5月26日、京都市に「炭炉まん」をオープンした。店舗は築約90年の2階建ての京町家(延べ約200m²)を改装し、1階に44席、2階に52席を設けた。炭炉まんは、古いものと新しいものの融合を意識したという。内装では、梁や窓枠などをそのまま使用し、歴史ある空間を残している。一方で、入り口付近には若者にも利用してもらえるようにショーケースを設置し、明るく彩りある空間を演出している。メニューでは、肉料理を中心に構成し、海鮮のイメージが強い従来の炉端焼き店との差別化を図っているという。

2階建ての古い町家を活用した「MAISON TANUKI」
2階建ての古い町家を活用した
「MAISON TANUKI」
 また、京都市でお好み焼き店「花たぬき」などを展開しているモンテステリース(有)(京都市右京区)は5月17日、「MAISON TANUKI(メゾンタヌキ)」をオープンした。京都でくつろぎの空間を提供したいという思いから、2階建ての古い町家を改装。コロナ禍での新たな事業として、フルーツサンドを百貨店などで催事販売したことをきっかけに誕生した、モンテステリース初のカフェ業態店だ。30~40代女性を主なターゲットに、アフタヌーンティーなどを提供する。

 2店に共通して言えるのは、町家を活用するだけで街の景観が維持されることに加え、非日常的な唯一無二の空間を演出できていることだ。これからさらに、新しい活用事例は生まれてくるのか。機会があれば、取材を進めていきたい。
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