電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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マイコンとゲーム機、遊技機 7


パチンコ・ホール、違法営業よもやま話は数多い!
~金の亡者の化かし合いとセキュリティ防御の戦い

2022/11/18

 パチンコ業界では、パチンコ・ホールも不正行為を行う側にいる。その理由は、他のチームや人々と同じで、いかに儲けるか!である。ホールが儲けるには遊技客が増え、より多くの金額をゲームに投じてもらうことである。そして、いかに不法遊技客、パチプロ、中でもゴト(遊技客が行う不正行為)を行う人の排除がある。

 ホールにしてみれば、人気のある機種を導入することが、先ず、の選択となる。遊技機のメーカーも抱き合わせ販売をしたりするが、それでも人気機種が欲しく、パチンコ・パチスロ雑誌で取り上げられている機種を速やかに設置することがホール同士の競争となる。

 最新の機種を導入した。それなのに他の近所のホールに比べると客の付きが悪い、とホールのマネージャーが感じると要対策となる。実際、ホール専用のコンピュータで各台の営業状態は分かるので、投資に見合うだけ、それも大体、一カ月位で回収できるかが分かる。営業不振の台が特定されると、その台を外して転売するか?不法行為であっても、台のゲーム性を改善するか?の選択を迫られることになる訳だ。

 ゲーム性の改善?で登場するのは、カバン屋だ。カバンの中に改造したパチンコ、パチスロの電子基板を入れて(隠して)ホールを訪れるので、こういう名称が付いたと思われる。機種により、設定のできる遊技台もあるが、設定は従業員に漏れると、特定の遊技客に設定情報が流れるので、あまり利用できない。従業員の彼女やお友達が設定の有利な台を知ってホールに来るので、ホールのマネージャーは設定を従業員にも知られないようにする。

 パチンコ台の収支の調整は、1980年代までなら、釘師の出番だった。主に天釘の角度を微調整してチューリップに入る球を制御していたが、デジパチ、連チャン機の時代になってから、釘師はほぼ絶滅した。今は、パチンコ台を製造するメーカーに僅かに残っているだけと思う。

 ホールにとり、自腹が傷まないで売上が上がることは大歓迎だ。CR機の導入で、100円硬貨、500円硬貨、千円札に替えて磁気カード(パッキーカード)の導入があった。当初は、このシステムもNTTが開発したテレカと同じシステムだったので、使用済のカードをホールが回収して、変造して(簡単だった)、遊技客に無料で配った。カードの使用により、カードの発行会社はホールに使用分を支払うから、変造したカードを遊技客が使ってくれれば、元金は変造用の装置、数万円だけで後は稼ぎになった。このシステムの改修には数年かかったので、その間に、数千億円が不法に取られたとされている。

 デジパチが普及する前、と言っても、手打ち機ではない。一応、電動の自動発射機になった後の話だが、昼休みや、夕方5時過ぎの、サラリーマンがワット押し寄せる時間帯には1分間100発の規制を何とかしたい、と周波数変換器を電源につなぎ、AC24V50Hzの電源を24V65Hzにする、70Hzにするといった方法で、球の発射数を、1分間100発から120発、130発として、負ける人はサッサと負けて、勝つ人も早く打ち止めの数に達するというサービス違法営業があった。この時代は、発射機のモーターは周波数に依存性のあるインダクション・モーターであったので、こういう細工ができた。この手口は発射機がマイコン制御となり、電源の周波数に依存しなくなったので、もうない。

 ホールでゴト師が行う不法行為に「ブドウ掛かり」というのがある。これは強力な磁石を使って球を操り、釘を利用してパチンコの盤面にブドウの房のような形に球を積み上げることを言う。これができた後から発射された球は、ほとんどがチューリップに入るかスタート・チャッカーに入るかするという手口である。パチプロの腕の良い人がやると割と簡単にブドウ掛かりを作る。これも、すでにに対策されている。今のパチンコ台の盤面には、磁気センサーが付いていて、この磁気センサーが反応するとブザーが鳴り店員が飛んできて、ホールから叩き出し、出禁となる。

 同様のゴトの手口で有名なのは、米国のシチズンバンドのトランシーバー、27MHz帯、100W出力を服の下に隠し、この強力な電波でパチンコ、パチスロの制御マイコンを狂わせるという手口である。今の遊技機は、以前の状態が分からなくなると遊技客に有利な状態に持っていくので、小当たりが大当たりになることがある。これを狙った手口である。しかし、この手口もいったん露見すれば対策が打たれる。今は各ホールに27MHzといった電波の監視装置が置かれている。

 筆者が遊技機業界に詳しいので、よく聞かれる話に、パチンコ台、パチスロ台のリモコンの件がある。実際、リモコンをやっているホールはない、というのが筆者の回答だ。比較的小さいホールでも100台位の遊技機がある。大きなホールでは1000台を超える。これだけの台数の遊技機を改造して、リモコンで確率を変える、大当たりを禁止する、大当たりにする、この手間と費用はどれくらいになると思いますか?開発、改造費用が膨大すぎて採算は合わない。さらに次々と入れ替える遊技機に対応できると思いますか?無理である。

 それでも騙されて、リモコンに走るホールが稀にある。これは、そのホールを潰し、地上げするため、といった意図で、ホールのオーナーを騙してやらせ、警察に垂れ込んで、摘発させるといった「マッチ・ポンプ」のケースである。これは、リモコンで摘発されたホールは、その場所での遊技場の再開が許されないからである。さらに、本人はもちろん、親族も遊技場のオーナーにはなれなくなる。警察から見れば、リモコンは直接、遊技を騙しの手口とすることなので厳しく扱われている。

 米国のカジノにあるスロット・マシンの中身は、パソコンで、インターネットでつながれている。こういう環境ならリモコンは可能だが、カジノで機械を改造できるか?警備員が多数いるし、24時間営業なので無理である。カジノの運営者は、違法となる危険は犯さない。ちなみにスロット・マシンの価格は、約600万円で、寿命は約10年である。

 様々なゴトの手口は次々と開発されてくる。そこで業界では、不正改造、他、ゴトに関する手口と対策を共有しようと複数の協議会を作っている。遊技産業不正対策情報機構(PSIO)が代表と思われるが、パチンコ、パチスロのメーカー団体、ホールの団体が参加し、警察も協力している。

 遊技機のセキュリティは、保通協と専用マイコンのメーカー2社が受け持ち、ホールを含む現場でのセキュリティは遊技機メーカーとホールの団体が実施している。守りは堅いのでチャレンジされないことをお勧めする。
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