商業施設新聞
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No.604

ロッテワールドタワーの懸念


嚴 在漢

2017/5/2

蚕室駅から見るロッテワールドタワーの雄姿
蚕室駅から見るロッテワールドタワーの雄姿
 韓国ソウルのランドマークであるロッテワールドタワーが、2009年の建設開始から7年間の工事を経て(16年12月完成)、4月3日にグランドオープンした。敷地選定から30年かかって完成したロッテワールドタワー。つまり、その間に紆余曲折があったというわけだ。同ビルの上空はソウル飛行場の空路に当たることから、建設許認可に不正な優遇(高度制限の緩和)などがあったのではないか、という市民団体の主張もあった。
 筆者が取材に訪れた4月27日は、平日の午前中だったためか、案外閑散とした雰囲気であった。最上階の123階まで1分しかかからないという高速エレベーター。ボトルネックは、料金が大人1人約2700円と高めなことであろう。特に、筆者のような高所に対する臆病者は、ただでも乗れない。取材のため建設中だった2年前に、工事用エレベーターで80階までガタガタ震えながら登ったことがあるが、怖くてもう二度と乗るまいと決心した。

 ロッテワールドタワーは、123層・高さ555mで、世界第5位という超高層ビルだ。今までソウルのランドマークとして君臨してきた汝矣島63ビルの高さ249mより2倍強も高い。同ビルの完成によって、18年から着工予定のソウル市江南区三成洞で計画されている現代自動車GBCビル(569m、21年完成予定)と仁川青羅シティタワー(448m、22年完成予定)の建設工事にも弾みがつく見通しだ。

タワー1階のロッテ麺全店のメーン入り口
タワー1階のロッテ免税店のメーン入り口
 ロッテワールドタワーの建設には4兆2000億ウォン(約4200億円)が投入されており、サッカー競技場110個分の延べ床面積(80万7613m²)に、ショッピングモールをはじめ、ホテルや文化施設、レジャー施設まで盛り込んだ。
同ビルの高層部には高級オフィスエリアとホテル、展望台があり、低層部のロッテワールド団地には免税店をはじめとするショッピングモールとコンサートホール、アクアリウムやテーマパークなどが入居している。

 ロッテグループの重光昭夫(韓国名・辛東彬)会長は、同ビルのグランドオープンとともにグループ創立50周年を迎えて、ニュービジョンを打ち出した。共生と信頼、グローバル競争力アップを推し進めるのがニュービジョンの骨子だ。
 しかし、ロッテの経営環境は決して明るいとは言い難い。15年から表面化した実兄との経営権を巡る争いをはじめ、朴槿恵(パク・クネ)前大統領のスキャンダルに絡んだことから韓国検察に不拘束起訴され、長い裁判が待ち受けている。特に、高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備による中国の様々な牽制は、ロッテの経営をさらに圧迫している。
 ロッテを取り巻く様々な悪材料の影響によって、今後、韓国を代表するランドマークのロッテワールドタワーが負の遺産に終らないよう願いたい。
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