商業施設新聞
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No.327

ゲーセンからアナログ娯楽へ回帰


登坂 嘉和

2011/7/26

 国内アミューズメント(AM)施設の低迷に歯止めがかからない状況が続く。リーマン・ショック以降、プライズゲームや体感ゲーム機などを中心としたAM施設の業績が下降線を辿り、3月の東日本大震災でさらに追い打ちをかけられた。

 ナムコの国内店舗数は、2011年3月期末現在で217店となっており、この3年間で最盛期の半数まで店舗が減少、AM部門の売上高は31%減の623億円となった。セガも同様に、11年3月期末の店舗数は206店に、売上高は36%減の456億円となり、最盛期の1000億円規模から大幅に縮小した。
 各社は不採算店の処理も一定程度完了し、出店再開へと舵を切り始めたが、今春の震災により店舗が被災したり、また来店客数の減少、夏場の消費電力の削減などマイナス要因が重なり、再び逆境に立たされる状況となっている。

 こうした中、アナログ娯楽の1つでもあるトリックアートの展示施設が7月16日にデックス東京ビーチ(東京都江東区台場1-6-1)のアイランドモール4階に誕生した。施設名称は「東京トリックアート迷宮館」で、施設規模は延べ床面積1082m²。館内には45作品を展示しており、「江戸」をテーマとする常設展とトリックアートの秀逸品を展示する名作エリアで構成している。
 遠近法などによる目の錯覚を利用したペイントアートの体験や、来場者が作品とコラボレーションした写真撮影を楽しむことができる施設で、来場者は家族連れやカップル、若者グループをターゲットにしている。作品は、アクリル絵の具を使って、壁や床、天井に手描きで描いており、館内は江戸の宿場町や忍者屋敷、江戸町人町、江戸大相撲、からくり茶屋、怖くないお化け屋敷で構成している。これらに加えて、トリックアート名作エリアや脳トレコーナーを配置しており、風景画の中に十二支の図柄を描き込み、それらを探して楽しむゲーム感覚のアートも注目される。さらに、売店「グッズコーナー」を設けて、同店でしか手に入らないオリジナルグッズや不思議なグッズも販売している。
 営業時間は、11時~21時、年中無休で営業する。入館料は大人(高校生以上)が900円、小人が600円、3歳以下は無料。入場料が少し高めかなと思ったが、デジカメを持参して自分や仲間のコラボレートした写真を撮影することで、後々も楽しむことができ、葉書に印刷して季節の挨拶状としても利用できる。
東京トリックアート迷宮館
東京トリックアート迷宮館
十二支の隠し絵がある風景画
十二支の隠し絵がある風景画

 開設者は、㈱エス・デー(栃木県那須郡那須町大字高久甲上ノ台5760、Tel.0287-62-8388)で、同社は栃木県那須町に「那須とりっくあーとぴあ」と制作のための工房を構え、全国でアートミュージアム18施設を展開している。約500点の作品を所蔵し、全国の美術館や集客施設で開催される期間限定イベントなどにも出品・展示し、多くのファンを抱えるという。同社では、今回都心部へ出店した理由として、海外の観光客がトリックアートを体験することを期待しており、今後、中国の上海市への出店をはじめ、海外進出を積極化する方針である。

 AM業界は、タイトーのインベーダーゲームからデジタル化が始まり、急速に普及し成熟してきたが、近年は子供や幼児を対象とする「知・育」をテーマとする施設が人気を集めている。20世紀前半のシュルレアリスムで使われた技法の騙し絵(トリックアート)に触れ、脳を刺激することも現代人には必要かと思う。

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