電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第523回

2023年上期における日系自動車の販売・生産動向


日産、ホンダ、三菱自動車は中国苦戦で販売減

2023/10/13

 国内主要自動車メーカー(トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、スズキ、マツダ、三菱自動車、SUBARU)の2023年1~6月期の新車販売台数(7社合計)は、前年同期比3.4%増の1155.2万台となった。トヨタ、スズキ、マツダ、SUBARUはプラス成長としたものの、日産、ホンダ、三菱自動車はマイナス成長となるなど明暗が分かれる結果となった。

 その背景・要因として挙げられるのが、各社の注力市場の違いとなる。なかでも中国市場の構成比率が高い日系OEMほど、23年は競争環境の激化により中国での販売台数が激減し、グローバル販売全体を押し下げる結果となってしまった。

 なお、23年1~6月期の国内新車販売台数(普通乗用車と軽自動車合計)は、前年同期比17.5%増の245万600台で推移。普通乗用車の販売ランキングは1位がトヨタ「ヤリス」で9万7421台、2位がトヨタ「カローラ」で8万2374台、3位がトヨタ「シエンタ」で6万7344台となり、トップ3をトヨタが独占した。一方、軽自動車の1位はホンダの「N-BOX」で11万2248台(普通乗用車を含めた国内販売台数で圧倒的な1位)。2位はダイハツ「タント」で8万85台、3位はダイハツ「ムーヴ」で6万2091台となった。


23年上期の国内普通乗用車 販売ランキング1位 トヨタ「ヤリス」
23年上期の国内普通乗用車 販売ランキング1位 トヨタ「ヤリス」
23年上期の国内軽自動車 販売ランキング1位 ホンダ「N-BOX」
23年上期の国内軽自動車 販売ランキング1位 ホンダ「N-BOX」

国内主要自動車メーカーの動向

【トヨタ自動車】
 23年1~6月期のグローバル販売は、前年同期比5.1%増の493.8万台となり、2年ぶりの前年超えとなった。また、軽自動車を含む国内販売は、同33.2%増の87.8万台で、シェアは前年から4.2ポイント増の35.8%としている。22年は新型コロナの感染拡大や半導体不足の影響で低調に推移したことが、プラス成長の背景にある。グローバル生産は、堅調な需要に対応するため各地域で生産能力を向上したことを受け、同12.1%増の489.4万台とし、過去最高を記録した。

 一方、4~6月期におけるトヨタ・レクサス合計の販売台数は253.8万台。電動車の販売は、HV(ハイブリッド車)を中心に着実に増加し、前年同期から5.7ポイント増の34.2%となった。同社では、各地域における様々なエネルギー・インフラ事情、顧客ニーズに応じて、引き続きマルチパスウエイで、すべての電動車を提供していくとしている。

【日産自動車】
 23年1~6月期のグローバル販売は、前年同期比0.1%減の167.1万台と、微減ではあるが前年を下回った。地位別に見ると、国内販売(軽自動車含む)は同9.7%増、北米は同24.9%増、欧州は18.6%増と、主要マーケットで高成長を果たしたものの、中国市場において同24.4%減の35.9万台と大幅なマイナス成長を余儀なくされことが、グローバル販売を押し下げる結果となった。

 なお、4~6月期における日本の小売販売台数は、同19%増の10.6万台と2桁成長で推移。23年4月に発売した新型セレナe-Powerの好調な販売を受け、セレナの販売台数が前年から2.3倍に増加した。また、電動車の構成比率は前年から14ポイント増加し、56%に達している。

 日産にとって最大のマーケットである北米では、小売販売台数が同33%、生産台数が同36%と大幅に増加。主にトップセラーの「ローグ」と「セントラ」が牽引した。同社では、継続的な販売の質の改善に向けた取り組みを進めており、台あたりの売上高は前年から6%改善しているもようだ。

【ホンダ】
 ホンダグループの23年1~6月期のグローバル販売は、前年同期比2.2%減のマイナス成長となった。主要地位別では、北米が同27.3%増の72.8万台、日本が同2.2%増の27.6万台とプラス成長で推移したものの、欧州が同12.7%減の4.1万台、中国を中心とするアジアが同21%減の74.6万台と大きく縮小した。

 なお、4~6月期の実績では、北米で半導体の供給状況が改善し、生産が回復したことに加え、22年度に投入したモデルの販売が好調に推移したことで、小売実績は同44.7%増の34.7万台となった。中国では、新エネルギー車(NEV)市場の拡大に伴う競争の激化の影響を受け、同5%減の30.9万台としている。

 ホンダでは、電動化へ向けた取り組みを強化しており、23年7月にSCSK㈱とソフトウエアに関するパートナーシップに基本合意するとともに、北米で自動車メーカー7社がEV用高出力充電網を構築する合弁会社の設立に合意している。

【スズキ】
 スズキの23年上期(1~6月)の世界販売は、前年同期比3.7%増の152.2万台と3期連続でのプラス成長を果たした。同社販売台数の半分以上を占めるインドでは、同9.3%増の86.1万台と堅調に推移。また、国内販売は同13.5%増の32.9万台となり、2期ぶりでプラス成長を果たした。

 一方、4~6月期ベースでみると、日本では、半導体不足の影響が前年同期よりも減少し、生産台数が増加したことにより、販売台数は同1.5万台増の14.8万台となった。生産面では、半導体の供給不足が解消され、8月以降は通常稼働に戻るとの見通しを示している。
同社の主戦場であるインドでは、新型SUVの投入効果もあり、同4.2万台増の42.2万台。SUVシェアは22年6月のブレッツァ投入以降、順調に拡大し21%(22年7月は3.9%)としている。なお、インドの乗用車市場に占めるスズキのシェアは40.6%(23年6月時点)。

【マツダ】
 マツダの23年1~6月期におけるグローバル販売は、前年同期比12.5%増の62.4万台となった。地域別では、中国が同46.7%減の3.2万台とほぼ半減したものの、日本が同26.1%増の10万台、米国が同28.7%増の18.4万台、欧州が同31.0%増の9.6万台と、主要地域で20%を超える高成長を果たし、中国市場でのマイナス成長を大きく補った。

 4~6月期で見ると、生産台数は同36%増の28.4万台となった。5月は工場稼働日が少なく単月の生産が少なかったが、4月、6月は10万台レベルを確保しており、四半期全体の生産は計画通り進捗したもよう。

 グローバル販売台数は、同32.6%増の30.9万台。22年の上海ロックダウンに伴う供給制約からの回復に加えて、昨年から導入したラージ商品群の「CX-60」、「CX-90」などが販売を牽引している。

【三菱自動車】
 23年1~6月のグローバル販売は、前年同期比2.7%減の49.6万台にとどまった。国内市場では同9.2%増の4.9万台を販売し、21年上期以来、3期連続で前年同期を上回った。なかでも牽引役となったのが電気自動車の「ekクロスEV」で、前年から約12倍の5040台を販売した。

 一方、4~6月期では、グローバル販売は同10.1%減の19.5万台となった。全体の需要はおおむね堅調であったものの、一部部品の供給不足が車両の生産に影響したことや、オセアニア、中東、欧州などの船腹不足で在庫補充が遅れ、2桁のマイナス成長を余儀なくされた。

【SUBARU】
 23年1~6月の世界販売台数は、前年同期比18.3%増の45.3万台となった。地域別では、主戦場の米国が同16.1%増の31.8万台と2桁成長。カナダが同23.8%増の2.6万台、豪州が同56.3%増の2.5万台、日本は同2.3%増の4.5万台となり微増ではあるがプラス成長を果たした。

 SUBARUでは、23年5月に電動化計画を大幅にアップデートした。「従来公表では30年時点で電動車比率をハイブリッド車とバッテリーEV合計で40%以上としていたものを、バッテリーEVのみで50%へ引き上げるとともに、120万台の世界販売台数計画に対して、60万台のバッテリーEVを販売することで実現するという目標に大きく見直す」と大崎社長は語った。

 その実現に向け、新たに米国においても国内工場で生産予定のトヨタハイブリッドシステムを搭載した次世代e-Boxer車両およびバッテリーEVの生産を開始する。これにより、ワールドワイドの生産能力は120万台レベルを有することとなる。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

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