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第31回

ミツバ 新里工場、車載向けモーターの一貫生産工場、「からくり」活用で生産性改善


2023/10/10

 ミツバ(株)(群馬県桐生市広沢町1-2681、Tel.0277-52-0111)は、1945年に自動車の発電ランプの生産を目的に設立、数多くの車載電装品を開発・製造販売している。現在は車載向けを中心としたモーターなどを生産しており、2022年度(23年3月期)には約1億2500万個のモーターを生産販売している。

 車載向けのモーターは、厳しい使用環境への適合や高信頼性を担保する検証、品質管理への対応が必要とされるが、同社では過去のトラブルの経験やOEMの特性に合った摺合わせなどのノウハウを蓄積しており、これが強みとなっている。

 独自の巻線技術を開発しており、巻線機から自社生産し、いかに早く安くモーターを作っていくかを日々追求している。同社で多く採用し、巻き線スピード、占有率の改善が進んでいるダブルフライヤー巻線機、二輪スターター用に開発した同社独自の巻線方式である他スロットアウターノズル巻線、アウターローター用に開発した専用巻線機であるシングルフライヤー巻線機、ブラシレスワイパー用に開発した高速インナーノズル巻線機、ブラシレス電動パワーステアリング(EPS)などのインナーローター用に開発したスピンドル式巻線機などを活用。さらに二輪EV駆動用モーターやEPSに適用を検討する、丸線の縦横比を最適な平角線に成形し巻線を行う同社オリジナルの平角成形巻線機(スピンドル式)の開発を進めている。

 同社では多様化する電動モビリティニーズに対応するため、電動化ソリューション事業を新設。(1)熱マネジメント向け、(2)ADAS/自動運転向け、(3)小型モビリティ向けの3領域を成長領域として位置づけ、(1)ではブラシレスファン&シュラウド、(2)ではブレーキ制御用モーター、EPS、電動オイルポンプ、(3)では汎用薄型駆動システム、小型EV駆動システムなどの商品開発を進めていく。

ミツバ新里工場
ミツバ新里工場
 新里工場(群馬県桐生市新里町野598)は、同社設立から約30年後の1976年に操業を開始。敷地面積11万8851m²、建物面積3万5387m²、延べ床面積4万7322m²。従業員数は男性449人、女性156人の計605人(2023年9月現在)となっている。

 同工場は二輪の発電機の生産からスタート。桐生工場からの生産を順次移管し、01年9月に統合を完了している。現在の生産品目は二輪・四輪スターターモーター、パワーウインドウモーター、ワイパーモーター、二輪のACジェネレーター、パワステモーター、4WS電動モーター、アンチロックブレーキモーター、二輪・四輪車電装用プレス部品。1~6号棟の工場棟を有しており、1号棟では高速・順送プレス、2号棟では四輪・二輪スターター、3号棟ではトランスファープレス・冷間鍛造、4号棟ではパワーウインドウモーター、5号棟ではワイパー・パワステモーター、6号棟ではめっきを行っている。プレス、機械加工、熱処理、めっき、組付けが同一敷地内にあり、かつ設備メンテナンス部門もあることからコスト競争力の高い生産活動を行っている。

 また、試験サイトも有しており、試験サイト内には二輪用のシャーシダイナモなどを備えた実験棟、無響棟、電波暗室の3施設を有している。

 1998年から生産革新活動を継続しており、徹底的なムダの排除を行っている。重力などの自然エネルギー、歯車・てこの原理などを活用し、お金をかけずにCO2排出量削減にも寄与する「からくり」を活用した改善。1個ずつ次工程に流すことで誤組、欠品、造りすぎの無駄をなくす1個取り出し、製品の加工が着々と進むラインを目指す「着々」。必要な部品を必要な量、同じ位置に同じ姿勢で供給する部品の4定などの改善活動を進めている。

 製造DXへの取り組みも進めており、設備への自動フィードバック制御、測定・検査データの見える化、既存設備のチョコ停改善などを実施している。また、脱炭素化も進めており、建屋ごとにエアーの使用量を見える化するシステムを社内で構築し異常の早期発見や優先順位の位置づけなどに活用することで、CO2排出削減につなげている。

 同工場では現在ワイパーモーターの手動生産ラインの導入を進めており、近く稼働する予定。また、市場が拡大しておりさらにプレーヤーが減っているため仕事量が増えている中・大型二輪車向けスターターの生産能力増強に向けた生産設備の導入も検討しており、そのためのスペースも確保している。さらに、ブラシレスモーターを中心とした拡販や新規顧客への対応に向けて、生産能力の増強も検討している。

北田勝義社長
北田勝義社長
 同工場はまた、世界に展開する同社の生産拠点のマザー工場として位置づけられており、製造技術力の向上や人材育成を行うことで、グローバルでQCD(品質・コスト・納期)競争力を高めている。同社代表取締役社長の北田勝義氏は、同工場の将来について「当社の世界のマザー工場として発展させていく」と語った。
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