電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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中国勢の支配力さらに強まる


~「第42回 ディスプレイ産業フォーラム」開催~

2022/1/14

シニアディレクター 謝勤益氏に聞く
シニアディレクター 謝勤益氏に聞く
 大手調査会社のOMDIAは、1月27~28日にFPD市場総合セミナー「第42回 ディスプレイ産業フォーラム」をオンラインで開催する。FPD市場総論を担当するシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に2022年の注目ポイントを伺った。




―― 21年下期はテレビ用を中心に液晶パネルの価格が急落しました。
 謝 下げ幅が月を追うごとに小さくなってはいるが、22年1~3月期も5%前後の下落が続くとみている。北米のブラックフライデーや年末商戦を見る限り、例年と傾向が異なるのは、パネル価格の下げ幅ほどセット価格が下がっていない点だ。これには物流コストの上昇といったサプライチェーンの問題が絡んでいるためで、この改善には春先まで時間を要するだろう。

―― 22年は供給過剰の年と見てよいですか。
 謝 22年のFPD需要面積の伸び率は6%、供給面積(生産能力)の伸び率は9%と見ており、基本的に供給過剰だが、四半期ごとに様相が変わりそうだ。4~6月期から需要は回復に転ずるが、価格の上昇率は2~3%にとどまるとみており、大きな反発は期待しづらい。需要期である7~9月期は市況が安定するが、年末に向けて過剰感が再び強まる。19年に似た市況になりそうだ。

―― 注目点は。
 謝 まず、在庫の増加によってスマートフォン(スマホ)用パネルの需要が2~3%落ちる。このなかで中国勢のシェアが上昇し、首位のサムスンディスプレー(SDC)のシェアが初めて80%を下回るとみている。中国勢はスマホ用有機ELを20年に7200万台を出荷し、21年は9000万台まで増やしたが、キャパ拡大と歩留まり向上によって22年は1.7億~2億台に伸ばし、シェアを20%以上に高める。

―― スマホ用全体では減少しますが、フォルダブルは伸びそうですね。
 謝 そのとおりだ。22年の需要は2000万台と2倍に増える。SDCがシェア90%以上で圧倒的に強いが、ここでも中国勢が追い上げを始める。オッポをはじめ多くの端末メーカーがフォルダブルモデルを発表済みだが、こうしたモデルのパネルは中国勢がセカンドサプライヤーになっている。BOEは10%のシェア獲得を狙っている。

―― テレビ用は。
 謝 ここも有機ELの動きに注目している。なかでも、市場の支配力を高めている中国勢に対抗して、韓国勢が共闘して中国からの購入量を減らそうとしている。SDCはQD-OLEDをテレビに採用する一方で、LGディスプレー(LGD)からWOLEDを購入する見通しだ。SDCがLGDから調達するパネルは液晶を含めて年間400万台に達するとみられ、中国勢からの購入量とのバランスをとる。LGDは、WOLEDの年間出荷1000万台超に挑戦することになる。

―― 大型液晶への投資は減速しそうです。
 謝 G10.5に関しては、SIOがステッパーの追加で月産能力を15万枚まで増やす見通しだが、BOEは武漢第2工場の投資判断を延期し、CSOTは増強計画がない。一方で、G8.6ではCSOTがT9を22年末に稼働予定のほか、天馬が厦門新工場を22年中に着工する検討を進めている。いずれもIT用の増産を狙ったもので、IGZOの生産量が増えることになりそうだ。

―― G8.5でRGB有機ELを量産する動きも具体化しそうです。
 謝 SDCやBOEが24年からの量産を視野に計画中だ。アップルが24~25年にiPadやMacbookのパネルを有機ELに順次切り替える見通しで、こうしたIT用の需要拡大を狙った計画が具体化する。ミニLEDバックライトとのすみ分けを含め、今後の需要動向に注目したい。

―― 他の注目点は。
 謝 BOEの組織再編が台風の目になりそうだ。同社は21年、大型液晶の台数ベースで31%、面積ベースで25%のシェアを獲得した。もちろん過去最高で、かつてのSDCでさえ1社単独でこれほど大きなシェアを確保したことはなかった。
 そのBOEでは、組織再編で部門のリーダーがパネルとセットを両方担当するかたちになった。つまり今後は、テレビ用パネルを販売するだけでなく、OEMでテレビそのものまで生産・供給する体制を敷くことになる。パネルの圧倒的なシェアを活かして垂直統合をより強め、PCでもモニターでも車載でもセット生産を拡大していく。
 この体制ではフォックスコンが新たな競合となり、韓国勢も今後の動きを注視している。BOEはドライバーICの製造子会社を設立するなどグループの力をさらに強めており、ゆくゆくは業界構図に影響を及ぼすようになる可能性が高い。

(聞き手・特別編集委員 津村明宏)


 「第42回 ディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はhttps://na.eventscloud.com/website/33089/まで。
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