商業施設新聞
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第307回

イオンリテール(株) 執行役員 SC本部長 簑原邦明氏


都市型の生活密着SCを開発
22年3月に上飯田が開業

2021/11/22

イオンリテール(株) 執行役員 SC本部長 簑原邦明氏
 イオンリテール(株)は、都市型ショッピングセンター(SC)の「イオンそよら」(以下そよら)を開発し、現在「そよら海老江」(大阪市福島区)と「新金岡」(堺市北区)の2施設を展開している。生活に密着したテナント集積、時短・ワンストップショッピングといったニーズにも対応するSCで、2022年3月には3施設目の「上飯田」が開業を控えている。そよらの現状、今後などを同社執行役員 SC本部長の簑原邦明氏に聞いた。

―― そよらの紹介から。
第1号施設で20年3月にオープンした
「そよら海老江」
 簑原 そよらは「集う・通う・繋がる」の3つをキーワードとし、ベーシックに、生活に役立つテナントと当社の直営売り場を融合した都市型SCである。最大の強みは都市部に立地し、日常生活に必要なものをワンストップで提供していることだ。標準的なモデルは敷地1万~1万5000m²、延べ床1万~2万m²、GLA(総賃貸面積)1万~1万5000m²で、テナント数は10~40店を想定している。

―― 既存施設の状況は。
 簑原 20年3月開業の海老江は、飲食店の比率が高くダイレクトに新型コロナの影響を受けたが、徐々に業績、客数も回復しつつある。また、新金岡は21年7月にオープンしたばかりで、一部新型コロナの影響があったが、テナントやお客様にしっかり感染対策を実施してもらい、安心・安全を確保したうえで地元と融合した催事などを開催するなどし、お客様にも大変喜んでいただいている。

―― 好調な業種は。
 簑原 例えば、カフェは“時間を過ごす場”としてニーズが高い。また、生活に密着したSCであることから、100円ショップや雑貨なども好調だ。加えて、周辺に住宅が多い立地特性から、カルチャー分野の教室などは通いやすい環境にあり、支持をいただいている。

―― テナント構成は。
 簑原 前述の3つのキーワードをベースにテナントを集積している。集う=カフェなど時間を過ごす場や機能、通う=教室、幼稚園、保育園など、これらを立地に応じて変化させ、そのエリアに最適なテナント、機能を導入する。テナントには郊外型SCのような規模の面積を用意できないケースもある。この場合、テナントには小型業態を開発してもらったり、場合によっては、我々も一緒に業態を考える。
 例えば今なら、飲食店はお客様とタッチポイントを増やすためのテイクアウトやデリバリーなど様々な接点を作っている。お客様に、ただ単に買いに来てもらうだけでなく、テナントにはそよらを拠点にしたデリバリー対応などを行うことで、地域に貢献できる商業施設にしたい。
 また、核店舗はスーパーマーケット(SM)とするが、食品以外にも非食品や補完機能をうまく融合させ、お客様が求めるものをバランス良く構成するなど、限られた面積の中でお客様のお役に立てるベーシックなSCを目指していく。

―― 開発エリアは。
 簑原 首都圏や近畿圏など、複数の候補地で開発の検討を進めている。既存施設は大阪、名古屋に集中しているが、出店エリアとしては三大都市圏にドミナントで展開していきたいと考えている。また、新金岡と上飯田は総合スーパー跡地に出店したが、跡地活用だけでなく、適正な立地であれば更地などでも開発を行う。

―― 注目するテナントや業種は。
 簑原 そよらの3つのキーワードを実現するカフェやファストフードなどは必須だ。また、ネットとリアルを融合したような店、オムニチャネル戦略を推進できるような店などは必要だと思っている。

―― 飲食テナントの考え方は。
 簑原 我々は、飲食店の使用頻度を重要視している。飲食店の使用頻度は、半年に1回、月に1回など幅広い。既存の海老江は使用頻度の幅を広く持たせた飲食店の展開を行っているが、今後は、月に複数回利用してもらえる店を集積したほうが、そよらの特性に合うと考えている。飲食店のカテゴリーでも、より使用頻度の高いテナントの導入が必要だと感じる。

―― 開発ペースは計画どおり進んでいるか。
 簑原 当初計画の22年2月期に3施設体制というのは、22年春の上飯田オープンにより、ほぼ計画どおり進んでいる。また、将来的には26年2月期に10施設超の展開を目指している。

―― 今後の目標など。
 簑原 新型コロナの影響で、お客様は地元・足元で買い物をする生活スタイルが定着したと思う。そこでより一層、ワンストップで買い物が済む我々のような商業施設は非常に存在意義があると思う。そうしたニーズにしっかりと対応し地域に貢献していきたい。また、ネットとリアルの融合も我々の施設がひとつ拠点となるようなものを構築したい。
 また、お客様のニーズに合わせてすぐに変化できるような商業施設を目指したい。お客様が便利だと思うものを常に追求、提供し続ける。幅広い需要に対応し、変革し続けることが我々の任務だと思う。


(聞き手・副編集長 若山智令)
※商業施設新聞2421号(2021年11月16日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.359

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