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三菱京都病院、院内物流のロボット化を実証、2000アイテムを搬送


除菌清掃ロボット「Whiz i」の導入や人型ロボットで検温作業無人化を検討

2021/8/3

三菱京都病院
三菱京都病院
 三菱京都病院(京都市西京区桂御所町1、Tel.075-381-2111)は、院内物流のロボット化に関する実証を6月に実施した。SPD(院内物流管理システム)などを手がける(株)メディカルサポート(京都市南区)ならびに、サービスロボット大手のソフトバンクロボティクス(株)(東京都港区)と連携して、新たな院内配送のかたちを作り上げていく。

 同病院は、1946年に当時の三菱重工(株)の福利厚生施設として創設され、現在188床(一般病床160床、ICU・CCU病床8床、NICU病床6床、緩和ケア病床14床)を有する総合病院である。京都市西部地域における中核病院の1つとして「高度であたたかい医療を提供する病院」を標榜している。

 そういった医療体制を支えるために、同病院の物品管理エリアには医療関連機器や医療消耗品をはじめ、約8000点のアイテムが管理されており、院内の約30カ所へ物品配送を行っている。しかし、院内配送にも新たな取り組みが求められている。

 そこで着目したのがソフトバンクロボティクスの「Servi」(サービィ)だ。Serviは飲食業を中心に採用されている配膳・運搬ロボットで、目的地を選んでタップするだけのシンプルな操作で、目的地までの最短ルートを移動でき、人やモノを自ら回避しながら移動できる。これまでに導入した飲食店舗ではキッチンとホールの往復作業などを大幅に削減し、従業員の業務負担の軽減ならびに感染症対策としても効果を発揮している。

 三菱京都病院とメディカルサポートは、このServiを院内物流の運搬に活用することを目指し、6月に約2週間の実証を実施した。物品管理エリアにある約8000アイテムのなかで2000アイテムの搬送を行い、安定して物品を搬送できることや、一度に複数エリアへ運搬できることなどを確認した。また「院内物流では重量物を扱うこともあり、ロボットによって身体負担を軽減できることも大きなメリット」(メディカルサポート 吉見社長および小筆氏)となる。

 三菱京都病院、メディカルサポート、ソフトバンクロボティクスは今後、実証のなかで得られたデータをもとに、Serviの最適化を進めていく。その一丁目一番地が安全性のさらなる向上だ。Serviには様々なセンサーが搭載されており、周辺状況を検知しながら移動するため、現状でも優れた安全性を備えているが、「病院内におられるのは健常者の方ばかりではなく、安全性に対するハードルは非常に高い」(三菱京都病院 看護部門の嶋部長)という。そのほか、取り扱いに注意を払う必要がある物品も多いことから、運搬時のセキュリティー機能の向上も重要性が高く、大型品や重量物への対応力向上などもテーマとして挙がっている。

運搬ロボット「Servi」(左)と除菌清掃ロボット「Whiz i」
運搬ロボット「Servi」(左)と除菌清掃ロボット「Whiz i」
 また意外な点として、Serviに対話機能を付与してほしいという要望も多く寄せられたという。Serviが対話することで親近感が得られ、院内での“共存・協働”に際してプラス効果がもたらされることが予想され、こういった「ロボットをロボットと感じさせない工夫」も求められるようだ。三菱京都病院の仲田事務長は「ロボットへの期待値は非常に高い」とし、中長期的には、検体、薬剤の運搬などにも期待を寄せる。また、同病院では、ソフトバンクロボティクスの除菌清掃ロボット「Whiz i」の導入や、人型ロボット「Pepper」にサーマルカメラや発熱検知用アプリケーションを搭載した「サーマルPepperパック」を病院の入り口に設置し、来院者の検温作業を無人化することなども検討している。

 同病院では、2021年度における病院目標の1つとして「日々の業務にICTの活用を~デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の医療を考えよう~」を掲げている。DXという概念はもともとスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱し「先端技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことが基盤の考えとなっており、三菱京都病院、メディカルサポート、ソフトバンクロボティクスは、ロボットをはじめとした先端技術の活用により、院内スタッフの業務環境をより良い方向に変化させていく。

(浮島哲志記者)

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