大手調査会社のIHSマークイットは、2020年1月30~31日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第38回 ディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では注目の講演内容を登壇アナリストに聞く。第2回は、前回に続いて「FPD市場総論」を担当するシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に話を伺った。
―― スマートフォン(スマホ)用パネル市場の見通しはいかがですか。
謝 有機ELの搭載率が大きく高まる。中国メーカーの量産が本格的に立ち上がり、すでに19年7~9月期時点で有機ELがLTPS液晶を搭載率で上回った。これまでサムスン、アップル、ファーウェイがメーンだった採用先が、オッポやビーボ、モトローラ、HTC、シャオミーなど他のブランドにも広がる。
―― アップルもiPhoneの20年モデルはすべて有機ELを採用するといわれていますね。
謝 アップルに限らず、ファーウェイやシャオミーなども有機EL搭載モデルを倍増する見通しだ。19年のスマホ用有機EL需要は約5000万台だが、20年は約1億台になる。これに伴い、有機ELの搭載率は19年の約3割から20年には4割に近づき、23年にはスマホの半分を占めるようになる。
―― 中国メーカーはまだ歩留まり向上に苦労しているようです。
謝 特に、有機ELとタッチパネル、カバーフィルムを貼り合わせていくモジュール工程に苦労しており、ドライバーICの実装にも苦戦している。歩留まり改善に向けて強化を図っており、徐々に成果が上がってくるだろう。
―― 中小型パネル市場のトピックスは。
謝 スマートウオッチだ。ここでも有機ELが人気で、大きく伸びるとみている。アップルウオッチ向けにLGディスプレーに続いてジャパンディスプレイが供給を開始し、中国ではシャオミーやファーウェイの端末が人気を博している。
車載に関しては、19年は自動車の生産台数が世界でマイナスになるため需要は低調だったが、20年は回復傾向が強まるだろう。
―― FPD技術に関する注目点は。
謝 前回も述べたが、大型テレビ用では、量子ドット液晶「QLED」、有機ELに加え、中国・台湾メーカーが投入を増やしてくる「ミニLEDバックライト搭載液晶」と「デュアルセル液晶」に注目する。いずれも液晶のコントラストを向上する技術で、有機ELへの対抗馬になる。ハイエンドテレビ市場は、QLEDと有機ELがそれぞれ500万台ずつで市場を分け合うと予想しているが、これに中国・台湾メーカー両技術がどこまで食い込めるかに注目したい。
―― マイクロLEDはどう見ていますか。
謝 m²あたりの価格が5万ドルと非常に高価で、サイネージなどのパブリックディスプレーとしては有用だが、テレビに採用するのはまだ無理だ。コストダウンに向けて様々な技術開発が進んでいる段階にあり、これをどこまで進められるかがカギになる。
一方で、サムスンはマイクロLEDチップの調達網を拡大する方向にあり、動向を注視していきたい。
―― 装置・部材市場も回復が見込まれますね。
謝 なかでも有機EL用ドライバーICのタイト感が強まりそうだ。19年は半導体需要が低迷したが、5GやAIの立ち上がりによって復調しつつある。こうした用途のデバイスが増加し、ファンドリーの稼働率が高まると、ドライバーIC向けのウエハー供給がタイトになる可能性がある。有機ELのパネル需要が旺盛なだけに、注意が必要だろう。
(聞き手・編集長 津村明宏)
「第38回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail :
technology.events@ihsmarkit.com、Tel.03-6262-1824)まで。