商業施設新聞
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No.660

働き方改革と健康増進


笹倉 聖一

2018/6/19

 日本では、1995年を頂点に生産年齢人口の減少が続いている。それに加えて、昨今の株高や東京五輪、東北復興のための公共インフラ投資などで景気が浮揚していることから、人手不足を嘆く企業が多い。今後も生産年齢人口の減少は続くので、それを克服するため、高齢者や女性、外国人が働ける職場づくり、労働時間の適正化や健康増進など、「働き方改革」は大きな社会テーマになっている。その中でも、日本人1人あたりの生産性は、諸外国と比べて低いことが大きな課題として注目されている。2000年に世界2位を記録した日本の1人あたりの名目GDPは、後に順位を大きく下げ、17年には先進国が加盟するOECD35カ国中20位にまで後退した。

 仕事の効率性がますます求められる中で、オフィス設備・機器のイトーキ(東京本社=東京都中央区)が主導して、11の企業とブランドが集結し、働き方に新たな解決策を提供する「フロムプレイヤーズ」(FROM PLAYERS)を春に設立した。「働く人一人ひとりが、より良い体調と環境で、最高の仕事の成果を発揮できる状態を作る」を目標に掲げ、企業が成長する上での主役をプレイヤーズ(働き手)と捉えながら、これまで経営者側からの視点で進められてきた“働き方改革”を改革して、働き手からの視点(フロムプレイヤーズ)での新しい働き方(プレイスタイル)を考えて発信するものだ。11社は、キャンプ会議、スポーツミーティング、自転車通勤、パワーナップ(積極的な昼寝)、セルフ・コンディショニングなどを提案し、そこで自社商品を提供する事業機会を狙う。参加企業は、イトーキ以外にオフィスポ、Campus for H、クラフトボス、シマノ、スノーピークビジネスソリューションズ、セノー、タニタヘルスリンク、東京西川、ユニバーサル園芸社、ルネサンス。

テントの中で爽やかなキャンプ会議
テントの中で爽やかなキャンプ会議
 提案内容を集約すると、運動、自然環境、気分転換などを仕事・会議・作業に取り入れることで、仕事の効率向上を図るものが多い。仕事の成果に実際にどのくらい生かされるか定かではないが、仕事中に快適な刺激を五感で受けることは、企画開発型の職務には悪くなそうだ。11社は、8月までを試行期間とし、効果について検証結果を出す予定だ。

自転車通勤でマインドスイッチ
自転車通勤でマインドスイッチ
 イトーキは働きながら体と心の健康づくりを促すオフィス空間ソリューション「Workcise」、オフィスポは職場に運動プログラムを、Campus for Hは検証可能な働き方・休み方改革のデザイン提案、シマノは自転車通勤マインドスイッチプログラム、スノーピークビジネスソリューションズは自然とのつながりを感じる「キャンピング オフィス」を提供する。また、セノーはオフィスでの短時間運動/健康器具、タニタヘルスリンクは健康づくりのPDCAソリューションズ、東京西川は快眠による休息、ユニバーサル園芸社はオフィス内の森での快適なミーティング、ルネサンスはスポーツクラブのプログラムをオフィスに提案する。

 イトーキによると、従業員の健康増進に寄与する企業は、業績面での恩恵も大きいという。日本政策投資銀行は、企業による従業員への健康配慮の取り組み評価(DBJ健康経営格付)を実施し、12年から取り組みの優れた企業に対して融資を進めている。大阪地域の小規模製造事業者107社への調査の結果では、従業員の健康増進に積極的に取り組むことで、企業業績(納期、クレーム数、材料の歩留まり、機械故障)も改善される可能性が示されている。一方、座位時間が1日に4時間以上を超える人は死亡リスクが高まり始め、11時間以上になると、4時間未満の人と比べて、一定期間に亡くなる確率が40%増加するという。

 つまり、健康水準がより高いほど、仕事、企業業績、医療費負担、快適な人生のすべての効率性にプラスとなる。健康ブームは消費者の間だけでなく、企業間にも広がりそうだ。
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