商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
No.657

福岡・天神にハイアットが出店する可能性があった?


高橋 直也

2018/5/29

 今年、1~3月にかけて、福岡・天神の「大名小学校跡地」における開発事業者の選定が行われた。応募者は積水ハウス(株)を代表とし、地場デベロッパーでもある西日本鉄道(株)(西鉄)が含まれるグループ、JR九州を代表とするグループ、福岡地所(株)を代表とするグループが応募した。ビルが建ち並ぶ天神としては希少な大型用地であり、九州を代表するデベロッパー3社がそれぞれ提案したことから、商業施設業界ではどの企業グループが選定されるのか注目が集まっていた。

 結果は、「ザ・リッツ・カールトン」などを提案した西鉄のグループが選定された。高級ホテル好きの筆者は「リッツが福岡に来るのか!」と1人で編集部で騒いでいたが、インターネットのニュースサイトにも載っていたので、この件を知っている人は多いはずだ。しかし、である。JR九州と福岡地所が何を提案しようとしていたのかを知る人は少ないだろう。実は福岡市は今回の各提案における構成者として企業名を公表している。これにより、各社の提案がおぼろげながら検討がつく。そして、その落選した提案も大変魅力的で、ワクワクするものなのだ。

 ではその構成企業はいったい何か。JR九州のグループからみると、複数の企業で構成される中、最も目が引いたのは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)だ。憶測だが、「T-SITE」を整備するつもりだったのではないか。今回の事業用地は小学校跡地としての大きなグラウンドがあり、オフィス、ホテル、公民館など多くの機能の導入が前提になっていた。そんな複合的な場所に街に開かれたT-SITEが出店していれば、多くの人が集まり、賑わう空間になったはずだ。

 そしてもう1社、目を引いたのが(株)ホテルオークラだ。すでに天神エリアから近い立地に「ホテルオークラ福岡」があり、どのような取り組みをする計画だったのか非常に気になった。移転するつもりだったのか、2号館のような位置づけだったのか。どのようなコンセプトにするつもりだったのか――。妄想が尽きない。

 一方、福岡地所グループの提案。これもまた妄想が止まらない。同グループには日本ハイアット(株)が参画していたのだ。ご存知の方も多いと思うが、すでに福岡市には「グランドハイアット福岡」「ハイアットリージェンシー福岡」がある。つまり、天神に第3のハイアットが出店するかもしれなかったということだ。

今回選ばれなかった提案もいつか実現を……!(写真は天神エリア)
今回選ばれなかった提案もいつか実現を……!
(写真は天神エリア)
 問題は、何のブランドを出店するつもりだったのか、だ。ハイアットブランドは一昔前まで、価格の安い順からハイアットリージェンシー、グランドハイアット、パークハイアットという住みわけがどことなく存在していた。ところが、今はライフスタイルブランドの「アンダーズ」「ハイアットセントリック」、フルサービスとリミテッドサービスの中間にあたる「ハイアットプレイス」などが加わり、用途とブランドは多岐に渡る。では福岡地所たちが提案したブランド、つまり今の福岡市に必要なものは何だったのか。福岡市は高級ホテルが足りないことが街全体の課題と言われており、これは地場のデベロッパーならもちろん熟知している。となると、ハイアットブランドの中で『ラグジュアリー』に位置するパークハイアットを呼ぶつもりだったのか……。いずれにせよ、ハイアットは国際的にも抜群の知名度を誇る。現在、国内でもハイアットブランドの計画がいくつか進んでいるが、某デベロッパーによると、「開業日から2週間連泊したい。どの部屋でもいいから泊まりたい。とにかく一番乗りしたい」という問い合わせがあるほどの人気を持つ。もし誘致していれば福岡における「格」が向上していただろう。

 しかし、これらの話は残念ながら選定されなかったので過ぎた話と言える。ただ、ここに挙げた企業は福岡市において出店意欲があったということだ。今後、天神は「天神ビッグバン」として、数多くの建て替え、再開発を行っていく方針だ。さらにホテル不足もまだ解決していない。今回は福岡地所とJR九州たちの提案は、選ばれはしなかったが、その内容は大変魅力的。なかったことになるのは惜しい。天神の再開発の中で、いつか実現することはできないものか。もちろん、「大名小学校跡だからこの提案が成立した」ということもあるだろう。ただ、今回敗れた提案も間違いなく、福岡市の魅力を挙げてくれると思うのだ。
サイト内検索