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第244回

中国半導体の本気を垣間見た~セミコン・チャイナ2018現地レポート


シリコン企業の出展も目立つ

2018/4/13

 今年のセミコン・チャイナでブース取材をしていた時に、「この展示会を見るのは何回目ですか?」とある人に聞かれた。弊社はSEMIチャイナと協力関係にあり、十数年連続で小さなブースを出展している。

産業タイムズ社のブースでは中国半導体工場MAPなどを配布
産業タイムズ社のブースでは
中国半導体工場MAPなどを配布
 私が初めてセミコン・チャイナを見学したのは2003年だったと思う。その後の15年間、ずっとこの展示会を通して「中国の半導体業界」を見てきた。その私から見て、今年のセミコン・チャイナの印象は今までと大きく変わった気がした。いや、展示会が変わったというよりも、中国の半導体業界が変質したのではないだろうかという気さえした。

出展企業は1100社、来場者は7万人

 まず今年のセミコン・チャイナを定量的に比較してみると、「出展企業は約1100社、来場者は7万人」を超えた。わかりやすく説明すると、「例年は展示館が5棟だったが、今年は1館追加された」。見学者の数も過去最高で、全盛期を過ぎて久しいセミコン・ジャパンの比ではない(まあ、中国に数の勝負では勝ちようがない)。

 日本では「新たなお客さんに出会う場というよりは、昔馴染みの人と再会する同窓会みたいなもの」になったとよく聞くが、セミコン・チャイナは商談の場として、皆が働き蜂のように忙しく動き回っていた。

日本企業の出展が急増

 中国政府が2014年に先端半導体の国産化を発表し、15年にIC産業専門の金融ファンドが誕生。中国各地で半導体工場の建設ラッシュが始まった。昨年(17年)のメモリー工場の大投資に、中国の半導体工場の投資ラッシュが加わり、半導体業界は空前の好景気に突入している。

 中国市場は今後の成長マーケットという認識が定着し、多くの日本企業が前のめりの格好でセミコン・チャイナに出展した。代理店ブースの間借りなどを除いて単独出展した日本企業の数は48社にのぼり、前年比で1.5倍に拡大した。出展企業は全体では18%増なので、日本企業の出展増がとりわけ目立った。

検査装置のレーザーテックは今年初出展
検査装置のレーザーテックは今年初出展
 17年6月に上海の現地法人を立ち上げ、製造装置の販売とサービスを開始したレーザーテックは、今回のセミコン・チャイナが初出展となった。SMICやホワリーなどの大手顧客から要請され、代理店経由でなく直接営業やサービスを強化するために現地進出を決めたという。「顧客との関係をさらに緊密にし、知名度を上げるために来年もまた出展したい」と同社の上海法人の住吉総経理は話す。
 ある日本の装置メーカーの営業マンは、「中国は日本の26倍の国土があり、今や半導体工場の投資プロジェクトは全国に散らばっている。自分たちで営業に回っていたら、1カ月やそこらでは回りきれない」と話し、自分から中国各地を飛び回るよりもお客さんにまとめて来てもらう方が効率的なのだと説明してくれた。

中国3大メモリー工場の稼働元年

 DRAM製造のイノトロン(睿力集成電路、安徽省合肥市)は、17年11月から製造装置(月産能力5000枚)の搬入を始めた。18年3月末に装置の立ち上げを完了する予定だったが、これが1カ月遅く進行して4月末から工場を稼働させる。「降雪による搬入作業の遅れや露光機の納期遅延が原因」(イノトロン関係者)とみられている。稼働当初は19nmノードによる試作を始め、「次の開発準備のため、4月から17nm対応の材料選定を始める」(材料メーカー営業)。
 3D-NAND製造のYMTC(長江存儲科技、湖北省武漢市)は、18年4月中旬に最初の製造装置の搬入式典を開催する。試作ラインとして月産能力5000枚の生産ラインを構築する。「地元政府から資金支援を受けている都合で、計画どおり工場立ち上げを進行する必要があるので4月に搬入式典を開催するが、本格的な装置搬入は5月から始まる」(装置メーカー営業)。試作ラインでは「32層製品のウエハーを流す一方で、64層製品の開発テストも並行して進める」(YMTC関係者)という。
 UMCが技術支援するDRAM製造のJHICC(晋華集成電路、福建省泉州市)は、装置搬入時期を18年8月に定めた。今春の搬入開始を目指していたが、やや遅れて生産ラインを立ち上げる。「初期導入量は月産能力1万枚程度とみられていたものの、最終的に5000枚に落ち着いた」(装置メーカー営業)。

上海のファンドリーのホワリー(HLMC)のブース
上海のファンドリーのホワリー(HLMC)のブース
 中国の3大メモリープロジェクトが今年、ついに立ち上がる。月産能力10万枚級の工場を約3年で立ち上げるという当初の構想は案の定、絵に描いた餅になってしまったが、「中国製造2025」で示されたロードマップの第1章がついに始まる。

NAURAとAMEC、国産装置が台頭

 中国の半導体製造装置メーカー最大手のノーラ(NAURA、北方華創微電子装備、北京市)は17年8月、洗浄装置メーカーの米アクリオンシステムズを1500万ドル(15.5億円)で買収することを決めた。中国政府の資金支援を受け、海外技術の導入に積極的だ。半導体用装置のほかに、太陽電池やLED、リチウムイオン電池(LiB)用の製造装置も生産し、中国のエコデバイス市場の爆発的な成長に乗って売り上げが拡大している。同社は半導体用以外の装置で稼いだ資金と政府の資金支援を半導体用装置の開発資金に注入しており、近い将来、200mmやノードの低い300mm用の製造装置では日本の装置メーカーと競合する存在になるだろう。

中国最大手の装置メーカーのNAURA
中国最大手の装置メーカーのNAURA
 米アプライド マテリアルズ(AMAT)出身の中国人幹部らが創業したAMECは、半導体やLED用の製造装置を製造している。主力製品は、プラズマエッチング装置(65nm、45nm、28nm、22nm以下に対応)とMOCVD装置(青色LED用、4インチで34枚同時処理)。17年は売上高が初めて10億元(約168億円)を超えた。

会場のあちこちでシリコン展示

 セミコン・チャイナのもう1つの特徴は、他のセミコン・ショーと違ってシリコン企業の出展が目立つことだろう。会場内を歩いていると、あちこちでシリコンインゴットやウエハーの展示企業を目にする。中国は半導体工場の投資ブームが起き、今年だけでも15カ所の300mm工場が新設、もしくは生産ラインが拡張される。そうなればシリコンウエハーが足りなくなるのは目に見えている。

Si結晶の引き上げ装置メーカーの晶盛科技は16インチ口径のインゴットを展示
Si結晶の引き上げ装置メーカーの晶盛科技は
16インチ口径のインゴットを展示
 しかも、300mmウエハー製造のジンセミ(新昇半導体材料、上海市)は稼働してから1年以上も経過したのに、商業生産の糸口が見えてこない。「中国政府は半導体工場の次はシリコン材料工場に資金支援を行う」(中国の半導体業界関係者)という噂を最近よく耳にする。実際に、液晶パネル製造最大手のBOE(京東方科技、北京市)や、太陽電池用シリコン材料製造最大手のGCL(協シン新能源控股、江蘇省)などが半導体用シリコン材料の製造に参入を計画している。

 中国の先端半導体製造への取り組みがついに本格化し始めた。今年のセミコン・チャイナはその勢いを十分に感じさせてくれるものだった。

 なお、来年のセミコン・チャイナは19年3月20~22日、今年と同じ上海新国際展覧センターで開催予定。SEMIは毎年、展示会期間中に来年のブース申し込みを受け付けているが、次回の申し込みはすでにいっぱいで、キャンセル待ちの状態だという。出展希望の企業は早めにお申し込みを。

電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善

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