電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞・情報紙誌のご案内出版物のご案内広告掲載のご案内セミナー/イベントのご案内
シェア
Clip to Evernote
このエントリーをはてなブックマークに追加
第280回

川崎の伸和コントロールズは精密温調装置の世界シェアNo.1獲得へ


~この数年で売上5倍のミラクル、長崎と長野の2カ所に工場新立地~

2018/4/13

 川崎マイコンシティの一角にそのサプライズ急成長のカンパニーはあった。ほんの1年前にマイコンシティに進出してきたわけだが、精密温調装置の世界シェアNo.1獲得を旗印に、この数年間で売上5倍増という離れ業を演じているのだ。そのカンパニーの名前を伸和コントロールズという。

 川崎マイコンシティは神奈川県川崎市麻生区にある工業団地であるが、半導体関連産業を集積することを目的に作られた。1980年代後半に都市計画決定し、その後土地区画整理事業などの手続きを経て、95年度から企業誘致を開始している。進出企業はキヤノンアネルバ、武蔵エンジニアリング、日放電子、リョーサン、ソフィアシステムズなど42社に及んでいる。久方ぶりに訪れたマイコンシティではあったが、「ああ、川崎市もかつて半導体集積にのめりこんだ時期があったのね」という思いが胸をよぎった。

 ご存知のとおり、川崎・横浜をコアとする京浜工業地帯は、重化学工業を中心に工場が集積された日本一のエリアであったが、80年代以降に大きく地盤沈下していく。こうした状況に歯止めをかけるべく、川崎エリアを半導体など電子産業の起爆剤となる地区にしたいとの思いから、川崎マイコンシティは作られたのだ。

 さて、筆者が伸和コントロールズを訪れる前には、朝日新聞など大手メディアが同社を訪れて取材をしていたという。その理由は4月2日に同社の本社内にある社員食堂を、オーガニック社員食堂としてリニューアルオープンしたからだ。同社は半導体やディスプレーの製造現場で使用される各種装置の開発・生産を行う装置メーカーであるが、世界中の顧客から寄せられる厳しい品質要求に、社員は常に真剣勝負で応えなければならない。

 「社員の最高のアウトプットのためには最高のインプットが必要だ。つまりは社員食堂においても、手間をかけて最高の食事を提供したいと考えた。減農薬あるいは無農薬の野菜を使い、調理においては保存料や化学調味料を一切使わない。冷凍素材にも頼らない。そうした社員食堂を発足させれば、社員を大きく元気づけることができると考えた」

伸和コントロールズ 代表取締役社長 幸島宏邦氏
伸和コントロールズ 
代表取締役社長 幸島宏邦氏
 こう語るのは伸和コントロールズで27年間の長きにわたり、代表取締役社長を務める幸島宏邦氏である。幸島氏によれば、リーマンショックの直後である09年6月期には売り上げが29億円までダウンし、いったいこの先どうなるかとの思いで、暗い日々を過ごしたこともあるという。しかして「とにもかくにもお客様第一」という同社の哲学をひたすら貫くことによって、ミラクルとも言うべき急成長をこの数年間で達成したのだ。

 2016年6月期売上高は92億円、2017年6月期は一気にジャンプアップし123億円を達成した。そして2018年6月期については140億円がほぼ確実であり、2019年6月期の160億円も達成できそうな状況にあるというのだ。リーマンショック時からほんの数年間で売上5倍増という急成長を遂げた川崎の中小企業は、同社をおいてまず他にはないだろう。

 「開発提案型企業である当社は設備投資に最大売り上げの20%を投入する。開発についても売り上げの約20%を常時投入し、一切手を抜くつもりはない。お客様とともに歩む私たちは、常にお客様より先行した提案ができなければならない。またお客様の懐に入ってどうすればブレークスルーできるのかを一緒に汗を流して考えていく。このやり方が当社の信条であり、これを失ったら当社は凡庸なカンパニーになってしまうだろう」(幸島社長)

 設備投資についてもすさまじい勢いで実行している。長崎にある工場においては7億円をかけて新たな試験・研究棟を建設しており、2020年1月には立ち上がる。そしてまた長野事業所においても新たな用地2.9万m²を取得し、工場新立地を断行する。現在は15億円を投じて既存工場の拡張を図る考えだ。

 「今後の我が社のさらなる成長を支えるのは何といっても女性たちと思っている。海外を含めたグループ全体で460人が従事しているが、このうち約30%が女性だ。すでに女性の管理職は7人存在しており、今後もどんどん登用していく。開発・技術にもリコジョをびしばしと増やしていく。女性の目線で会社を活性化するという目的で伸和女子キラキラ委員会も作った。女性たちがキラめく会社こそが発展すると真に思っている」(幸島社長)


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
サイト内検索